~The 1st day~
目を閉じると、妙な浮遊感があり、そして夢の中へ入ることが出来たのだと気がついた。
「dreamy crownって…ここ…か」
周りを見渡すと他にも黒い封筒を持っている人が何人もいた。
気がつくと自分の手には1枚の羊皮紙があった。僕が紙の内容を確認するとそこにはこのdreamy crown内でのルールや、自分の能力名が書かれている。
「夢幻の武器庫……?」
他にも、製作者の挨拶とか、そんなどうでもいいことが書かれていた。
つまり、あとは好きにやれとそういうことか…僕がこの封筒を持っているのはきっと妹を無くしたからだ。どうしても生き返って欲しい。今の科学ならもしかしたらできるのかもしれない。だけどそんなことを待っている余裕もお金もない。それでも生き返って貰わないといけない。死んだ理由を突き止めるために。
そのためにはcrownを取らないと。
まず手始めに武器と防具の調達、それからクエストの受注。
「やることが山積みだなぁ……ハァ
正式にパーティーは組めないから仮の仲間を募集すべきか」
取り敢えず僕は今いる街の武具店に向かった。
「・ω・*)ノнёιιο!ここは、Dreamerたちが初めて入る武具店。Dreamer武具店なのです!木刀からエクスカリバーまで何でも揃ってるです!」
「あ、あのー僕の持ち金は30000ルピーなのでその範囲で揃えられるものでお願いします。」
「じゃあ、初期装備しかないです!貴方の能力的には沢山の剣が必要だと思うです。どうです?」
「今は、まだ大丈夫だと思います。初期装備購入で。」
「ありがとでーす!また来てねー」
初期装備しか買えないとは…次はギルド登録しないとクエストが受けられないのか…やけに本格的だなんて思いつつギルド本部【バベルの塔】を目指す。
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流石にギルド登録者で混雑している本部は右も左も分からないほどだった。やっとの思いで並ぶことの出来た登録者の列は長く何時間で回ってくるのかは予想する事さえはばかられる。そんな中自分の目の前に見たことのあるシルエットが事に気がついた。風見優香だった。
「あの、風見優香…さんですよね?」
声のかけ方を間違えたか?
前の人が振り返る。人違いでは無かった。だとしたら何故?いや、そんな事を知る権利も理由も僕には無かった。
「そうです……?………………!芹澤君ね!こんな所で合うなんて!んーあんまりいい事でも無いのかな…エヘへ」
「まぁ、あんまりいい事でも無いかもね。」
彼女はこんな人だった。誰にでも話しやすく、成績も良くて正に完璧と言わざるをえないような。僕とは真逆の性格で。
「あのさ、仮のパーティーを組んでくれないかな?誰に話しかけいいか分からなかったし、ここでの縁という事でさ!」
「い、いいけどそちらこそ僕なんかで良いんですか?」
「良いも何もお願いしてるのよ、よろしくね。私の事はフウカって呼んで。ここでの名前。それから、同い年なんだからタメ口でいいよ。」
「よろしく…フウカ。僕の事はセナって呼んで。同じパーティなら能力の把握をしておきたいんだけど、いいかな?僕は所持している武器を自由に好きなだけ取り出せる能力。」
「えっと、私は風属性の魔法を得意とする魔法使いよ。一応回復魔法は使えるようになるみたい。あ、私の番来たから登録してくるね。セナ君も、もうすぐみたいだよ」
フウカはそう言い残して受付に向かった。さて、僕もそろそろかなと思った頃に順番が来た。
「それではこの紙に名前を書いて、手をかざしてください。」
僕は言われたとうりにした。すると小さな青白い光が出てきて眩しくて目をつぶってしまった。光が収まったのか、目を開けると手には1枚のカードがあった。ステータス…表?
「それは貴方の経験を表すカードです。夢魔を倒せばその分経験として蓄積され、多くの魔法が使えるようになります。補足説明させていただきますと、この世界にはスキルという物は存在しません。すべてが魔法で成立しています。もちろんあなたの能力も。ですからレベルを上げなければ長時間の能力行使は体に過度の負担をかけてしまいますのでご注意下さい。」
「やっぱりレベル1のステータスオール0からですよねぇ。あ!あの、質問なんですがここにいる職員や武具店などの店員さんとかは生きている人間が僕達と同じようにしてここへ来ているのですか?それとも、モブ扱いなんですか?」
正直な疑問であった。モブにしてはよく喋るし人間味があって、マスターに雇われた人間なのか、でもそれにしては数が多すぎる。
「私達は元人間ですよ。」
「元?」
「はい。元人間です。私達はみんな一度死んでいまして生前の夢の記録を元にして作られた存在です。意識は生前のものと同じなので、生き返ったと思って頂いても差支えはありません。夢の記録は現実世界の物をもとに構成されているので、私達は何者であったかをしっかりおぼえています。こうしてまた生きること(?)ができるのも藤野様のお陰です。」
「そうなんですね。ありがとうございました。」
藤野は人を生き返らせることに成功している。それがわかっただけでも大きな収穫だった。僕はその嬉しさを実感しながらバベルを出た。
「セナ君!」
「フウカ、今日はそろそろお開きにしないかい?クエストは明日からってことで。後はほかのパーティーメンバーも募集しておきたいし。」
「うん。分かった、じゃあまた学校でね」
「え?」
しばらくは、毎週日曜日投稿になるかと思います。よろしくお願いします。