表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

祝福の詩

作者:

最後に立ち寄った教室は、やけに静かで、ひんやりとしていた。

教室の真ん中あたりにある自分の席に座って、ぐるりと教室を見回した。

今日でこの席ともお別れか、そう思うとなんだかくすぐったくて、すこしだけ寂

しくなった。

高校最後の文化祭。

クラスのみんなで一丸になって盛り上がって楽しかったよな、とか。

高校最後の運動会。

フォークダンスはちょっと恥ずかしかったけど、でも楽しかったな、とか。

受験が間近に迫ってきたときは、友達が大事だなって実感したり。



会おうと思えば会うことが出来るだろう人たちと、もうこれっきりになってしま

うかもしれない人たち。

出来ることならばもうちょっと一緒にいたかったかな、なんて我が儘かもしれな

いけれど。


そう、やっぱり、くすぐったい


最初は一番下で、先輩と呼ぶ人しかいなかったのに、


中学生はいたけれど


いつの間にか後輩が出来て、いつの間にか後輩しかいなくなった。

時間は確実に流れていたことを、そういった変化が物語っている。


また、いつか会えたらいい

そうしたら今までみたいにバカ騒ぎしたい

でも時の流れは無情だから

次会うときはどうなってるのかわからない


卒業式の影響か、考え方が少しだけ暗く……悲しい方向へ向いてしまった。

大丈夫、みんなすぐに人が変わったりしない、多分。




「…帰るぞー!」

ふいに降ってきたその声に後ろを振り向くと、いつもと同じ仲間たち。

「今、行く」

そう、自分に言い聞かせるようにして呟いた。

名残惜しいように机に手を沿わせながら、扉へ向かう。




さようなら

またいつか会いましょう




そんな声がどこからか聞こえてきたような気がする。

下駄箱の周りでわいわいと別れを惜しんでいる人たちのにぎやかで、どこか悲し

い、でもうれしそうな声。

わけのわからない苦笑が滲む。




祝福の鐘をあなたへ


祝福の詩をあなたへ


どうかどうか


あなたの心に届きますように

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ