七話 ―地下二階?―
あれからさらに一ヶ月が経過した。
毎日しっかりと『狩り』と言うなの訓練をしていたので、どうにかこうにか、俺もボーンもロゥーパ達もそこそこは強くはなった。
ブック的には『この位なら地価に降りも平気だろう』との事だ。
いや、そのだろう発言がそもそも怖い。
ブックの〇〇だろうは、本当にあてにならない気がする。
しかし進まなければ何も意味が無い。というか、現状でやる事が無い。
ただひたすら、骸骨剣士やらロゥーパを倒してても飽きるしな……って、この考え自体がもう末期か……。これじゃあただの迷宮狂者じゃん。
そんなアホな事を考えながら俺達は意を決して、階段を降りる準備をしていた。
長剣を一本、腰に長剣を二本差す。ボーンも同様の装備だ。
ロゥーパ達も背中に一本、触手に一本長剣を装備している。
「よし、これから地下に向かうぞ。決めたとおり、危なそうなのが居たら即時撤退だぞ良いな?」
俺の言葉に全員が頷く……。
しかし不安だ。絶対こいつら撤退って言葉を理解していない気がする。
ブックを開いて何かあるか一応聞く。
『新しい敵が居たら私を開け。分かる範囲で答えよう』
「頼むぞ? 初見で全滅なんていう恐ろしい敵は怖いからな」
『安心しろ。そんな敵は一握りしかいないはずだ』
「居るのかよ! むしろ一握りもいるのが怖いわ!」
『たかが一握りだ』
「されど一握りだって言葉を返しておく!」
俺は本を閉じて、階段を降りはじめた。
元居た場所が地下だったのかは分からないが、とりあえず元々居た場所を『地下一階』としておこう。
此処……地下二階は今のところ地下一階と変わった所はない。
壁には変な幾何学模様が描かれており、蝋燭もしっかり備え付けられている。火は消えず静かに灯されて、周囲はとても静かだ。
「ブック。帰り道の案内は任せるからな?」
『任されよう。周囲に気をつけながら進むが良い』
こういう時だけは本当に頼りになる。
降りた階段の先は一本道だった。とにかく真っ直ぐと進んでいる。敵が出る様子もないし、これといって、罠もなさそうだ。
進んで行くと今度は左右に分かれた道が現れた。
ここを左に行くか右に行くかで、俺たちの命運が決まるかもしれない。
慎重にどちらに進むべきかと足を止めると……。
スタスタと俺を無視してボーン達が右に曲がる。
「え? ちょっと待て! 待てってば!」
俺が声をかけると、一斉に振り向いた。
「分かれ道だぞ? 少しは悩まないのか?」
そういうと、ボーンがブックを貸せと手を出したので俺は手渡した。
本を開いて俺に向ける。
『悩ム事ガ無意味』
「どうしてだよ!」
ページをめくってボーンが回答する。
『左モ右モ後デ行ク二変ワリナイ』
ああ、要するに後でどっちも行くってのか……。
「じゃあ罠がどっちかにあったらどうするんだよ?」
『踏ミ越エロ』
うわー。ボーンらしい答えだ……。
「つ、強い敵が居たら?」
『宿敵ダ。最後マデ戦ウ』
うわー!! こっちはもっと駄目な発想だった!
もうそれ、ただの凶戦士じゃん。
いや、よくよく考えてみれば、無差別に剣を振り回す奴だったし、そもそもが凶戦士か!
これでは話にならない。
「お、お前達はそれで良いのか?」
期待はしていないが、俺はロゥーパ達に聞いてみた。
三体は何やらごにょごにょと話し合う仕草をしてから、触手で大きな丸を描いた。
それは良いってことなのか……?。
……まあ良い。もう、どうなっても知らないからな。
「分かった……。お前達がそう言うなら俺に拒否権は無いな。こっちを進もう」
ボーン達に続くように俺も歩く。
暗い一本道を歩き続けると今度は少し大きなフロアに出た。
その真ん中で、頭が豚で体が人の様なおぞましい奴等が何かをちぎって咀嚼していた。
身体中が全身赤く染まっており、腰には手斧らしき物を携えている危なそうな奴らだ。しかも四体も居やがる。
これはもしかして戦闘を吹っかけるにはヤバイ奴か?
何を齧っているのかと目を凝らして見ると、スライムの様な魔法生物だった。奴らのえさなのだろう。俺達に気づきもしないで必死に食べている。
俺は奴らに気付かれないようにブックを開いた。
『ブラッディ・オークだな。食べているのはブラック・スライム。魔法生物の一種だ』
なんだその、名前がやばそうな奴……。
強さ的にはどのくらい何だ?
俺が心の声でブックに尋ねる。
『豚もスライムも貴様以下だ』
はい……? あんなに凶悪面してるのにか?
「ブヒイイイイィイイ!」
唐突に一体の豚もどきが叫んだ。
どうやらこちらに気がついたらしい。
血に飢えたブラッディ・オーク達が斧を手に取り、襲い掛かってくる。
「ロゥーパ達はCを先頭に前方の一体をやれ! ボーンと俺は残りの三体だ!」
声をかけて、俺とボーンが疾走。
俺より素早くボーンが初手の一撃をオークに叩き込む。
骸骨剣士の攻撃とは思えない早業だ。
ブラッディ・オークはその長剣の一撃を斧で受け止めようと待ち構えた刹那――。
長剣が斧に食い込み真っ二つに割れ、その先に居たブラッディ・オークの首をはねた。
え……。まじで! はねたぞ!?
「プギィイ!?」
思わず、オーク達と一緒になって驚く俺。
一撃とか何それ怖い!
それでも今は戦闘中だ。意識を切り替えて、俺も驚いてるブラッディ・オークに長剣で切り込む。
瞬間、まるで枝にぶつかるかの様な小さい抵抗を感じた。
それはブラッディ・オークの斧だった。俺は目一杯力を込めてぶつけると、これまたブラッディ・オークの持っていた斧が弾き飛ばされ、似たように奴の胴体に長剣がぶつかった。
腹部が大きく凹み後方へと吹き飛ばされるブラッディ・オーク。
何度か地面にぶつかり回転して原型をとどめずに壁にぶつかった。
見事な肉の塊の完成である。
オェェ……。自分でやっておいてなんだが気色悪っ!
「ブヒィィィッ!」
あまりの出来事に、残った一体のブラッディ・オークが一目散に逃げていった。
なんじゃこりゃ……。確かに弱いかったけど異常だろ。主に俺達の力が。
ハッとなって、ロゥーパ達が心配になり俺が顔を向ける。
しかしそっちでもロゥーパ達の圧勝だった。
豚の顔が原型をとどめておらず、潰されていた。
ロゥーパ達が大慌てで剣を振り回してははしゃいでいる
……なんじゃこりゃ。
俺はブックを開いた。
『雑魚だと言ったろ?』
うん、言ったけどさ……。言ったけど……納得はできないわ……。
俺は肉塊になったオークを見てそう心の中でつぶやいた。




