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四話

 一通り迷宮を周り終えて俺達は元の隠し部屋に戻ってきた。とりあえず、分かった事はここを徘徊している敵は『骸骨剣士』と『ロゥーパ』しか居なかったという事だ。後は下に進む階段を一箇所見つけたが怖いので引き返してきた。

 理由としてはブックの話では『お前も魔物を倒せば倒すほど強くなれる』らしいので、もう少し強くなってからでも良いと判断したからだ。

 ブックの話では特に食事を一切必要としない身体らしいしな……。

 今はとにかく力をつける事だけを考えている。

 現状だと俺一人では骸骨剣士一体相手にするだけでも結構怖いところがある。

いくらゆっくりな上段からの一撃と言っても、完全に防ぐことが出来てないのが現状だった。長剣の一撃を同じように両手で持った長剣で受けきっても若干手がしびれるのだ。これでは下の階層に行くなんて危険も良いところだろう。


 せめて、骸骨剣士の攻撃を耐えられる位の身体にはしたい。本当に強くなれればの話だが……。


 また、一体どういう仕組みなのかは分からないが、最初の隠し部屋は今は密室になる事も無いようだ。今ではしっかり自分達の拠点としている。もしかしたら外側の地面に一部凹んでる窪みがあったので、そこを押すと開く仕組みだったのかもしれないな……。今となっては分からないが。


 部屋の中には俺達が集めた長剣がざっとみて五十本くらいとボロ布が三十枚くらいある。他にはロゥーパの体液をどうにかもって帰れないかと考えていたんだが、そんな事をしなくても良いとブックに言われて現在に至る。

 ……まあ、確かにロゥーパを『仲間』にすればそんな事しなくてもいいけどさ……。

 そんな訳で、今現在新たな仲間として横にロゥーパが三体もいる……。

 凄い足が鈍いっていうか、足があるのか疑問だが……。

 まあ、鈍いので連れて来るのが結構面倒ではあった。

 仲間にした後は道中仕方がないので骸骨剣士に持ってもらったりもした所だ。

 ロゥーパの背丈はやっぱり低い。俺の腰くらいしか無い。

 しかし仲間……ブック的には協力者だっけ? ……まあ良いか。

 仲間にしてからは意思が明確に現れてきてるのか結構自意識が高い気もする。

今も、三匹で触手を上に伸ばして背比べ……なのかそれは? 良く分からない事で競っている。


「こいつらは何をしてんだ?」


 俺はブックに尋ねて、慣れた手つきで本のページを捲る。

今では片手でページを捲るくらい出来る。

これって凄くね? って、ドヤ顔で言いたいところだ……。凄く切なくなるけどな。

 ブックのページが捲られて答えが記される。


『ロゥーパは縄張り意識が強いからな。長さで競っているのだろう』


 縄張り意識なんてあるのか……。


「いや、こんな所で競ってどうするんだ……」


『さあな? ロゥーパにでも聞いてみれば良い』


 とんでもない回答が返ってきたものだ。触手に話してみろって?

 こいつら話せるのか? 触手だぞ? サボテンもどきだぞ?


「おい! お前達は何を争ってるんだ?」


 俺は面白半分で聞いてみた。するとロゥーパ達は争い(?)を止めてこちらに近づいてきた。何だ? 何か会話できるのか?

 足元までゆっくりと近づいてきて三体のロゥーパが触手を伸ばして俺に向ける。


「なんだ?」


 俺が何をするのかと思って待っていると……それは起きた。

 ロゥーパ達は自慢の触手で俺の大事な太ももをパパパーンッと叩きやがった。しかも三体同時にだ。痛さも三倍だ。


「痛ってぇ!」 


 あまりの痛さに俺は飛び跳ねた。叩かれた部分がジワジワと赤くなる。

 ロゥーパ達はまるで「邪魔をするな!」と言わんばかりに飛び跳ねて先ほどいた部屋の隅っこに戻っていった。

 本当に分けが分からない!


「俺が悪かったの? ねぇ! ちょっと! 今の俺が悪かったのか?」


 俺が声をかけても、ロゥーパ達は反応すらしなくなった。


『自業自得だな……』


 ブックがまるで分かっていたとばかりに答えてくる。


「どういうことだよ! てか、俺を嵌めたのかよ、お前はよ!」

『……フッ』

「フッ! じゃねーよ!」


 ああ、燃やしたい! やっぱり燃やしたいコイツ!



 数分怒りが収まらなかったが、どうにか俺は気分を落ち着けることが出来た。まあ、きっと俺が悪いって事なんだろう?。そうしておくよもう……。

 ロゥーパは置いといて俺は骸骨剣士を見る。

 気のせいか、最初はゆっくりしか動けなかった骸骨剣士だが、敵を倒して強くなっているのか動きは滑らかになってきている。

 今も集めた長剣を一本一本手にとって何か点検をしている様だ。


「剣の手入れをしてくれてるのか?」


 と、思わず声をかけてしまった。

コイツもコイツでなんか会話が成立しない気がするんだよな。

 俺の声に気がついて顔を向けると、骸骨剣士がコクリと頷いた。

 おお! 会話ができてる! 凄い進歩だ!


「それは助かる! 何か俺に手伝えることがあったら遠慮なく言ってくれ」


 思わずそういってみると、骸骨剣士が俺の持ってる本を指差した。

 うん? ブックをどうするんだ?


「なんかお前を御所望みたいなんだが、渡しても良いのか?」

『構わないぞ。私が必要な意味も分かるからな』


 なんだ? 一体何が始まるんだ?

 俺も興味津々だ。


「雑に扱うとうるさいから注意しろよ?」


 長剣を横に置いた骸骨剣士にブックを渡してみる。

 するとブックの中身をこちらに向けて見せた。

 何が始まるんだ?

 奴がページを捲ると、いつもどおり文字が浮き上がった。


『ハジメマシテ』

「おお!」


 驚いた。これはもしかしてもしかしなくても、ブックを通じて会話が可能ってことなのか? 俺がびっくりしてる間にもページがまた捲られる。


『弱者ノ塊ヨ』

「そりゃ弱者だけどさ! もうちょっと言い方ってものを、どうにかなりませんかね!」


 つか骸骨剣士のアンタの方が最初弱かったじゃん! 最初だけど!

 あえて突っ込まないけど!


『シツレイシタ』

「そうだよ失礼すぎるだろ! 言い方を変えような!」

『雑魚ノ塊ヨ』

「そうじゃないから! そういうことじゃないから!」


 もう雑魚でも良いよ! 諦めたよ!

 俺は骸骨剣士から本を奪い取ってページを捲った。


『なかなか鋭い奴よ。私は気に入ったぞ』

「いや、うん……。まあ良いけどさ……」


 俺はその日、骸骨剣士達に部屋の入り口を任せて地面で不貞寝した。

 ああ、世知辛い! 今に見てろよ!

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