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灰被りの山2
アルフォンスはセジュ侯爵の屋敷に着くまでの間に今回、自分がマガン・セジュ侯爵に呼ばれた理由を憲兵から聞かされた。
今月の頭にグラスシューズの街から近い、サンドリヨンという山で山火事があった。
死者は出なかったが、奇妙な噂を聞くようになった。
山火事が起こる前日の夜、山に向かって飛び去るモノがいた。
そしてそれはまるでドラゴンのようだった、と。
元々、サンドリヨンにはある伝説が伝わっていた。
いわく、山が白く染まるときにドラゴンが現れると。
そして今回の山火事で発生した灰でサンドリヨンの山肌は真っ白に染まっていた。
マガン侯爵自身は与太話と断じていたが、それを聞いた娘のベルタがドラゴンを見るために山に行ってしまい、半月程帰ってきていない。
ベルタの無事は一緒についていった執事のタデルが報告してくるが、ベルタ自身は一向に帰って来ようとしない。
一度、自分で迎えに行ったがそれでも帰ろうとしないため、幼なじみでもあるアルフォンスにベルタを説得してほしいとの事だった。