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国家秘密組織と特待生  作者: ryuu
前章 潜入調査開始――――テロ組織『シートコール』との戦争
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興味

 ――――現在に戻る。

 隣の女子が興味心身に優を見つめ、目線を合わそうとすればそらされる。前も同じだ。

 女子高というだけあって男子が興味深く感じられるのかもしれないが目線を合わすのはやはり気が引けるのだろうか。

 まぁ、そんなのはこの際どうでもいい。

 優はまず、この学校の現状を知る必要がある。

 そのために親しくなる必要があるんじゃないかと普通の奴は考えるだろうがそんな必要性は皆無であった。

 周りに耳を傾けてどんな話をしてるかとか、周りに目を向けてどんな表情をしてるかとかで多くは読み取れるのだ。

 優くらいになればわかることだった。


「えーでは、HRを終わりにする。今日も一日がんばるように。それでは終了。次の授業の準備を行うように」


 あまりにも女子高とは思えない軽い感じでの終了の仕方。いや、女子高を通ったことはないのでマンガなんかで見る形しか想像はできないがそれと大きくことなった形。

 現実はこんな軽い感じの教師かと少々がっかり感を思う優。

 教師も女子高だからおしとやかな雰囲気があるものかと想像していたがそんなことはなかった。

 でも、この学校は普通の女子高とは違うからこそか。

 周りに目線を這わせると、クラスの女子は人間とは異なった容姿をした者が多くいた。そう――『亜人』だった。

 獣耳を生やした少女のウルフ種や耳が長いエルフ族、極端に背が小さい者のドワーフ族など様々な人種がクラスを埋め尽くしている。

 中にはれっきとした人間もおりしかし、どこかやはり普通の人間とは異なった存在を漂わせている。


「あのー」


 HRは終わって先生がいなくなった途端、優の前に一人女子がやってきた。

 青い目に赤のメッシュの入ったロングの金髪。透き通るようなきれいな金色の髪。不思議な色合いを伴ったその容姿に目を細めながら観察した。人間かと疑うほどの容姿だった。

 よく見れば隣の席の女子。

 唯一クラスの中で普通の存在という印象を受ける彼女に声をかけられ優は首をかしげた。


「私このクラスの委員長をしているミユリ・ハーフェス・杏里と言います。あなたに少し話しがありまして」


 委員長と名乗るミユリに優は補足していた目を少し鋭い目つきへ変え向けてしまう。

 話という言葉に今の優は敏感だった。

 二人きりという状況下で相手がもし敵ならば狙われる可能性があると考える。

 鋭い目つきが睨みを利かせたと思いこみ恐怖を駆り立てたらしくびくっと萎縮してしまった彼女。

 優はここが単なるすこし特殊な学園で平和的な環境だったことを思い出し平静を保ちながら笑顔に切り替えた。


「話?」


「あ、はい。先生からあなたに学校を案内するように言われてまして‥‥‥」


 こちらの様子をうかがう目線。

 気さくに対応するように接する態度を示すことをしてみる。


「あ、ああ。そう。なら放課後にでもよろしく頼むよ」


「え、あ、はい」


 なぜかそんな軽い対応におどおどとした対応と返事で隣の席に着席しに戻る委員長さんこと――ミユリ・ハーフェス・杏里。

 わざわざ立つ必要性はなかったと思うが―――

 すると、ふと前の席の女子とも目が合う。

 前の女子は女子で顔を真っ赤にして瞬時に目線をそらされてしまった。

 (――っんだよ。なんか、少し気分が悪くなるぞそれ)

 ちょっと優が憤慨した気分でいればベルの音が突然耳に聞こえてくる。

 学校のチャイムが鳴ったのだ。

 それと、優の耳は聞き逃さなかった。学校の休み時間終業の予鈴と同時にイスのひずむような大きな音が聞こえたのを。

 優は音が下方向に目線を向けるとなぜかみんなが妙にそわそわしていた。

 明らかに今一度立ちかけてチャイムと同時に瞬時に座りなおしたかのような形がそこにはあった。

 優はすぐに察しがついた。

 マンガとかじゃあよくある話だ。


(こいつら俺と会話でもしたいのか?)


 あまりにも自意識過剰ととられるもの思いかもしれないがズバリそれは的を射ていたのかもしれない。

 全員の視線はどことなく優に注がれているのだから。


「はーい、それではぁー、今日の朝一の授業数学を始めますよぉー」


 扉を開けて一人の女教師が入ってくるとともに朝一の一時間目の授業が開始された。

 この時の優は気づきはしなかった。その視線はもう一つ別の意味をはらんでることを――


******


 時間は進み、昼休みになった。


「あれがうわさの?」

「だよねだよね」


 いろんな学年やクラスから優は注目の的となっていた。

 教室の扉からみんなが顔をのぞかせていて興味心身とばかりに食い入るような視線。

 優はどこかぎこちなくまるで自分は珍獣扱いにぎこちなくてこの場から抜け出したい衝動である。


(こいつら早くどっか行ってくれないかな? 転入手続きの残りの書類学園理事長に渡しに行かなきゃならんのに)


 そんな思考など彼女らに分かるはずもなくただタイミングを待つのみ。

 なによりもまず、噂の進行度はすざまじい。

 優は、周りの話を聞いて総合して情報を自身の中で推察して結果わかったことがった。

 (以前から男子である俺はこの学校に来ることは噂として知られていたらしいな)

 なので、今日転入してきてる、どのクラスにいるかもおのずとすぐに1時限終了ごとの間に空く10分休み間でクラスまで割り出され、噂は広まったといえる。


「どうしたもんかなぁ」


 愚痴を言っていても仕方ないかと割り切って席を立ちあがり書類を持って扉まで歩み寄ると一気に生徒の群れが歩行用に開く。


(っ!? なんかお偉いさんが通る道みたいだな)


 ――と感慨にふけりながら優は女子を無視してそのままずかずかと学園長室まで歩みを向けようとしたところふと、手を掴まれて引き止められる。

 優は後ろを振り向き手をつかんだ人物を思わず払いのけてその手首を逆につかみ仕事で見せる相手を射殺すような視線を見せる。


「ひっ!」


 優の手をつかんだ人物、先ほどの委員長さん――ミユリ・ハーフェス・杏里が恐怖に身をすくませ足を震わせながら数歩距離をとって頭を抱え出してしまっていた。


「あ、わるい。えーと、委員長さん?」


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい‥‥‥‥」


 ぶつぶつと連続して謝り始めてしまった。余ほど怖かったらしい。


「ごめん! そんな驚かすつもりなかったんだ。昔から背後をとられるのが嫌でさ」


 できる限りやさしい声音でいい、彼女の頭に手を置いてしまう。

 なでなでと頭をなでる。

 昔、従妹によくやった対応だ。


「へ?」


 目を丸くする委員長。

 優は何気ない対応で頭をなでながら彼女が落ち着くまでその行為を続ける。 


「マジでごめん、そんなに怒ってないから」


 気にせずに及ぶ行為。

 それに戸惑いを見せる彼女に優は疑問を感じた。

(あれ? なんかまずったか?)

 何やら周りか気まずげな視線が送られてるのとそういう空気があたりに漂ってる。

 しかも、ひそひそといやな感じの笑みまで見える。


「あのー」


 優は「ハッ」と思いやっと気付く。

 この行為はセクハラまがいの行為に等しいことだと。

 赤の他人に対してやるふるまいではない。


(しまった! 従妹にやる癖でついやっちまった! あいては赤の他人だぞ!)


 しばらくおいてから自分の行動がとんでもないことをしてることに気付いてすぐに手を頭からどかした。

 委員長は顔を真っ赤に染め上げてから少し間を空けて口を開いた。


「あのー、どこにいくんですか? まだ、場所わからないだろうから案内します」


 やっと、彼女が引きとめた理由に気付いた。

 心遣いだったんだ。


「あー、ごめん。睨んじゃって。場所は大丈夫わかってるから」


「わかって‥‥え?」


「気遣いありがとう委員長さん」


「いえ、それより私のこと委員長じゃなくってミユリって呼んでください。委員長だと他のクラスにもいますし‥‥」


「あ、そうだね、わかったよ。じゃあ、俺理事長室に用事あるんで」


 乾いた笑みを漏らして言いながら理事長室へ駆けだした。

 まわりの反応に耐えきれずに優は逃げるような状態だった。

(くそっ、まずったな)

 彼女は赤く顔を染め上げて笑顔を見せながらその背を見送った。

 彼女は優のその笑顔が眩しくてドキッとしてしまう。

 意識しないで今まで見てたから気付かなかったがこうして改めて意識したミユリ。

 (私彼のこと‥‥)

 初めて抱いた感情に狼狽する。

 胸のときめきは間違いがなかった。

 なんで? という彼女の顔を最後に優はすぐさまその場から立ち去った。

 なぜならば、周りの視線はそんな二人の光景をずっと殺気だったような感じで見ていたからであった。

 どこか、知的に思わせる雰囲気。そして、すこし寝癖頭が目立った黒髪に少し袈裟気味に赤いメッシュが入った男性。

 なによりも彼は誰よりも他人を気遣う気持ちが垣間見えていた。

 でも、その半面に誰よりも他人と接触するのを避ける雰囲気。

(なんでなんです‥‥)

そんな不思議な彼に思う気持ちは止まらない。

「ミユリっち、なぁーに、ひとりでぇ優君にきゅうせっきんしちゃってるわけぇ?」

「あ、朝倉さん」

 ミユリは一気に今までの余韻が打ち消された思いになる。

 それは絶望――。

 目の前にいる人物は見ゆりにとって恐怖の対象でしかなかった。

「いいどきょうしてるよねぇ」

彼女――朝倉の背後には二人組の女子が集まり、ミユリに対していかにも接し方は好意的ではない。

 嫌み的な雰囲気を醸し出しミユリの髪をひっつかみ上げ――

「屋上行こうかぁ、あんたは私たちの奴隷なんだからぁ勝手にでしゃばった真似しちゃぁダメだってぇのわからせてやるよぉ」

「きゃはは、ユウクンに手出そうとかトンダビッチ」

「同意しまーす。ビッチビッチ」

「私そんなつも――」

「いいからこいよ! あんたみたいな泥棒は一生奴隷生活なんだよぉ!」

そんなミユリを見て回りは見て見ぬふりで彼女が連れてく様を傍観する。

(いや、誰か助けて!)

そんな彼女の絶望的な気持ちと困窮する願いは誰にも届くことはなかった。


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