D戦本戦決勝戦試合 第2戦目 龍牙優 VS DM 中編
『決まったぁああああああ!』
実況がことの状況を見て声をあげた。
『痛烈な一撃がとどめに入りました! 何かに気を取られたことが致命的だったでしょう!』
審判も状況を見て白旗を掲げる寸前だった。
「ちょっと、待った」
DMの体を風魔法で振り払い、剣を体から引き抜いた。
龍牙優は何事もなかったかのようにその場にたち首を鳴らし始める。
『ななななななんとぉ! あの攻撃をくらってたっています! 龍牙選手は化け物かぁああ!』
ひどい言動だと感じながら優は息を吐き、目の前のDMを見すえて頬笑みを浮かべた。
しかし、剣が刺さったことにより肺は傷つき、血反吐を吐きながらせき込んだ。
まずいと感じながらも冷静に魔力を練りだし、優のすでにはロングソード型の魔術武装を展開した。
武装魔法と違い、これは魔法が武器の形を作る。
光のロングソードで切り込みにかかる。
振り上げた剣の切っ先がDMの衣服に切れ込みを入れる。
DMがビクッと少し驚いたかのような反応を見せた。
「さぁて、大体準備運動はここまでかな」
会場には優がなんていったのかは聞こえてはいないだろうがしかし、審判には優の言葉が聞こえていたようであんぐりと口を開き魚の様な感じだ。
DMもやばいと悟ったのかさっきよりも一層魔力を高め、武器にみなぎる魔力の質が上がる。
雷の剣はより激しく火花を血ばしながら電流が走る。
優は先ほどの技はすべて本気で対応はしていなかった。
だが、その結果がこういう風な状況を生み出した。
遊びすぎたと言っていい。
まず、相手の力量を仕事も込みで図る必要があった。
その結果はあった。
(こいつはテロ組織の一員というにはあまりに力量が乏しい。だとすると、操り人形というところか)
そう、それが結果だった。テロ組織の一員ならば人をためらわず殺すという殺気のこもった技を容赦なく放つ。そして、容赦なく急所を狙うのが常だったがこうして優が生きてるのは相手がうまく急所を外し攻撃を仕掛けてきていたからだ。
戦闘スタイルは明らかにテロ組織の者とはかけ離れたもの。テロ組織のスタイルが例で言うならば殺し屋スタイル。
しかし、このDMはどちらかといえば――
(人としての感情と葛藤して戦ってるような感じだよな)
そう、まるで自身の言うとおりに行動を起こせないような動き。
面のせいでDMの表情は伺えないが意思とは無関係にこの試合に彼女が出てるのは明らかだった。
優がDMに向けて刃を振り払い続ける中でもその行動は顕著に現れてる。
的確に急所を狙った一撃が突然と逸れて別の場所を狙ったりというような。
さきほどの『アースクエイク』も心臓を狙った技だった。
軌道線状態は間違いなくそうだったが突然それは逸れて肺へ突き刺さった。
そんな行動のおかげでうまく迎撃とカウンターの組み合わせを行って攻撃が出来てるとも言える。
DMも腕にしびれをきたしたように剣を持った手がカタカタと揺れていた。
そして、技を放ったことによってひとつ剣を無駄にした。
(雷属性の魔法のほうが得意だということもこれで分かったしな)
彼女が先程から双剣で挑みに来てたことで主題の魔法がわからなかった。
人は各種、かならずひとつの魔法を主立って使うし、全種類使えたとしても大技やこまめな操作はできない。ひとつ魔法のみしかそれらはできない。
今回の技で雷魔法が彼女の主な魔法であることを見破った。
現状、捨てたのは雷にしてた剣だったはずが、魔力を変更させ握った剣を雷へと変えていた。
DMがにじり寄り始め踏み出した。
詰め寄ってきたDMの横薙ぎを優は炎の剣で食い止める。
激しく剣戟を交わす。
上下左右一心不乱にぶつけ合う両者。
実況者が熱烈にその状況を説明してる。
さっきより剣速を跳ね上げ、技も少々テクニックを加えた動きをする。剣でのフェイントからのフェイントで右手からの拳。
その逆だったりはたまたフェイントフェイントで突きや上段切りなどといったコンボ技。
まさに、先ほどよりも巧みな技の応襲をDMに与える。相手も似通った攻撃に転じてる。
本気を出す分技も変わる。
「DMさんよぉ、あんたどこで働いてその技術を身につけた? もしかして、誰かに操られてるんじゃないか?」
「‥‥‥‥‥」
「ふーん、教えられないってわけか。まぁ、俺も同じ立場だし何にも言えんっし無理には聞かないが、でも、俺が勝ったら少しは教えてくれてもいいよなぁ! あんたのマスターに挨拶願いてえしな」
「っ!」
カウンターを相手が打ち放つ寸前に合わせて優が蹴りを見舞う。
相手の切っ先と優の蹴りがぶつかりDMの剣が弾かれる。
その隙を練って優は体を回転させざま剣を振りかざして相手の顔面を叩きつけた。
たたらを踏んだ相手は飛び退いた。
相手の仮面に亀裂が走った。
そして、仮面が割れ素顔があらわとなる。
その下の顔はきれいなターコイズブルーの瞳と切れ長の眉整った鼻と妖艶な唇。
白い肌と美女顔負けの素顔だった。
「へぇー、そんな可愛くってきれいな顔を隠してるなんてもったいないんじゃないか?」
「‥‥‥‥うがぁあああああ!」
「なんだっ!? うぉ!」
突然のDMの咆哮に会場全体が音波で地響きが起こった。
とんでもない咆哮に思わず耳を抑えずにはいられない。
その隙に相手が袈裟上にきりつけてきて反射的に回避をして後ろへ下がり間合いを取る。
「スガオミラレタコロス」
「っ! やっぱり誰かに操られてるわけだなっ!」
なんだかわからないあいての逆鱗に触れたようすだった。
このままではまずい。
剣同士が激しくぶつかり合って再度交差する。
優は奥歯を噛み締める。
実況や観客席ではその剣戟戦の状況の中を唖然として見守っていた。
なぜならば、観客の半数以上は知っており実況者もDMの仮面が割れた時にすぐに見覚えがある顔を思い出した。
『あっと、申し訳ありません。あまりの衝撃に我を忘れておりました。私の詳細な情報と目で見たことが確かであるのならば彼女、DMの正体は最近テレビなどで有名なあのアイドル、『LV』のリーダーのデイジー・ミッシェルだと認識しております。でも、彼女はここ最近消息不明となっていたはずですが――』
実況者は戦況を眺めつつゆっくりとそのことを伝えるように話した。
観客席でもにわかに信じられないという話し声が聞こえ始め騒がれ出す。
「なぁ、あれってあきらかにデイジーじゃね?」
「でも、彼女って行方不明になってたんじゃ‥‥」
「これ警察に知らせたほうがいいんじゃねえの。つーか、中止しろよ」
いろんな困惑と予想のおりまぜた観客の会話。
まさに、騒然となる状況。
そんな騒然となる現場を戦闘している龍牙優は気づかないはずはなかった。
******
突然の変貌はまさに困惑。
今まで冷静な戦闘は過激さを増し容赦なく急所を今度は狙い来る猛獣の攻撃となっていた。
優は一度間合いを取って突然騒がしくなった観客の方に目を向ける。
さきほど、実況者が何かを話していたが戦闘中にそんな会話をいちいち気にはしていられない。
しかし、やけにこの観客の驚愕に騒ぐ声は気にかかる。
「‥‥‥‥コロスコロスコロスコロス」
「まるで、意識のない獣だなっ! おい!」
「マッサツ」
「抹殺か。出来るならしてみなっ!」
魔法による斬閃を障壁で防ぎ、お返しに斬撃を飛ばす。
「っ! メイレイゼッタイコロス」
速度が上がり踏み込みざまDMは、魔力を上昇させた。
雷の剣を捨てたかと思いきやそれは新たな魔法を出現させるための諸策。
両手に雷の魔力で構成された剣が握られていた。
魔装武装――。
双刀を左から振り上げてから、体を回転し右へ切り替えて振り上げる。
二段斬りの攻撃を剣で防ぎ、アバラへ蹴りをたたきこむ。
DMが横っ跳びに吹き飛んだが体を回転させて地面に足をつけて耐えた。
見れば、刀の刀身に魔力を帯びさせ拡大させたことで防壁が衝撃を吸収していた。
大きな剣。バスターブレードクラスだ。
そんなものを振り回せる腕力を持っているとは驚いて唖然とする。
「そんな大きさを持てるのか。驚いたな」
足場の地面に突然亀裂が走り。魔力の刀が幾千本と突き破るようにして飛び出てくる。
全身を使い身軽にステップを踏みながら交わしていく。
しかし、わずかに体を切り裂いていく。
足に魔力を込め一気に蹴りで辺りをなぎ払い跳躍する。
それを見切っていたのか頭上にDMがいた。
先に優よりも上回る跳躍をしていた。
(跳躍?)
いや、ちがう。背に魔力の翼がわずかにみえる。だが、太陽に反射しその全貌が眩しくって見えない。
(眩しいのは翼による視界をふさぐ攻撃か?)
「フェザーズダンシングブレイク!」
翼から突然羽根が散るようにして雷の弾丸が散りだす。それらが数秒後には優へ弾丸の猛る千本の雷となって降り注いだ。空中上の一瞬をついた攻撃。
やられながら降下する先には突き出た刃。
全身障壁を展開し防御へ移行しようとする刹那に間合いへDMが入り舞い踊るようにして双刀を縦横無尽に振るい斬りつけた。
障壁を展開できない。
「トドメ!」
最後に横凪の一閃が優の懐へ入った。
吹き飛ばされ――雷をまとった優が落下し刃の群れと煙が舞う。
遠くの間合いを取って着地したDMは終わりとばかりに双刀への魔力循環をうち消した。
『これは決まったぁああああ! さすがにこれで起き上がれることはありえません。これで生きていればもはや不死身だぁああ!』
実況の言葉通りだとばかりにふっ、とわらうDM。
審判もこれは決まったなとばかりに旗を揚げる準備をするように腕を徐々に上げ始める。
しかし、その手をぴたと止め口をあんぐりと開け目を見開いた。
観客も困惑のざわめきは驚愕のざわめきに一気に切り替わった。
話題は龍牙優に転じる。
『この男はいったい何者なんだぁああああ!』
優は全体に赤いオーラをまとって立ち上がっていた。
そして、DMは驚愕として見た。いや、それはDMを操ってるものか。
仄かに彼の眼が赤く光全身の傷口が言えてることに。




