魔法実技授業――――武装魔法講義1
シェルシード騒動から数日経過する――
『第20回魔法競技ランク戦大会』はもう、あさってには行われてしまう。
みんながピリピリとした環境下に置かれていた。
雪菜は優を心配してるあまり授業に集中ができない。
「本日は武装魔法の実技を行うわよぉん。各自支給された武器を手に取りなさぁい」
第2グラウンドで開始された6時限目の授業。
今日は合同授業で雪菜のいるクラス1-Cと友美やリーナのいるクラス1ーBと優たちのいるクラス1-Aの合同。
1-Aは今日はほぼ少ない。
それもその筈、優は治療中でおらず、童子や鼎も学校行く許可をもらえてはいても大半が職場生活を義務付けられているために今日もその職場で仕事があって休みだった。
でも、雪菜は何不自由はなく参加をする。
周りの視線は若干冷ややかなものだが気にはしない。
気にしたら負けだという感じである。
冷ややかなのも仕方ない。
雪菜は今回の大会で優勝候補と目視されている。
なぜなら、学力成績上位者であるのだから。
しかも、メンバーの二人、エリス・F・フェルト。リーア・メルティシアも同じくである。
それに、リーアは学園の生徒会長。
生徒会長という立場は学園内最強の称号を冠する。
そう、彼女は前大会優勝者。
優勝候補と目指されても仕方がない。
――今からおこなうのは魔法実技の授業。
先生が言ったように武装魔法の授業。
支給された武器はみんながそれぞれ違う。
自分に合った武器というものがあるからだ。
体格または手になじむ感覚そう言った具合に武器の種類が変わってくる。
雪菜の場合は刀だった。
刀を手にとって構える。各自みんな構え出す。
「じゃあ、武器に魔力を流して浸透させなさぁい」
武装魔法は、その武器に魔力のエネルギーを乗せることだ。
魔法と武器の融合が武装魔法の真髄。
これは魔法戦闘においては有利な技であり、多くの異世界の警察組織や魔法騎士はこの技を得意としている。
雪菜もまた国家秘密組織の『掃除屋』の研修役員としてこの技は得意である。
氷の魔法を乗せて刀に吹雪の渦が纏う。
「あらん、やっぱりあなたはできる子ねぇ。キタサカさん」
背後でオカマ教師のミクサ・ゴルザック先生はほめたたえた。
「そうでもないです」
謙遜の言葉を返し雪菜は刀身に集中した。
その時聞こええた会話が集中を乱れさせた。
『え? ユウくんのパートナー生徒会の役員二人になったって本当!?」
『まじまじ。もう優勝決まりだよね』
『あーあ、来年頑張ろうかなぁー』
耳を疑うようなことを聞いた。
雪菜の愛する従兄であり、役場の先輩たる彼には自分お親友と組んで欲しかった。
雪菜はアリスからの指示でメンバーが一人はエリスと確定していた。
もうひとりはといえば、前から彼女から声をかけられていたために断れず組んでいた。
「雪菜っ!」
エリスの叱責する声で気づいた。
刀に送らせていた魔力は過剰な量となり暴発している。
「おさえ‥‥られないっ」
「ちょっとぉ、これはぁすごいわぁん!」
教師が暴発を押し止めようと魔法を行使したが吹雪の強度が強く押し崩される。
「そんなぁん! キタサカさん刀をはなしなさぁいん!」
「そ、それが手が凍りついて」
雪菜の握った手は刀と結合するように氷結していた。
手放すことは難しい。
「ていやぁ!」
その時エリスが頭上から裂帛の炎の魔力を放った。
衝撃波は雪菜の氷結された部分を溶かすのみでそれいがいに害をなす炎ではなかった。
見事な魔法技術に拍手喝采。
「さすがねぇん。フェルトさん」
「いえ、この程度は基礎の過程の魔法に過ぎません」
エリスはさらっと一言漏らしどこかへ行こうとする。
「どこへいくのぉん?」
「すこし、魔力を使いすぎたので保健室で休んできます」
「あらぁん、へいきぃ? だれか――」
「一人で平気です。それから、ユキナ集中です」
エリスが何気なく囁いたが彼女は顔を険しくさせ腕を抱いていた。
無理にあまり使わない日の魔力を放出したことにより左腕に深刻なダメージをおっている様子だった。
雪菜は即座に気づいて同伴しようにも彼女の背は誰も来るなと言ってるのがわかる。
一人でなにか考え事でもしたいのだろう。
彼女もまた『第20回魔法競技ランク戦大会』が気がかりなのはすぐ悟った。
雪菜は改めて刀に魔力を込めた。
次に込めた魔力は苦手な風と雷。
主に使える魔力は氷だけだが別の魔力、風、雷、光この3種のみは使えないわけではない。使えるが苦手なのだ。
サイクロンが刀に憑依する。
「あいからわず、すごいねぇー雪菜」
「うん」
ふと、声がかけられる形でほめられた気がしてそちらへ視線を向ける。
友美とリーナがちょうど二人してもう武装魔法が完了した感じで歩み寄ってきた。
リーナの手にはレイピア。そのレイピアに乗る魔力は雷。刀身を電導し鋭くとがった電流のようになってるレイピア。
友美の手にはチャクラムだ。刀身には何も付与がされてはいない感じには見えるが微細ながら光が切っ先に見えた。
「そっちも随分と周りよりできてるよね?」
周りを見て言う。
実際に、周りの連中にとってはこの技術は一番難しいらしく手こずってるのがほとんどだった。先の雪菜のようにあたりに落雷が飛び散ったり水が爆発したりあたり一帯を氷結させたりと散々だ。
「実際、ここだけの話私たちはずるいじゃないですかー。期間とか違いますしぃー」
「そう‥‥‥‥だよね」
リーナの言葉に友美はうんうんと首をうなづけながら同意の言葉を発する。
実際、雪菜もそれは同意である。
期間、というよりも魔力を実戦で使ってる年数が違う。
ここにいるのはあくまでただの富豪の娘が多い。そんな彼女らがすぐにそう雪菜たち、仕事に就いてる人みたいに使えるものではない。
そう、彼女たちはまだこどもで、教育中の身分の学生。
たとえばできたとしても―――
「お、あの子はできたみたですねーってたしかあの子は風紀の‥‥」
遠くの場所で杏里と一緒にやっている女の子がいた。
(たしか、シートコールの時の名前はミユリだったはず)
ミユリが剣に火を巻き起こしていた。
まさにそのまま柄から刀身を燃え上がらせてるだけ。
雪菜のように刀身だけに渦を巻くように炎をまとわせるということはできてはいなかった。
「あれだけでも大したものですよぉー」
「そう、だね」
雪菜はそのとき、彼女と目があった。
「どうも、たしか‥‥北坂さん‥‥でした‥‥よね?」
ゆっくりと一言一言紡ぐような口調で彼女は雪菜を名指した。
「はい、北坂雪菜です。ミユリさんでしたっけ?」
「ミユリ・ハーフェス・杏里といいます。優さんからあなたのことは聞いてます」
「お兄ちゃんが?」
意外だった。
優が自分のことを語ってる印象はない。
「ウザったい従妹だとか」
「そう」
雪菜はあとで彼を殴ろうと決心する。
「あの‥‥相談なんですが‥‥」
「なに?」
「一戦だけで‥‥いいんで‥‥練習相手‥‥して‥‥くれ‥‥ませんか?」
これには雪菜は驚いたが断るはずもない。
彼女も大会に向けて熱意があるのだろう。
「あ、それならわたしもいいでしょぉーかしらぁー?」
「クーちゃん‥‥」
雪菜は彼女の名前も聞き覚えがあった。
クリーエル・杏奈・フェン。彼女もまた『シートコール事件』で被害を受けたひとりである。
「おもしろいですねぇーわたしたちもそれさんかさせてくださいなー」
「‥‥私も」
これで練習試合がなんだかんだで決まった。




