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国家秘密組織と特待生  作者: ryuu
前章 潜入調査開始――――テロ組織『シートコール』との戦争
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会議

 社内寮、105号室にて、龍牙優はやっと、仕事が終わって風呂上がりにとソファで体を寝そべらせて酒の缶を片手にしてうなだれる。


「あー、今日もつかれたぁー」


 年齢はむろん15なので本来は法律違反だがそんなの優には関係ない話だった。

 今時、15で酒を飲んでない奴などいない。海外では15から酒を飲んでいいと許されてる国だって存在するのだ。

 優がいる社内寮は、国家特別暗部殲滅掃討委員会―――通称、『掃除屋』は国家関連本社ビル94階にある部屋のものだった。

 ビルの93階94階が社寮となっており、もともと所属人数が少ないため社内寮の部屋もそう多くはない。

 そして、優は報告書もここに戻る間の車の中で書き終えて提出もアリスに終えてるのでこうして仕事の疲れをとっていたがまた明日から仕事だと考えると憂鬱という気分であった。


「もう、8年はこの組織に就いて経つのかぁ」


 そんな感慨にふけて思いをはせる。

 最初はどこにでもいる小学生だった。

 普通に生活をし、普通に仲のいい友達と遊ぶ。

 いや、すこし、偏見がある。

『普通』に中のいい友達‥‥。

『普通』は優の周りにはいない。

 基本的に仲良くなったのは『亜人』の子ばかりが多かった。

 家柄の良い子ややくざ関係所属の子。

 そうした子と仲の良いのも無理はなかった。

 優自身の父親は現世界に多大な影響をもたらした人物。

 現世界においては有名人である人。

 そんな人とコネを結ぶことができれば大変裕福な暮らしができる――そう踏んだ輩が多く集まった結果が優の周りに集まる御子息、御令嬢。

 子供を使った親の策略というやつである。

 優はそんな息子なわけだからそうなるのも仕方はなかった。

 だが、父親は『亜人』だったために、基本、人間界には帰ってこず母親を一人にしといて金だけ残して消える毎日。

 母はそんな父に何も言わないでただ帰りを待っていた。そんな母の切ない表情は優にはつらかった。

 『――学園は3年後に向け新たな制度をしいており、注目となっております――』

 ニュースではどこぞの学園の様子が放映されており自分に関係はないそう思いながらテレビを消した。

「『亜人と共存』を目的とした学園か。うまくいくのかよ」

 そう言いながらテレビを消して疲れた眼をこすりながら日常の当たり前の身だしなみを整える作業に入るようにソファから立ち上がる。

「歯磨いて寝るか」

 そう言って優は洗面所に向かおうとしたが――テーブルに置いてあった携帯の着信ランプに気付き手に持ちながら洗面所へ行き起動をする。

「会議? 明日の早朝にぃ? 何だ重大な会議って?」

 アリスからそのようなメールが来るとかなり面倒な内容が基本であったことは優は知っていた。

「またしても面倒事が舞い込むな。はぁ、さっさと寝るか」


 ******



「んっ‥‥‥‥ふぁぁあー」


 日の光がカーテンの隙間から射し込み顔に眩しく照らした。

 優は眼を覚ましてそのまま、リビングを出て洗面所に行き顔を洗う。

 タオルで顔を拭きつつリビングに戻ってテレビをつけつつ、リビング内の壁に立てかけてあるスーツを手にとって着替える。

 ふと、テレビの時刻表示を目にし、目を瞬いた。


「7時50分‥‥‥‥ってやべぇ!!」


 何がやばいかといえば、昨日のメールで言い渡された重大な会議である。

 それも今日の8時から――。

 ここから会議室まで約15分前後走っても10分とぎりぎり。

 これでも社会人なので10分前行動厳守であり遅刻はかなりやばい。

 急いで着替えてテレビを消して、銃を携帯し、部屋を飛び出し戸締りする。


「おっし」


 そのままダッシュで廊下を突き進み、立ち止まって左わきの壁に見えた扉――非常階段の入り口を開け駆け下りて80階について出口を開ける。そのまま左に曲り一直線に早歩きで向かう。

 周りの目線が刺さる。そう、会議がこの場所で行うなんてまれなのだ。

 だって、こっちの80階という部署は正規の人間の対応部署も兼任してる方だった。暗部、『亜人』担当や非合理な謎の事件担当部署――裏の部署とは真逆。

 80階という正規の部署は電子関係の業務課がある場所らしい。

 詳しくは聞いてないし興味ないので知らない。

 そんな部署連中の視線にくぎ付けの優はかまうことなくかけ出して見えた。

 ――会議室の掛札。

 扉の前で急ストップをかけノックした。


「入りたまえ」


「失礼いたします」


 優はお辞儀をしつつそっと扉を閉めて入る。

 中はU字を逆型にしたように並べた席。会議席の場。

 議長席、いわゆるお誕生日席には厳格な初老の男性が座っており、議長席から左側2番目に偉い席にアリスがいた。他にもいろんなメンツがそろいもそろってる。


(どいつも国家犯罪対応の政界じゃあ名の知れた奴らばっかじゃないか―――って、うげっ、嫌な知り合いもいるぜ)


 優は自分がなぜこんな場に呼ばれるか昨日の寝る直前にメールで問いただしていた優だった。優の立場はただのアリスの側近。

 こう言った会議の場にふさわしい人材かどうかは微妙な立ち位置だった。

 優の場合側近でも活動が主な自分の職務であり書類や作戦の職務は基本アリスの職務。

 そうだという認識でいた。

(でも、呼ばれたんだよな。書類とか作戦立案系は専門分野じゃないぞ)

 結局寝る直前のアリスの返信文は『明日になればわかるわ』それのみだった。


(この空気‥‥‥‥怖ぇえ、つーか、俺って遅刻してるし‥‥‥‥本来入れさせてもらうだけでもありがたいよなぁ)


 などと思いつつ、なぜか、議長席の右角の近い席が空いてたのですぐにそこが優は自分の席だとわかり座った。

 しかし、ここは3番目に偉い人物が座る席。

 自分など座ってよいものなのか?

 優はそう思いを馳せつつも厳格な初老に目を向けた。

 優は彼を知っていた。

 現、世界対策統治せかいたいさくとうち管理責任者かんりせきにんしゃ兼国防総省長官こくぼうそうしょう兼亜人管理あじんかんり担当官庁たんとうかんちょうを兼任する超超大物。優らの上司に当たる存在だ。

 彼は一応、世界対策統治管理責任者となっているが本来それは優の親父の役職だった。そして、亜人管理担当官庁はアリスの親父が兼任してたもの。この人の本来の役職は国防総省長官なのだ。

 そうなってしまったのも仕方はない。

 ――――2142年に起きた事件が発端だった。

 アリスの父親、国家特別暗部殲滅掃討委員会―――通称、『掃除屋』兼亜人管理担当官――亜人が人間界で暮らすにあたるに対しての管理を行う役職、市役所職員の様な役職のトップ、ディド・クリスティアが殺された事件。

 裏では大きな組織を動かし表では財政のトップとまで言われた彼が殺されたのである。

 即刻、優の親父、遠井優という世界対策統治管理責任者は異世界に行っていたため帰還し、状況に応じた。

 だが、俺の父も犯人を割り出し、処罰を与えたといことを『掃除屋』内に伝えた後は失踪。

 異世界に帰還した情報皆無。謎の失踪だった。

 俺の父も何らかの事件に巻き込まれたのではと話は上がったが2150年現在もその真相はわからない

 この世界対策統治管理責任者という役職を持つ父は世界同士の状況を管理する立場にあった人間だった。異世界とつながる現代ではそれによって世界同士で歪み、いわゆる『気象災害』が起きやすくなっておりそういうものを未然に防ぐ必要性がある。そして、その歪みは亜人の来訪もあるしそう言った災害、世界の種族間の管理も含めての役職。

 そんな役職を持った人間の失踪はより世界に混乱を招いた。

 即座に対応すべく動いてくれたのがこの人、源蔵正一げんぞうしょういちだ。本来は国防総省長官だった彼は早期に対応をすべくこの二つの職務を兼任することを買って出たことは優の記憶にもあった。

 ちょうど――アリスが『掃除屋』のボスとして決まった時期。


「よくきてくれた、龍牙優。だが、遅刻は見過ごせんな」


「遅れてすみません」


 向かいの席に座るアリスが口パクで『何やってるのよバカ』と訴えてるのがすぐわかる。


「今回は君が主役となる案件も含まれてるんだ。遅刻しないで来てくれたまえよ。次回以降は」


「はい、申し訳ございませんでした」


 まわりの視線も痛々しいほどまでに優の背に突き刺さってくる。遅刻はまずった事を十分に理解した。

 あやまった直後に俺は妙な単語に違和感を覚える。


「俺が主役ってどういうことですか?」


「それはこれから話す、では、これから、現財政における種族間問題の上昇対策会議兼現在の犯罪減少対策会議を行う」


 会議の序説の内容はあまりにもシンプルなものだった。

 激化の急増した亜人の犯罪の新たな対策の考案とそれに対する法律の新案、異世界の通信状況、過去に異世界に行った人物らの動向調査etc。基本的に言って主だった調査や確認のものだ。毎度これは会議を行う際に確認をすることであるため何ら不思議なことはない。

 少し変わったことといえば法律についてや激化状況の対策考案についてくらいか。

 それでも、優は専門外な用語に頭を回し必死で付いてくのが精一杯で何一つ口を出すことはできない。


「では、このような手筈で進めるとしよう。では、続いての案件に移りたい。これが今回の本題だ諸君」


「え? 今のが本題じゃあ‥‥‥‥」


 優のセリフにみんなの視線が冷たいものに変わった。

 こいつはバカかというような眼。

 失態をどうにも踏んだことが一目でわかるありよう。


「本当にあなたたちクズ野郎は物分かりがないのね」


「会議中だぞ、憲明のりあきテロ対策室長」


「ちっ!」


 紫色の派手なスーツを着た男が優をさげすむ発言をしたが、一言を漏らしただけでハンサムな渋い中年のスーツ男がその発言を黙らせた。

 襟元には警察署バッジが光る。


「ンッ、最初に申しただろう。今回は君に重要視する案件があると」


 一つ咳払いをして場を整え、源蔵正一総統管理庁が告げる。


「ええ、はい。ですが、今の案件は俺が重要視する案件では? 対応策は実に『掃除屋』の職務に準じたものだと認識いたしますが」


 そうそのすべては優のような『掃除屋』の重要視するべき案件じゃなかったのか。そう考えていた。

 でも、その件には関わるべき管理職はもう一つあったな。


「それもそうだ。しかし、龍牙優君にはそれ以外に最もやりうるべき任務について話す」


「最もやりうるべき任務ですか?」


「そうだ、それがこれだ」


 そう言って後方に電子スクリーンを転写し映像が出た。

 そこは綺麗な白い建物だった。学校という感じのような建物だ。

 広い庭園や学生らしき制服を着た女子が校庭で必死に部活をしてる風景も見て取れた。


「あれこの学園ニュースで昨日の夜やってた‥‥」


「さよう。この学園は今では大々的に話題となっているが内容に関しては事細かな詳細はまだ秘密裏にされている。そして、今から話す案件はこの学校、『都立共生とりつきょうせい学園』に君を潜入調査に向かわせることについて話し合う」


「っ! 潜入調査ぁ?」


 優はわけがわからず、画面の学校を再度見つめ瞬きする。

 学校など優には通う意味はない。

 優は教育の過程においてはほぼ終了をしていた。

 それは家庭教育においてだった。

 それもこの業界に入るためにそうなってしまったが――。

 優の心情は今さら学校というのはさすがに気が引けた。


「潜入調査‥‥ですか‥‥任務なら仕方ありません。でも、一つ疑問なんですがこの学校は至って平和そうに見えますが何か問題があるんでしょうか?」



「問題が出てくるんだこれからな」


「へ?」


 画面は文字へと切り替わる。

 学園内における内容だ。

『本学園は唯一の亜人と人間の共生する学校である。そのため学校内では規律を厳しく重んじており特殊な態勢もしいいており―――――』

 と長々と書かれていて目がつらくなったのでそれ以降は読むのをやめる。

 どうやら、学校の紹介文のようなページだった。


「――って亜人と共生してた学校なんてあったんですか!?」


「君は昨日のニュースを聞いたんだろう?」


「すみません、内容はまるで聞いてませんでした」


 最悪だ。まさに、社会人としての失態。たしかに、優の様な管理者はこういったことを事前に知っておく必要性はあり、時事関係に疎くては話にならない。


「ここに記載しての通りだ。この学校は唯一の亜人と共生してる学校である。そのために2年後にある改正案も踏まえているのだよ」


「改正案?」


「それは会議後に詳しくアリス君から聞きたまえ」


「へ?」


 優はアリスを見てみればアリスは苦々しく顔をしかめていた。

 その表情はどういう意味を指すのか不安に感じる。

 (妙な違和感を感じるぞこの案件)

 生唾を飲み込み――続けるようにして、自分なりの解釈をしはなしの中の疑問を聞いてみる。


「要はそれってその改正案に基づくために素行調査みたいな感じですよね?」


「ふむ、それもふくまれるが何より学園の理事長からの申し出だ。そして、この学園はこれから先の未来を担う大事な学校だ。だからこそ、より学校内の現在に起きてる生徒らの問題も解決して欲しいというのが学園側の依頼である。そして、もう一つは――――いや、これはアリス君に頼むとしよう」


 最後のをまたアリスに頼んだことにさらなる違和感を感じた。

 なんか裏がある。

 というよりも、重要なことをさっきから省いてしゃべってる気がするのだが‥‥‥。


「まぁ、問題解決は『掃除屋』の職務ですから構いません。ですが、学校の映像見る限り平和そうなのですが何度も言うようで申しわけありませんが」


「目でだまされるな。『掃除屋』の憲章を忘れるな」


「はぁ、そうですね」


『掃除屋』憲章、第一項目、『相手の見た目で判断するな、目でだまされるな。相手の心髄を見抜け』

 わすれることは決してダメなことを忘れていた。

 いけない過ちを犯してしまう自分に優は反省をする。


「わかりました。本案件を受けさせてもらいますがどうして俺なんですか?」


「今回、15歳の男子という指定が決まってるのだ。それが君がちょうどヒットしてるからこそだ」


「へぇー、なるほど」


 詳しくはアリスが話すだろうしどうしてそう言う指定かは今はスル―。


「では、これで会議は終了する。では、各自本職に戻るように。では、解散」


 優らは会議を終え解散を果たす。

 結局、本案件の議題が一番短かったような気がした。


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