呼び出し
優は生徒会長たるプラチナブロンドの彼女とその付き添いのふたりにつきそう形で生徒会室に連行された。
「まずはじめに挨拶を述べますわ。ワタクシはこの『共生学園』生徒会長、リーア・メルティシアと申しますわ。それでそっちの褐色の彼女は書記のウィンナ・グローズで茶髪の彼女は会計のユリア・シャーテルベルグですわ」
二人が無言でお辞儀をし、友好的とはいえない態度だった。
「なぁ、さっきの話をしようってんなら俺は何も知らねえよ。ただ巻き込まれたに過ぎなくてだな‥‥」
「それはどうでしょうか? 龍牙優さん」
別に彼女が名前を知ってることに驚きはしない。
しかし、彼女は言う「それはどうでしょうか」という言葉はまるで優に関連性を示す非があったような言い方だ。
「ど、どういういみだよ? 俺はただの被害者だ。何もあの争いに関してはしっちゃこっちゃねえぞ」
「優さん、私たちは別にあの争いに関してを花好きは毛頭ございませんわ」
「何?」
では、何を聞きたくてここに連行してきたというのか。
彼女がウィンナ・グローズ。初期の彼女に何やら指示を送る。
彼女は応接室のような空間おこの生徒会室のとなりの扉の部屋を開け奥へ。
物音が聞こえたあとしばらくして隣の部屋からプロジェクターらしき機械を持ってくる。
「まずはこちらをご覧くださいな」
ユリアがなにかのリモコンを取り出した直後部屋は真っ暗となり背後からホワイトスクリーンが落ちてくる。
ウィンナがプロジェクターを起動させると、なにかの映像が画面に映し出された。
「第15回『魔法競技ランク戦大会』をこれより始めます! 閉会の挨拶を学園理事より―――ー」
それはひと目で分かった。
昔の『魔法競技ランク戦大会』の映像。
15回ということは今年が確か――
(20回とか言ってたな。およそ5年前の映像か。こんなものを見せて何を言いたいんだ?)
よくわからん顔でリーアの顔を見たが彼女の顔は無表情で何も読み取ることができない。
仕方ないので映像を注意深く見た。
数々のお偉いさん型の挨拶から始まり、トーナメントの対戦表が発表されてく。
映像は変わり、選抜を決めるための数々の生徒たちの死闘を極める先頭が映し出されている。
周りの観客が熱狂し先頭勝利者にはインタビューが有り、お偉いさん型に声をかけられる生徒が映っていた。
特に中でも際立って目立ったのがひとりの少女――
『ユリハネ・メルティシア選手が又しても勝利です! 今大会優勝候補とされておりますメルティシア選手やはり強い! 強すぎます!!!』
興奮に満ちた実況の声。
観客に悠然と笑みを向ける素振りすら見せない冷酷なお姫様のイメージを連想させる勝利者の美少女の姿。
黒髪の冷酷な瞳を宿した女性。
どことなく雰囲気はこの生徒会長にそっくりだった。
(似てる。しかも、この女の苗字――)
優は気づいた。
彼女はこの生徒会長の親戚かなにかなのだろう。
場面は変わるとエルフとドワーフの少女の戦闘場面へ。
『勝者! ミシェル・ステファー!』
勝利はエルフの少女だった。
悔しげに地面を殴り、ドワーフの少女が打ちひしがれる姿。
勝った少女に抱きつく幼いエルフの少女。
『お姉様!』
そんな幼い少女を見つめた負けたドワーフの女が飛びかかった。
それを見たエルフの少女が幼い妹らしきエルフの少女を庇う、飛びかかった血を身に浴び幼い少女は茫然自失する。
すぐに警備兵がドワーフを捕縛し、会場外に連れ出された。
エルフの少女は救護班に運ばれてく映像。
又しても映像は切り替わってエルフが戦うべきだった次の相手は優勝候補の『ユリハネ・メルティシア』。
不戦勝したユリハネは無表情でコメントに応えた。
「別になんとも思わない。ただ、相手が油断をするほど間抜けすぎるほど弱かっただけ」
冷酷すぎるコメントに記者がドン引きしてる描写が写りこんだ。
そのあとはずっと戦闘映像。
「優勝はユリハネ・メルティシア選手です!!」
予想通りの結果。
生徒の目はきついものだったがお偉いさんがた観客席にいる国家の関連者、中には優のオヤジ『遠井優』の姿やアリスのオヤジ『ディド・クリスティア』の姿もあって息を呑んだ。
映像は終わる。
「どうでした? また開かれるこの大会には多くの人が夢や希望を持っています。そして、実力あるものは誰もが勧誘をしたがりますわ。ワタクシの姉もそうでしたわ。けれど、彼女は前代未聞でチームを持ちながらすべての戦闘を一人で勝ち抜いた。付いた異名は「冷酷のアリア」」
優も気づいていた。
『魔法競技ランク戦大会』は通常チーム戦で行われる大会。
各国選手が武道の大会のように3人チーム編成で1対1で選手が戦い、一人かったら1ポイントで次の選手が戦う。
しかし、この大会の不思議なところは別に次の選手が出場をせずとも良いこと。
そう、一人の選手が連続して戦うこともありとしたルールなのだ。
それはチームメンバーの選手が戦闘できない状態で代役を立てる代わりに出来たルール。
もちろん代役制度もありだというルールである。
けど、この15回の大会であったエルフのチームは代役も立てずリタイアした。
それはユリハネの実力を理解していた戦略的離脱と言える映像だった。
ユリハネ・メルティシア、彼女は実に強いのだろう。
学内でも評判が高いほどに強いようだった。
それはまさに今の有のような立場――
優は次第に彼女が何をのぞみ何を聞きたいのかを理解した。
「龍牙優さん、今大会においていろんな方々が優勝を望んでいますわ。そのためにと考え学園の生徒のほぼ8割がまだチームを完成していませんわ。それはあなたというメンバーの枠組みを加えるためですわ。おわかりですわね?」
優は渋った表情をした。
先のエルフの少女もまた過去の因縁のために優勝を望み、自分を勧誘しに来たのだろうことは推測が立つ。
「あなたのせいでエルフとドワーフの彼女が先ほどのような争いを生じさせました。彼女たちは過去の因縁があるために毎度のことながらら争ってはおりますし今回だけあなたが原因とはいえませんわ。ですが、彼女たちが学校内であなたを原因で戦争を引き起こしたら困りますわ。それはほか生徒も同様に言えますわ。あなたは誰もが勧誘したい優勝候補とも腐れてる生徒ですわ龍牙優さん」
彼女の言いたいことはよく理解できるけれど優には考えが有り「チームを組んでいない」状態でいた。
「ですから、今回龍牙優さんに今大会におけるチーム候補があるか否かを問いただしたかったんですわ。私たち生徒会は学内行事の運営も兼ねてますので学生の8割がチームを完成させていないと大会の受理申請がまかり通りませんわ。ですから優さんの意志を聞いておきたいのですわ」
「‥‥‥‥なるほど、それは迷惑をかけた。単刀直入に申して俺は大会に出場する気は毛頭ない」
「っ! どうしてですの?」
『魔法競技ランク戦大会』。この大会はあくまで「学校行事」である。
そのために将来の先が見える夢の舞台だとしても参加や非参加する権限は生徒一人一人に与えられている。
そう、絶対参加権限は一切ないのだ。
別に参加しなくてもいいし参加しなかったからと言ってただ将来を実力で掴むことが遠ざかるだけの話である。
特に優の場合将来は決まっており、そもそも社会人という立場。
この大会に出場しても何ら意味を成さない。
しかも、『テロ組織』構成員を探す任務を担う優はこんあ行事にうつつを抜かしてる暇はない。
(ましてこの大会において『テロ組織』の連中が何かを仕掛けることはないはずだ)
もし、仕掛けてくるのならばすぐに身動きが取れる状態でいることが望ましい。
そう、それは観客者としての側が一番。
だからこそ、非参加。
しかし、その旨をどうやって一般人だと思われる彼女に伝えるべきかが悩みどころである。
「ゆうさん? 聞いていますの?」
「ああ、聴いてるさ。俺は大会に参加する気はねえ。そもそもこの大会に興味はないんだ。確かにいろんな生徒が俺を勧誘しに来てるけど全部断ってる。あんたらも知ってるだろ?」
「はい、ですので困り果て我が生徒会は動いたのですわ」
「‥‥はぁー、なら生徒会から伝えてくれよ。龍牙優は辞退したってな。じゃあ、話はそれだけなら俺はこれで帰らせてもらう」
「あ、ちょ――」
優は早急に生徒会室を出た。
腕時計を見て12時半を回っていたことをしる。
「昼飯食えるかな」
そういいながら食堂に向かった。
―――ー生徒会室の中でそれを見送った彼女は悔しげに爪を噛む。
「どうすればいいんですの?」
「うふふ、こまっちゃってるぅー? こまっちゃってるぅー」
「オレはだからいったんだ。特待生は大会に参加する気はねえってな」
「でも、参加させなくてはお姉様に怒られますわ」
「確かにそりゃァやだな」
「私も私も」
彼女たちの上司たる彼女に怒られることは死より重い罪。
彼女の命令により龍牙優を絶対大会に参加させ、大会で作戦行動に異常をきたさないために足どめをすることが重要であり彼を観察する上で近くに置いておく必要がある。
リーアは悩んだ。
どうすれば彼を大会に参加させられるか。
「そうですわ。ユリア、ウィンナあなたたちまだ大会の申請をしていませんでしたわね?」
「あん? そりゃ。」
「だってあたしたちたち、作戦があるからたいかいでるひまないないよぉー! うふふっ」
「なら作戦はありますわね」
リーアは薄気味悪い笑みを浮かべ一枚の紙を取り出した。




