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国家秘密組織と特待生  作者: ryuu
前章 潜入調査開始――――テロ組織『シートコール』との戦争
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仕事完了

 501号室―――それがターゲットの組織のボスが入室してる部屋だという確認は取れている。従業員になり済ました優は廊下を進む。道中、こちらを黙視する幾人もの厳ついおっさんが目に留まる。今はセルフサービスを装ってるため、警戒されずに501号室の扉の前に来ることができ、ノックした。


「誰だ!」


 中からハリのいい怒声が耳によく聞こえてきた。

 相手はそれだけ警戒をあらわにしてることがりかいでき、薄らと笑みがこぼれる。

 優にとってそれは一種の隙を生みださせる作用が出来ると確信をつく。


「セルフサービスです、ピザの配達にお届けに来ましたぁ」


「セルフサービスだぁ? そんなのいらねえよ」


 案の定、扉は開けず拒否の声が扉越しからかけてくる。

 まぁ、計算通りに事が運んで行く。

 順調に会話を引き延ばすように声をかけ続ける。


「そうはいわず、おまけで近々近くで行われるパレードのペアチケットなんかもお付けしますので」


「お断りだって言ってるんだっての!」


 手に持っていたトレーをわざと扉に当てつけられたしぐさをしてトレーの上に乗っていたピザを落とす。

 男の目に動揺が走るのを見逃しはしない。

 あきらかに新米のボディーガードマン。

 ベテランボディガードマンならば、迂闊に扉は開けはしないいくらこちらが粘ってもしびれを切らすことなく平静に対応できるはずである。

 優は事前に本日のボディーガードマンの名義を確認し、経歴を調べ済み。


「あぁ!」


 そして、悲痛な声を上げる。

 男は狼狽する。

 男は緊張の中にそんなアクシデントな衝撃が舞い込んでしまったばかりにどうしたらいいのかわけわからなくなってしまった感じだった。


「ちっ、なぁにちんたらしてんだ! ―――ってか、なんでそんなところで突っ立ってやがる! 明らかに今のは俺のせいじゃねえぞ!」


 新米ボディーガードマン男が俺にそう言ってきた。

 扉の隙間はわずかだが、人一人余裕で入れるスペースはある。

 ピザをトレーに戻しつつ尻目に部屋の中を伺う。

 手下は計4人、武装はあり、ボスはあの真ん中にいるやつだな。

 サングラスをかけたこわもてのおっさんが一人いかにも偉そうにふんぞり返ってるのが見えた。右腕には『虎のタトゥー』が目立つ。

 こわもての奴は取引相手か。


「おい、そんな、ショック受けるこたぁねぇだろうが? てめぇ仮にも従業員だろ! こんなのしょっちゅうじゃねえのかよぉ」


 と、俺がピザを乗せたにもかかわらずずっと下を向いていたので男は不安げに聞いてきた。

 意外とやさしく傷心者らしい手下に優は笑いをかみしめながらさらにからかうような言葉を少し交えた。


「私、新米でして、こんなしょっぱでやらかしてしまったら上司に何を言われるか」


 上目づかいでそう、言ってみる。まるで、このまままだ注文を拒否するのですかと願うようだった。

 男の目が閉じて舌打ちし立ち上がった。

 勝った。


「あー、わかったよぉ。なんか頼んでやるよ。ボス、何か食べますかぁ?」


 手下の男が背後を振り向く。

 優はスッと腰からナイフを引き抜き――――


「俺が頼みたいのはそういうことじゃねえんだ。なぁ、『黒東会こくとうかい』さんの手下さんよぉ」


 優は、一瞬で男の首元にナイフを当てていた。

 優の殺気に気付いたのか中で騒がしく声を荒げる男ども。

 男どもは人間の姿を一変させ『変異』し、体から赤いオーラを放出させ額から角を生やし始める。

 それは鬼の姿――


「なっ――てめぇ!」

「おとなしくしてろよ」

「うぐっ!」


 精神に付け込まれやすい奴――精神面が弱い奴は楽に人質に取りやすい。

 それはどの犯罪においても犯罪者がやる常套句。

 相手の表情を見てこいつは弱いこいつなら人質にできるとみてとる行動。

 でも、犯罪者はそれは自分も弱いからであり、より弱い下等な生物を求める反射的行動。

 だからこそ、男の犯罪者はたいてい子供や女を人質に取りやすい傾向である。

 現在の優はこの状況においてもっとも精神が弱く新米な奴が入り口側のボディーガードマンをやるのを見越して狙った作戦。


「ボス! 下がってください!」


 そう言って一気に鬼の手下どもがボスを後ろへ下がらせたのを見計らっては手下を人質にしたまま入室し、数名のボディーガードマンの様子をうかがう。

 均衡状態はそう長く持ちそうには見えない。


「てめぇ、なにもんだ?」


 人質の男が優を横目に聞いてきた。

 がくがくと震えながらしっかりと仕事をこなす姿勢は偉いと感心する。


「クズ野郎に教える義理はないね。それに、君はこの中じゃあ一番弱いから助かったわ」


「っ! 舐めるんじゃねえぞ!」


 男の腰から何か黒光りするものが抜かれるのがわかった直前俺は男の股に右足を素早く差しいれて足払い。バランスを崩した巨体は前へ倒れこみざま、優は前に回り込んで懐に入り背負い投げをして人質の男を残り4人の中にいた手下どもに投げつけた。その動作に敵の軍勢に刺激が与えられた。

 敵の軍勢――ボディーガードマンらが一斉に銃弾を発射。

 即座にソファに身を隠して俺はソファを背に攻防戦を強いる。

 仲間を容赦なく撃ち殺すと同時に室内にマズルフラッシュのあらしが飛び交い銃弾の嵐が飛び交う。

 壁やソファに弾痕を刻んでいく。その隙にと『黒東会』のボスはもう一人の交渉相手のボスと天井の通気口から逃げようとしていた。

 それを見て銃口をボス一人に指定し、銃弾を発射すると通気口にかけていた手を撃ち抜かれ転倒した。

 ついに『黒東会』ボスは逃走をやめるように大きく息を吸いこんで――


「おめぇら! 落ち着け!」


 ボスの一喝はすざまじい音波でやっと、落ち着きはらい始めて、「すいやせん」とみんなして口ぶちにそう呟き始める。

 上に立つ者の圧倒的、喝声は時に団体をまとめ上げる一つの力となる。


「あんた、結構若いなぁ。まだ、ガキじゃねえか。誰に雇われたぁ? どっかの組じゃねえよなぁ?」


「さぁ?」


 そんなそっけない返答は男の怒りに火をつけず逆に笑みをこぼさせた。

 『黒東会』――日本の『亜人』構成やくざ組織。

 ボス――黒刀こくとうあきら

 『黒東会』は数々の『亜人』身売買の株主として有名で今回は児童買春に手を染め始める魂胆の交渉が見えたとのことや、依頼者の児童が『黒東会』に拉致され殺されたことがあり、交渉の破断および抹殺命令がだされている。

 昭の背後にいる男――それが交渉相手。児童買春の取引相手って言うわけだ。


「‥‥‥‥‥‥不気味な野郎だ。つい従業員かと思えば――殺気も直前までまるでなかったはずが殺気丸出しやがった上にその腕にしてその若さの素顔驚いた。この手の仮はきっちり返させるぞ」



「アハハハ、手の仮か。返せるのならどうぞ返してみろ」


 優が笑ってバカにした途端一気に周りがまたしても殺気立ち銃口が向けられる。

 挑発が過ぎたか。


「てめぇら、やめろ! こいつを相手にするな。殺気が段違いだ。てめぇらじゃかなわねえ」


「なっ! ボス何言ってんすか! こんなガキ――――」


 昭は手下の反論に眼光をぎらつかせ押し黙らせた。

 やつのその慎重さは厄介が伴う。

 しかし、優にはどうとでもなる。

 優は瞬時にもう接近して心臓あたりにナイフをスッと置いていた。



「侮るなよ屑」


「っ!?」


 優の冷徹なまでの言葉は相手を萎縮させた。

 鬼のボディーガードマンらは動けなった。

 さすがにその辺は熟知した行動をとる。

 自分の一発脳動きでボスに当てられたナイフは刺しこまれる。

 ボスの命が相手にあると――


「おい、そこの取引相手さんも逃げるんじゃねえぞ」


 昭の背後へ語りかけるように言う。

 取引相手のとこはただ黙りながらトランクを置いて両手を上げる。


「それでいい」


「いま、なにをやった?」


 この場で唯一まともなのはやはりボスらしかった。

 現状を冷静に分析し、対応策を切り開こうという姿勢は悪くはない。

(悪くはないが無駄なあがきだぜ)

 ナイフを握る手に力を込めながら嘆息し、『掃除屋』としての交渉に入った。

 これは任務だ。ここから相手のランク付けの始まりだ。


「あー、もうめんどいっての。単刀直入に言う。あんたら金銭面でいろいろやらかした。だからさぁ、もし反省する気があるならもうそういうことやめるんだな」


「金銭面だぁ? ガキまさか『倭寇財閥わいかんざいばつ』の娘のこと言ってるのか? あれはあの小娘が勝手に自殺し――」


「‥‥‥‥‥黙ってろ」


 やっぱり、悪人ってのはこういう面に陥ればすぐに何が原因でこうなってるか推測はたつようだ。少しヒントを与えればなおのことである。

 優は相手の鬼畜性に吐き気がさす。


「子供を手にとって自分は悪くないとかよく言える」


「くく、そうか、わかったぞ。てめぇ『掃除屋』か。依頼されたらなんでも行う国家の暗部組織。一部のものしか知らない組織。まぁ、俺も実際に所属してるやつ見るの初めてだが‥‥‥‥まじで、尋常じゃない奴らの集まりらしいな」


「ボス? 『掃除屋』って‥‥‥‥」


「てめぇらは知る必要もねぇよ」


 ボスの言うその言葉はこちらとしてもありがたい極みだった。

 あまりこちらの事情を把握されてもあるのだ。

 黒刀昭――決行こちらの事情も把握してる人間だったことは想定内。

 昭に情報を提供していた国家の人間が現在刑務所行きとなっており、対策済みだった。


「金銭や活動の方手を引いてくのか? これ以上そっちで何かしでかすようなら――」


 腰のホルスターから優は銃を引き抜いた。

 左手に拳銃、右手にナイフ。

 別にいたって普通の武器だ。だが、ヤクザらは彼のその行為自体にただならぬものを感じた。

 まるで肉食獣にとらわれた獲物のような気持ちを。

 身動きが取れない、そう感じるように青ざめたボディーガードマンと取引相手――そして、黒刀昭。


「ひとつ噂を耳にしたこともあったなぁ、『掃除屋』には最年少のボスにして最年少の右腕がいると、そして、実力は裏業界随一」


「‥‥」


「何も答えないか‥‥‥‥まぁいい。さっきの質問の答えだが、無理な話だ。これから先いろんな奴とかかわり合うのには金が必要なんでなぁ。世界を敵に回すとしても金はいるんだ」


「そうかよ、じゃあ――――Aランク指定と認定。ただちに抹殺に移行する」


「てめぇら、来るぞ!」


 黒刀昭が『鬼』の力を使い優の足を払い脱出を図るように窓ガラスを取り出した銃弾で割る。

 あきらかに改造銃――違法だ。

 銃の反動の衝撃はかなり強いであろうが『亜人』の黒刀昭にはどうってことはない。


「遅い!」


 優は冷徹な瞳を昭や周りへ一気に投げつけヤグザが昭の指揮で動くより先に、銃弾を数発飛ばしており、素早くコンマ数秒単位でヤクザ連中の首筋にナイフで切りこみを入れていた。男どもの喉元からは血が噴き出し次から次へと倒れてく。

 悲鳴を上げる間もなくの死だった。

 唯一生かしといた昭はワイヤーを手にしたところで銃弾を胸に2発受けて胸を抑えながら吐血しうつぶせに倒れながら、ビルから落下した。

 落下する著久世に彼の口元の動きは「悪魔」そう言っていたが優は慣れっこの様に澄んだ瞳で「チャッ」と次は取引相手へ銃口を向けた。


「あんたで、最後だどうする?」

「こ、降参するから殺さないでくれぇ!」


 息を吐いてサングラスのこわもておっさんへ手錠をかけ終える――

 案外いちばん威厳がありそうなやつが弱いとか、萎える話だ。

 すぐにポケットからスマホを取り出しアリスに連絡を入れる。


「こちら『掃除屋』殲滅班、コード名DD。無事任務完了」


『ごくろうさま、じゃあ、すぐにそちらに掃討班を送るので直ちに現場から撤収をお願いするわ』


「了解」


 そして、通話を切ってその場をすぐに立ち去る――

 ホテルの出入り口で入れ違いになるようにして美しい美女とすれ違う。


「あれが掃討班か」


 優は後方をスッと見てから視線を前に戻してホテルを出て――夜の街、人ごみの多い歩道を歩きつつ近くの駐車パーキングに向かった。


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