決着
炎の剣撃がサードに一閃を与える。
胴を横に焼きはらう。
だが、サードは防壁で防ぐが――――
「甘いぜ、サード!」
サードの双刀にひびが入り蜘蛛の巣上に広がり粉砕。
「なっ――――ぐぁあああああ!」
防壁を破ってサードを炎の斬撃が胴を切り裂く。
炎の奔流がサードの体を駆け巡りサードは数歩後ろにふらつきながら叫び声をあげる。
「先ほどとは大違いです! なんです彼は!」
「DD、『Destiny Doragon』運命を変える龍の男」
「っ! まさか――過去に行われた異界でも最強とされる禁忌で封印されし古代生物の血を取り入れて復活したとされる男がいると聞きました」
戦闘の最中にも魅入られる龍牙優の姿。
グレンダは主の危険性を感じ取った。
過去の噂。
最強とうたわれた禁忌の古代生物の血を体内に取り入れたことで復活した『半亜人』の少年の話。
噂程度で仕入れた情報の中にそのような話がある。
しかし、あくまで噂だとその噂を知ってる誰もが思っていた話だ。
「コードDD、彼がそう呼ばれるようになったのは一度死んでからね。過去に彼は仕事の中で死んでしまった。そんな彼を私は生かそうと禁忌に手を染めた。今でも後悔してるわ」
ぞっとするような言葉を述べながら彼にあのような力を分け与えたことを告白する目の前の女。
『掃除屋』、アリス・クリスティア。
この女の内心は狂気じみてる。
「彼をあのような姿に変えたことを後悔してるですか‥‥。ならば、あの力を取り除く手段を講じればよろしいはずです」
「そうしたわよ。けど、彼がそれを拒否し私もそれを行えば彼を死なせるに至るから抵抗を感じたわ」
ただ冷血に答えながらもアリスは攻撃の手を緩めず突貫する。
「っ! 一切油断ならない女です!」
数発の銃声から続けて飛んでくる数十もの弾丸での攻撃を打撃でうまくいなし対処するグレンダ。
「龍牙優を倒せる人はこの世にいないわ」
アリスの言葉を決定づけるようにサードは押されている。
幾重にも結ぶ技の数々に押されまくり、疲労をサードのみがにじませている。
「サード様!」
「いかせないわ」
「っ!」
足場にはねた銃弾。
今度は逆の立場に立たされた。
こちらが援助に向かおうとする立場。
グレンダは歯噛みした。
――――アリスはそのグレンダの様子を見て冷静に別の戦闘を見た。
雪菜&アーリンVS友美&リーナ
そちらもほぼ決着がつきかけている。
特務の二人がまずかった。
(助けに行きたいところだけど‥‥グレンダを抑えておかないとサードにこいつが援助へ行ってしまい不利な戦況に戻るわ)
猫の手も借りたい状況。
全体の戦闘状況を合算すれば均衡してる状態にある。
「きゃぁ!」
「死ぬっすよ! 友美ちゃん!」
倒れた友美に隙をみて鎌をふりあげてとどめにかかった。
「友美―!」
飛び出し助け出そうとしたリーナの行く手を氷の斬の衝撃波が阻み吹き飛ばす。
「‥‥‥‥あなたの相手は私です」
「雪菜!」
地面に膝を突き立て変貌した親友の姿を見上げるリーナ。
――――まずい、アリスは銃弾で倒れた友美にとびかかろうとするアーリンへ狙いすます。
その時にグレンダがサードの援助へ向かいだす姿が映り込んですぐに照準をグレンダへ変更し撃つ。
「ぎゃぁ!」
「行かせないわよ」
「っ! そう容易ではなさそうです」
足を抑えうずくまるグレンダ。
アリスは友美がどうなったか気になりそちらに目線を向けた。
驚きの光景があった。
「あなただれっすか?」
「『掃除屋』コードE。あなたを粛正します」
「私を粛正っすか? あははは。受けるっす――がふっ」
容赦ない蹴りの一撃がみごとにアーリンを吹き飛ばす。
「エリス」
友美の前には団体に連れてかれたと思われたエリス・F・フェルトの姿があった。
アリスの左腕であり、アリスの弟子ともいえる彼女。
「北坂さん、あなたにはがっかりです。あなた様の噂はかねがねボス――いえ、師匠から聞き及んでおりました。私と同じくして師匠から技を受け継いだあなたがこのような闇に落ちることはショックです。私の腕でその目を覚まさせてあげましょう」
彼女の姿は一瞬にして水の鎧をまとう。
その姿は童話の中に出てくる人魚姫のような姿。
そう――彼女の本来の姿『ウェンディーネ』
「‥‥何の話か分からないけれどむかつきます。抹殺」
雪菜とエリスの戦闘が始まる。
エリスのことなら平気だと感じた。
それは杞憂にすぎはしない。
雪菜が3連撃目をエリスに放とうとしたとたんにカウンターを食らったのか派手に吹き飛び壁にめり込んで意識消失していた。
「な、なにをしたっすかぁあああ!」
飛び出したアーリンの足場が光りだしてその周りが氷結しはじめ彼女を氷の鳥かごが包み込み氷結爆発した。
中にいたアーリン・カークラインは氷漬けになっていた。
「戦闘が終わったころにあなたを氷解させてあげましょう」
エリスはそういいながら地面に膝をつきアリスのほうを向いた。
その目は――
(私は大丈夫ですのでボスも自分の戦闘に集中をと語っていた)
アリスはグレンダのほうを振り向く。
氷になった足をどうにか動かそうとしてるグレンダ。
アリスはそっと歩み寄ってグレンダの額に銃口を押し当てる。
「あきらめてとうこうなさい。悪いようにしないわ」
「私はサード様のために――死ぬわけにはいかないです!!!」
グレンダが膨大な闇のオーラを放出した刹那――無慈悲な銃声が響く。
グレンダは何が起こったのかわからないような眼をしてぐったりと倒れた。
血の海が広がりその光景を見たサードや『シートコール』の軍は氷結したように固まった。
伊郷は叫ぶ。
「貴様らの戦力は大きく激減した。素直に警察に同伴するかこの場で殺されるかどちらかを選べ。貴様らに選択権を与える。同伴するものは武器を下ろせ」
その言葉を聞いて軍団は武器を下ろした。
唯一武器を下ろさなかったのはサードのみだった。
******
「くはははは! やはり君たちは我々の計画に邪魔でした」
「おまえの最強の部下だった女も死んだようだぜ」
「たしかに、私の専属秘書も行ってくれていた彼女の死は心痛い。でもね、私は彼女のためにもここで自らの計画を破たんさせるわけにはいかないのです! わが王国を気付くために! 最終モードシフト!」
サードは笑みを浮かべながら剣を頭上に掲げる、すると、彼の体は膨大な闇に包まれ、漆黒の革製のスーツに包まれ背から悪魔のような翼が生える。
あれは吸血鬼の翼!?
現代の、吸血鬼は翼を生やすことはできるがそれは最上位クラスの者のみである。
吸血鬼の中でもってことだ。
「さぁ、本番だぁああ!」
サードの両手には一本ずつの闇色の魔力で構成した新たな刀。
優へ一気に迫る。
「ダークブレイジング!」
左から右への切り替わりの斬撃を袈裟状に切り裂いた。
「ぐぁ!」
「ダークショット!」
刀の切っ先に魔力の残子をためてレーザーを放つ。
「ぐふっ!」
体を貫き血を吐きだすだが優もやられっぱなしではない。
優の手からはダークショットで撃たれ倒れる直前にサードのに向けて炎の球体を放っていた。
「ちっ!」
炎の魔球を宙へはじく。
優は何度も炎の球体を放ったがすべて弾くサード。
「っ! なんのつもりですっ!」
一気にもう一度駈け出す優。
体のあちこちへ蹴りや拳を仕掛けていくがサードも負けず劣らずいなし防御しそして攻撃。
優も状況に応じて防御しいなす。
「こざかしいです!」
サードは優に一発けりを入れ弾き飛ばした。
しかい、違和感。
当たったという感触ではない。
わざと衝撃を受けて間合いを取られたという感覚。
「おまえは絶対にひっとらえる! 戦気幾世装を舞いし時、我に宿りし龍の雷光!
サンドーズデスパーク!」
サードの頭上に生まれた魔法陣からは小さな電龍が次々と現れサードに向け襲う。
龍はサードの周りで舞い踊るように襲うがすべてが無駄に終わった。
「そんな電撃甘いわ!」
闇の防風が電龍をすべて吹き飛ばし消しさる。
「これが切り札でしたか? 残念でしたね。私の勝ちです」
闇の防風を消し去ったサードの雰囲気は静かになる。
「このオーラは?」
「虚空より出でし数奇の運命を破壊しする、力の象徴よ我が闇とかせ」
サードの体から炎の闇がでて、すべてが闇の空間に包まれた。
いや、俺の半径6メートル空間のみ。
そこへ冷気が舞い込む。
優は中から剣で攻撃をするがいくら攻撃しても壊れない虚空の空間。
「これはなんだ!?」」
「クシャイントフレイアエダーンド!」
優の体を凍らせていく―――――
(意識が遠の――――)
闇の空間に向けてサードは炎の奔流を降らせた。
大きな爆発を引き起こし中から外へ氷のつぶてが飛び散った。
まるで氷解の爆発。
雪菜は爆音で目を覚まし――アリスは動こうとしたが思った以上の疲労で動けない。
「おにい‥‥ちゃん」
「DD!」
だが、返事はない。
彼は砕け散ったのだ。
雪菜も何が起こったのかわからない。
足元に何かが転がる。
それは雪菜がよく目にした兄の社員証の欠片。
「お兄ちゃん‥‥お兄ちゃんどこ?」
雪菜は目の前の闇色のオーラを放出した爆発地点を見た。
「そんな‥‥まさか、いや、いやぁああああ!」
「ああ、うるせえな」
煙が晴れた中で炎が舞いあがった
そこから優の姿が現れる。
「お、おにいちゃん!」
「うっせえぞ。雪菜。――ったく、お前の兄じゃねえっての。ま、その様子だと戻ったようだな。安心した」
「うん、迷惑かけた。ごめんなさい」
「謝ることはねえよ」
優は氷の破片まみれになった体を振りはらい目の前の男に殺気を向ける。
「なっ! ばかなっ! あの最上位クラスの技を食らって生きてるだとっ!?」
「詰めが甘いんだよ。こんな技で俺を倒せると思うなよ」
「どうやって防いだ!?」
「ただの防壁さ」
「そんなことありえない! ふざけるなっ!」
「ふざけてないさ」
そう実際優は真実を語っていた。
炎の防壁をあの場で出現させたのだ。
体の線に合わせたほんの数ミリの防壁をはってかなり高度の器用さを用いるのだ。
そして、爆発の瞬間には炎の奔流が放たれたが――――優はそれを飲み込みそれを防壁に回したのだ。
まさにそれも高度な技術がいる。
その行為をできたのは狂音からもらった銃だった。
(この銃、わずかに相手の遺伝子を読み込むことで能力値を計算したことで俺の体内に取り込まれたことも合わさって俺の身体能力をコントロールして防壁展開をした。とんでも武器だ)
しかし、たまたま運が良かっただけだ。
この武器は性能こそすごいが扱いがかなり難しい。
助らえたというにはほどとおい。
サードは優のわずかの炎の翼をみてそのことに気づいた。
「かの遠井優の息子はこんなにも強いのですか!」
「親父は関係ねえ! これは俺の力だ!」
優の宣言と同時にサードの周りで炎の龍が出現した。
数十規模の龍がサードを飲み込む。
「ぐぁああああ! なんだこれはぁああああ!」
「俺を怒らせた罰だ! てめぇは数多くの日と傷つけすぎた! その罰はその身をもって償え!」
「さっきの球体!? そうか、もともと罠をはって―――」
それは弾かれた炎の球体が龍と化したもの。
龍はサードの体を縛りつけ肌を焼く。
「サードおまえをひっとらえた後は殺してやる! はじけろ! スファイアス!」
「ぐぁあああああああああああああああ!」
炎の龍は電炎龍と化しサードの体を燃やしつくすのだった。
「くそが‥‥‥‥‥‥」
サードは地に倒れ伏した。




