優 解放
「うぉおおおおおおお!」
優の腕には魔力の刃が纏わり、それを高々と上段に構えサードへ向け振りかざす。だが、サードは自らの魔力を帯びた双刀でその攻撃を防ぎはじき返す。
「くっ!」
「ディスラーフォ!」
サードが詠唱し、優の地面が闇の沼と化し足を拘束される。
そこへサードが自らの刀にためていた黒の雷撃を優の方に向け斬の衝撃波を放った。
「がぁあああああああああ!」
体中に電流がほとばしった。
黒い沼はより電撃の威力をあげるものだった。
威力がオーバーブーストし爆発をひき起こす。それと同時に優は宙を舞いあがってそのまま地面に体を叩きつけられる。
「DD!」
別の場所で戦闘をしていたアリスは爆音に目を向ける。
倒れた優の姿にぞっとし、駆け寄ろうとした。
「よそ見をするんじゃないです!」
アリスに向かい剣の一閃を与えにかかるグレンダ。
わずかに胸元部分のスーツが切り裂かれ胸元が若干わずかに見え、肌が露出する。
ぎりぎり交わしたため服のみ切り裂かれた。
それでも、防弾繊維質を切り裂くほどの刃である。
まともに切り裂かれてたらタダでは済まなかったはず。
「くっ!」
すかさず、アリスは魔銃弾(魔法を乗せた銃弾)を撃ち放った。
氷に包まれ回転力をつけた弾丸がグレンダの胸に迫り来たがグレンダは剣ではじいた。
グレンダがしてやったりとした時にアリスが肉迫しており溝に強い蹴りの衝撃を食らいそのまま吹っ飛ばされる。
天井に舞い上がって強くしたたかに打ちつけられそのまま地面にあおむけで落下。
強烈な痛みが体中を駆け巡った。
「がぁっ!」
しかも、アリスが放ったのはただの蹴りではなかった。
氷と風の合成魔法を乗せた『蹴風』と呼ばれる魔法技だ。
「くくっ、グレンダの方が力はあるようですね。龍牙さん」
「うぐぐ」
優は痛みをこらえつつ腕で自らの体を押し上げ立ち上がる。
目線の先、それぞれの場所の戦闘状況はうかがえた。
アリスは倒れ、リーナ組も押されて地に膝をついてる。
伊郷も数が数で汗水たらし疲労がうかがえた。
「くっそ」
ここまででもやはりやつは自分の攻撃を食らっても平気な顔をする。
そして、魔法をもうまい具合によけられたりあたったとして平然としていた。
「右腕痛めましたか? なんだかがっかりですね。あの最強とうたわれた『掃除屋』の右腕がこの程度だとそのトップはさぞ弱いのでしょうか」
彼の言うことに反論をしたい。
けど、自らのこの哀れな姿を見せて反論をしても説得力など生まれはしない。
でも、実際のところ『掃除屋』の戦力はトップが龍牙優という噂もあった。
アリスはどっちかといえば戦う参謀タイプ。
知力の方が濃いのだった。
(言い返せえねぇ)
最もだからこそ言い返したいけれど言い返せない。
「優さん! 何をやってるんですかー! あなたの力はこんなものなんですかー! あの武器を使ってください!」
リーナの叱責が入る。
あちらも必死でアーリンの攻撃を受け流したり防御したりとしつつもこちらを気にかけていた。
「無視しやがってぇ舐めてるんじゃないッスよぉおおおおおお!」
「あなたはそんなものじゃないはずですーっ! 『掃除屋』に汚名を着せたいんですかーっ! アリスさんに汚名を着せる気ですかーっ!」
「っ!?」
「みんなを助けるのが『掃除屋』でもあるでしょーっ! 優さん! ――――何のために私が狂音さんから武器を与えられたんですかーっ!」
そうだ、何をおびえていたんだ。
いまさらこわがることはねえ。
薬膳狂音という得体のしれない女からいただいた武器に抵抗を感じていた。
しかし、その抵抗がなんだ。
力を求めろ。
アリスに汚名をきせてるよりかは身を亡ぼすほうがましだ。
あいつには助けられたし、人生を示してくれた恩義がある。
みんなを助ける!
そして、世界の運命を変える。
自らの手で壊してでも悪を滅ぼす運命に帰るんだ!
こいつからそんでもって――
(親父のことを聞き出す!)
コードDD――――運命を変える龍と生るんだ。
心臓が脈打ち、突如として赤いオーラが放出された。
「なんですか!?」
「悪いな、俺はてめぇの事をなめてたよ。通常でも倒せると思っていた。いや、そうじゃないかもな。違うか。俺はおびえてたんだな。この武器を使うこと、自らの力を極限開放をすることを。悪いがここからは抑制が利かなくなるぜ」
そう優が言った途端、彼の膨大に流れ出る魔力に乗じて窓ガラスがひび割れた。
ビル全体が大きな地震を起こしガラスは割れはじけ飛び風が吹き荒れる。
彼からは赤いオーラが放出し目もよく見れば赤く変色していた。
背からは炎の龍が垣間見え彼にまとわりついて龍の翼のように炎が形を背でなしていた。
「解放5、モード吸血鬼、我纏いし炎の龍と化す! 『龍炎血鬼《サラマンドヴァンパイア』!!!」
詠唱がとたんに終わると風が集中し龍にまたしてもまとわりついた。
サードらは突然の事態に目があかなかった。
目を開けた時にそこにいたのはまるでさっきとは違う優だった。
炎の両翼を背から生やし、炎のかぎづめを両手にまとわりつかせ、赤く変色した目、そして鋭い牙を生やし、先ほどよりも断然違う魔力の質と量――
「なんだそれは!?」
「サード、死ぬんじゃねえぞ。おまえは今から捕まえる! 『掃除屋』コードDD!
今から殲滅任務に入る。相手はテロ組織幹部『シートコール』のボス『サード』特別Aランク犯罪者指定! 任務実行!」
抵抗を感じきっていた銃を握ると銃も脈動し、優の炎の腕と結合をする。
右腕は炎を形作った銃剣と化した。
優は膨大な炎の銃剣を構えサードに迫った――――




