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国家秘密組織と特待生  作者: ryuu
前章 潜入調査開始――――テロ組織『シートコール』との戦争
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サードの本心

 落下した瓦礫の山の中から優たちは抜け出した。

 どうにか防壁を体に膜のように展開し覆わせたことで負傷をせずに済んだ。

 起き上がるとそうそうにまわりから殺気を帯びた視線を受けた。

「これは驚きましたよ。まさか上から君らが落ちてくるのは想定外でした」

 優は感じる。

 いままでの経験の中でも感じたこともない果てしなくいびつな魔力。

 背後を振り返れば一人の男が童子を踏みつけながら悠然と立ち、笑みを浮かべていた。

「サード」

「どうも、龍牙優――いや、遠井勇牙。『シートコール』社、社長サードと申します」

 優は初めて本名を言われて衝撃を受けた。

 なぜ、こいつは知ってるのかという疑問。

 優の本名を知ってるのは国家の人間でもごく少数である。

 国家組織者で優の本名を知ってるのは『掃除屋』のトップのアリスに

 世界対策統治管理責任者兼国防総省長官兼亜人管理担当官庁、源蔵正一のみである。それほどのトップシークレット情報。

「おまえどこで俺の名前を知った?」

「それはあなたの父上からお聞きしたんですよ」

「っ! 親父からだと⁉ お前いったい何もんだ!」

「しがない一人の有能な弱者の味方とでも言いましょうか。そして、この会社の社長であるサード」

 サード。

 3番目という意味を持つその名。

 資料にはこの『シートコール』事態はもともとは小さな会社だったらしくそれを大きな異界の会社が買い取り会社を増大させ出世させた。

 そのために現社長は3代目という扱い。

 それに関連付けてそう名乗ってるのか。

 彼の資料はとことん不明。

 名義も苗字がなく『サード』となっていた。

「まったく死ぬところです」

 瓦礫の山から一人の女性がはい出てきた。

 銀髪がきれいに輝く切れ長の瞳を持った女性。

 シートコールの社章をつけたスーツを見て敵であることが一目散に理解する。

「あなたは龍牙優!? なぜ、ここにです⁉ サード様! こいつの首は私が――」

 その時、その女の背後を取るように羽交い絞めにする存在がいた。

 銀髪をきれいになびかせる抜群のプロポーションの美女。――アリスだ。

「あなた生きてましたか」

「氷の防壁で瓦礫程度防げるわ。あなたこそ、これで終わりよ」

「それはどうです?」

 彼女の右手に構築される魔力のエネルギー。

「アリス! 離れろ!」

「っ!」

 後ろに向け放った弾丸がアリスをかすめる。

「まずは邪魔なあなたをこの第5調査隊隊長たる私、グレンダ・リーベルが始末です」

「アリス!」

「DD! あなたはサードを掃討すること! これは任務よ!」

 アリスが怒号を浴びせる。

 グレンダが構築した魔法の闇色のロングソードとアリスの氷の剣と化した右腕が交差し激しく剣戟を繰り広げ始める。

「いたたっ‥‥死ぬかと‥‥思い‥‥ましたぁ」

「全くですー」

 しばらく置いて瓦礫の山からまた新たな影が出てきた。

 宇佐鳶友美とリーナ・久遠・フェルト。

 二人はすぐに慣れ親しんだ魔力の気配を感じてその先を見据えた。

「雪菜ちゃん、杏里ちゃん」

「雪菜、杏里」

 雪菜の杏里の足元には司法取引した御厨かなでと湖乃故鼎の無残になった姿。

 体中切り裂かれて血みどろで息をしてるのがやっとの姿。

 その二人を足蹴にする。

「雪菜! やめろ! そいつらは戦う意思はもうないんだぞ!」

 見ていられない。

 つい、声をかけて呼びかけるようにその行動を指摘するように注意する。

「‥‥あなたに私の行動権利を阻害する指示は持ち合わせていないはずです」

「雪菜‥‥おまえ‥‥サード!」

 雪菜の気味の悪いほどに変わり果てた姿を見て諸悪の根源たる男を見た。


「おらっ!」


 一瞬で飛び出して横殴りの蹴りがサードの側頭部を捕らえるがサードは右腕でガードし素早く、反撃するように左手にためた魔力を放出し、魔力球を放った。

 魔力球を見切った優は顔をそらした。

 ほほをかすめ皮膚を切り裂く。

 魔力球は後方の壁で激突し爆音を奏でる。

「サード様!」

 雪菜がこちらに敵意をむき出し飛び出そうとした。

 サードが腕で静止をかけて、リーナと友美が優をかばうように雪菜の前に立っていた。

「優さん‥‥あなたに‥‥あなたの‥‥仕事があるように‥‥私たちに‥‥雪菜ちゃん‥‥任せて‥‥もらえ‥‥ますか」

「あと、あのバカなもう一人の親友もですー」

 二人の瞳にははっきりと映り込んでる。

 加倉井杏里――――いや、アーリン・カークラインと北坂雪菜の姿が。

 そう、個々の状況から言って任せるべきだろう。

 彼女たちに。

「わかた。雪菜を頼む。おれはこいつを片付ける」

「よろしく‥‥お願い‥‥します」

「ああ、こちらこそ」

 優は鼎やかなで、童子をみて詠唱を唱える。

 すると、一匹のかわいらしい炎の犬が姿現す。

 それは優がもつ吸血鬼の力が及ぼす能力――眷属といわれる使い魔のような存在。

「ヘル、彼女たちを組織のビルへ異次元転送頼む」

「ワォン」

 ヘルが素早い動きで3人に触れていくと炎に包まれて光になって消える。

 異次元転送されたという証。

「よろしいかな?」

「待ってくれるなんてずいぶん優しい男だなサード。世界をわがものに独占しようとしてる男とは思えない」

「なに、私は弱者には優しいのですよ」

「弱者か‥‥そうやって身勝手に判断をして決めつけるのはよくないんじゃないか?」

「決めつける? 正論をいったまでですよ。弱者だから彼女たちは倒されたちがいますか?」

「そうやって何もできないような者の言い方をしやがって」

 優は腹立たしかった。

 こいつの表す言い方の弱者はまるで何もできない下等な生物と言ってるようなものだ。それでもってこいつは自分もそうだともうしながら下等で醜い生き物であろうとしてる。

 下等だからと決めつけるからこそ彼には殺す価値はないもの。

 しかも、上のものをやけにきらったような瞳。

 それはあるいみ同族を見てるような瞳で嫌悪感をもたらしてる。

 こいつの真意は弱者の世界ではなくもっと別にあるはず。

「あいつらはしっかりとみずからの意思であんたに立ち向かう素晴らしい人間だ。ダメ人間みたいにさすように弱者、弱者とすべてののしるのはどうかと思うな。しかも、おまえ弱者の世界をつくろうというのがウソに感じる。おまえの瞳を見てるとな」

「くくっ、なにをいうのやら。私はいつだって弱者の味方である。弱者である私は常に弱者であり続けているんです」

「そうやって取り付くろってるだけだろう。ナルシスト野郎。自分の世界を構築するためか、自分も弱者であるということを精いっぱいアピールして共感性を抱かせる心理の話だ。お前にとって弱者は単なる奴隷だろ? 自分も弱者弱者だとか言いながらもおまえは自分は上だと感じてる。弱者だと感じてるやつが社長なんかやるかよ」

「‥‥‥‥あなたはやはり、不必要な人材です。新世界には。遠井優もディドクリスティアもそうです。やはり、あなたがたがは邪魔だ!」

 サードが殺気を放出し双刀をかざし鬼気迫る――

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