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国家秘密組織と特待生  作者: ryuu
前章 潜入調査開始――――テロ組織『シートコール』との戦争
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友美とリーナの正体

 眠ること数時間くらい経過したことだろう。

「カツン、カツン」という 靴の音。

 優はその音に導かれるように目を覚ました。

 知的を思わせるかのような女性の声が響いた。

「捕虜を連れてきたッス。監視役」

「捕虜? そんな話聞いてねぇ――これは、第1執行部隊長!」

 優を監視していた男があわてた声をあげている。

 扉の窓は閉め切ってるためにあちらの様子は優にはうかがえない。

 耳を澄ませながら額を抑える。


「う‥‥‥‥ぅつー」


 体を起き上がらせて頭をはっきりと目覚めさせる。

 先ほど電流のショックで気絶してしまったようだ。


「くそっ、俺としたことが」


 通常ならあのくらいの電流なんともないのだが雪菜によってつけられた傷が優をより弱らせている体にしていた。

 でも、逆に寝たことで傷口はほぼ自身の治癒力でふさがっていた。


「じゃあ、彼女たちを収容するッス」

「‥‥了解」


 隣の牢屋に誰かが無理やり押し込まれたようである。

 ――――それ以前に今の声に優は無理にでも体を起き上がらせて扉へ向かった。


「雪菜!」


 口調は違うも間違えるはずのない声色。

 何十年も付き合いのある彼女の声色。

 間違えるはずもない。

 声を張り上げた。

 すると、看守もとい監視役の男がまたしてもこちらを窓を開けにらみ怒鳴り散らす。


「うっせーぞ!」


 電流が男が手にしたボタンと呼応し流れ出した。

 あきらかに、こちらを畏怖させるようにしたふるまいの見せびらかし。

 しかし、これでどれがどこから流れ出たものか発揮しと自覚した。

 首輪である。


「ぐあぁああああ! ぐぅううううう!」


 奥歯をかみしめて声を振り絞った。

 そして、閉まろうとする窓の向こう側でわずかに小さく雪菜の姿ともう一人の女性の姿が目撃できた。


「雪菜‥‥‥‥いるんだろ? ‥‥‥‥‥返事をしてくれ?」


 しばらくして鉄格子の向かいに一人の少女が姿を現した。


「‥‥‥‥監視役さん、彼との会話を求めます」


 窓を閉めようとしていたヘッセンドルスに向け雪菜は訴えた。


「あん? てめぇ、新入りが何をほざき――」


「いいッス、彼女は特例の扱いをせよと上からの命令ッス。会話を求めるのならそうさせるのが上の通達でもありッス」


「第1執行部隊長、しかしそれは――」


「責任はわたしがとるッス。ま、面倒ッスケド」


 男は折れたようにして、扉の前を譲り、雪菜は扉の前まで歩み寄る。

 窓から雪菜の姿が目に見えたが――暗くてあんまりはっきしとは見えない。

 やはり、あのとき見た感覚と同様に雪菜はおかしく感じられた。


「雪菜! 目を覚ませ! お前は俺のことを忘れたわけじゃないだろ!」


 彼女へ必死に訴えかけた。

 自分の知る彼女に戻ってほしいという一心をかけて。

 虚ろな表情吐けれど変わりはしない。

 それよりも辛らつな言葉が彼女の口から洩れた。


「‥‥‥‥いいご身分ですね、龍牙優」


 やはり、いつもと違う感じの雪菜であるのが間違いなかった。

 彼女は優を「龍牙優」とはフルネームで呼んだりはしない。

 だが、この気配は明らかに彼女であるのも間違いはない。

 まるで、中身が別人。

 催眠がここまで効果があるのはそれだけ術者が強いという証拠。


「雪菜‥‥いい加減目を覚ませ」


 悲しみに震えた声を紡がせ雪菜の目を同情のひとみで見すえる。

 虚ろで冷めきったこちらを敵対者としか見ないその瞳。

 優の心は締め付けられるように苦しい。


「‥‥‥‥あなたの言ってることは理解に苦しみます。目を覚ませ? さきほどから龍牙優あなたの申してる意味はわかりません。気でも狂ったのですか?」


「気なんか狂ってない! 気がくるってるのはお前――」



 それが雪菜の心に火をつけたように監視役の男から黙って例の電流式ボタンを奪い取った。そのままカチリとボタンを操作し電流が走る。

 優は叫びを上げ膝をつく。

 雪菜は優を見下ろしながら宣言した。


「‥‥‥‥あなたの仲間がいくら来たところでここにいる人たちや私が仲間を殺して見せます。

 そして、最後にあなたを私が殺します。それだけ覚えてください。あなたはだれであろうと許さない。私の心をざわつかせるものは排除します」


「っ!?」


「‥‥‥‥それと、先ほどお仲間さんを捕らえましたことも承知の上で。隣の牢屋にぶち込みましたから」


「雪菜、一体何をされたんだ! お前らしくねぇこと言ってるんじゃねえよ! どんな術をかけられた雪菜!」


 あのやさしいはずの彼女がまるで様変わりの様相の言葉。

 人をゴミ扱いしてるような口ぶりで宣言する姿。

 仲間を殺すと。


「あなたを殺す明日が楽しみです」


「くっ、雪菜おまえは何を――」


 そう言って彼女は窓から離れ、窓枠が閉じられた。

 暗闇にまた支配され、階段を上がっていく靴音だけが響いた。

 今の会話はまるで、あの優しかった雪菜と交わしてるようなものとは思えない。

 彼女はもう別人に代わってしまっている。


(俺はお前を助けられなかったのか!!! くそっ!)


 悔しい。

 愛するべき従妹を救えなかった。

 彼女は変わり果てた様子で明日殺せることを楽しみにしている。


「いや、あれが雪菜の本性なのかもな」


 ついに心が折れてくる。

 催眠術というのは術者がかけた相手を思い通りにするという効果と同時に精神的に根強く思う心を顕著に表わさせる要因もある。

 見せていたあの優しさは偽物の方だったんじゃないか。

 あれが、本当の雪菜なのかも知れない。


「アハハハハ」


「笑うなって言ったよなぁ!!!」


「ぐぁあああああああああああああああ!」


 悲しみに打ちひしがれた体を電流が蝕んでいく。

 もう、ここで死んで当然の奴かもしれない。

 みんなには申し訳ないがここであきらめるしかなさそうだ。

 体を寝かせて目を閉じそっと永遠の眠りにつこうとした時――


「――優‥‥優さん‥‥そこに‥‥いるん‥‥ですか!」


 一つの呼ぶ声が光を指した。


「友美ちゃん? その声は友美ちゃん!?」


 衝撃に撃たれて目を見開き起き上がる。

 なぜ、彼女、宇佐鳶友美がここにいるのか。

 しかも、それは雪菜が言っていた『仲間を閉じ込めた牢屋』側だ。


「まさか、友美ちゃん‥‥君は‥‥」


 ここに来る直前に言われた内容は思い出した。

 雪菜についていた護衛。『特別任務対象部』の二人組。


「優さん、あなたがいて助かりましたー」


「リーナさんっ!」


 もう一人いた。

 それは友美と相棒の様に姉妹のように常に一緒に近くにいた彼女、リーナ・久遠・フェルト。

 確定的。

(彼女らは『特部』か!)

 壁に這うように背をつけてより隣の声を聞きやすい位置につく。


「優さん、落ちついてください」


 その後、壁が薄いからかあちらの物音が聞こえ出し、その後カツン、カツンという音が聞こえ出した。

 鉄を岩で叩く音だ。ほんの小さな微々たる音。

 そんな音を出して監視役の男を怒らせないかと不安を抱いた。

 そのあとに監視役の男が突然倒れるような地響きする音がして扉の窓に顔をくっつけ下を覗き込む。

 彼は爆睡していた。

 その音が徐々に強くはねて思考はだんだんと明確に仕事のモードへと切り替わって行く。

(モールス信号!)

 岩と鉄を永遠と叩き続けていたことで疑心感を抱いたことで気づくことができた。 

 彼女の言ってることは理解した。

 まず看守が眠ってるのは彼女がわずかにはなった香りによる効果だという。

 そう、この牢屋に入る寸前から彼女は脱出する気を持っていた。

(俺とは気持ちが違う)

 なんで、諦めていたのだろう。

 監視役は一人ならば、脱出だってできるはずだ。

 こんな状態でも考えるんだ。

 幾度かモールスで彼女らの素性も語られ、そしてここまでの経緯も知らされた。

(彼女らは政府が派遣した裏の護衛役兼潜入調査員――『特部』か。 メインは雪菜の護衛役だったわけ名のは予想通り。なら、俺が特待生として入学する意味はないんじゃあ?)

 そう、考えてみたが、彼女らはあくまで護衛役であり、学校の事情には一切関与をしない協定で入学をしてるそうだ。

 だからこそ、優が派遣されており、しかも、男子と女子では意味合いがかわってくるのだから仕方ない。

 そう、共生学園の目的は「男子との共存生活は可能か」というのが大本目的なんだ。

 だから、彼女ら二人はただの護衛役が仕事。雪菜に知られず、雪菜の身を守る。

 なぜ、雪菜の身を案じなければならないか。それは優の親父――遠井家の親戚にあたる人物だからだ。

 遠井家は世界を預かっていた身でもあるわけだからいろんな輩が目につける。

 だからこそ、今回のような事態を招き雪菜は捕まってしまった。

(私たちは極力友としての手際も大事でしたー。だから極力自分らの正体も明かさない方針を決め一定の距離を置いてました。その隙を突いた敵が結果、私たちはミスをしました―。彼女とはずっと一緒にいたのに雪菜を拉致されて雪菜の護衛者として失敗したことを謝辞します―)

 友達としての体裁。

 たしかに、彼女に黙って護衛をする以上そう言うふう振る舞いが第一であるが、

 彼女に付きまとう態度は明らかに不振がられるのでつきっきりはよしたのが彼女らの対応だ。

 そもそも、今回の拉致の経緯は――

 数時間前にゲームセンターで一緒にいたという彼女たちの報告は資料で確認している。

 雪菜が敵と接触したと思われるのはその際に雪菜がトイレへ行くといった数分の間だったようだった。

 ずっと一緒に付き人の様にいるのは友人としての対応だと不自然。

 だから、トイレくらいと目を離した数分間に雪菜は拉致された。

 でも、その時に彼女たちがいればよかったと優が怒っていいかといえば否だ。

 なぜなら、数時間前は雪菜と一緒にいたのは優も同じだ。

 あのまま、雪菜とずっとに一緒にいればその事態は避けられた可能性があるのだから。

(今の雪菜ちゃん‥‥あれは‥‥‥本心じゃない‥‥と思い‥‥ます。雪菜ちゃん‥‥操られてるん‥‥だって‥‥こと‥‥わかって‥‥くだ‥‥さい。雪菜ちゃん‥‥いつだって‥‥優さんのこと‥‥嬉しそう‥‥語って‥‥ました‥‥)


 友美は信号で励ましをくれる。

 彼女の言葉はすべて嘘であるということや、雪菜が優を本当に好きであることを一生懸命伝えてきてくれた。


(ですからー、雪菜ちゃんは今状態がおかしいだけですー。しかも、あの催眠魔法なら術者を倒せば解けると思いますー)


「そうか。励ましてくれてありがとう。今の雪菜が催眠の状態なのも理解してるから安心してくれ」


 信号伝達回線もわすれておもわず、口に出してしまった。

「とける」という言葉に希望があふれだしてくる。

 そう、雪菜は催眠によって冷たい性格へと切り替わってるのならばそれを解く方法、術者を気絶もしくは殺せばそれは必然的に解除されるのだ。


(だからー、まず、脱獄の策を考えてみませんか―)


 優はピクリと反応し顔を上げた。

作中の現状の時間帯は深夜だいだと思ってください。

前話の戦闘面に光の描写をしておきました。

作中においてなぜ、視界が開けてるのかと疑問を解決させています。


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