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国家秘密組織と特待生  作者: ryuu
前章 潜入調査開始――――テロ組織『シートコール』との戦争
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会社の中へ侵入

 優は旧川崎本町を歩き、数分後『シートコール』と書かれた看板の会社が目に見えて足を止めた。


「ここがそうか」


 ざっと見た感じは廃墟という感じには見えない。

 あちこち煤で汚れてはいるがそれでもまだそこら辺にある古いビルのようなおもむきが廃墟といわれる方がしっくりくる。

 この場所だけがまわりにとけこめず浮いた存在となっていた。


「隠す気はないってか?」



 ビルの出入り口まで歩き扉が開く。

 自動ドアであることが確認できる。


(以外と電力はしっかりしてるのか)


 廃墟の市街地にあるものだからそのあたりはおろそかになってるものだと思っていたがそうではなかった。

 カウンターフロアまで歩いて行くとすぐそばにいた受けつけ係が目を細め俺の様子を敵視する。

「止まりなさいそこのあなた!」

 優をいぶかしんでみていた。

 現在の優の恰好は黒いフードをかぶって顔を隠している。

 相手側の方には知られてる顔であり敵であるという認識を踏まえて乗り込んでいる。

 フードをかぶった奴なんてどこいっても怪しいに決まってるだろう。

 そんなこと気にせず自分のIDパスを受付嬢に手渡した。

 受付嬢が入社記録をつける。


「これはここの入会パス? 見たことない顔だけど新入社員の方ですか?」


 IDを手渡された受付嬢はあまりにも目の前にいる人物が怪しかったのにまさかのお仲間だという事態に驚いてる様子だった。

 そのパスはあくまで優はここに来る際に詳細に『シートコール』のセキュリティを調べていた電子工学システム管理担当者室長、可能陽一からいただいた偽造ID。

 優もアリスの部屋を無謀に飛び出したわけではなく事前に、準備をしてから飛び出した。

 その間にビル内で障害に出くわしかけたが優の職業は暗殺業なので、相手に見つからず行動を起こすことなど朝飯前だった。


「すみません、疑いまして。受付いたしました斎藤さいとう一騎かずきさん」

 IDももちろん偽名を使われており、龍牙優は斎藤一騎として《シートコール》内部に潜入を成功。

 エレベーターを使い、まず、最上階を目指す。

「親玉ってのは基本的に上の階層が当たり前だよな」

 それは優自身の理屈ではなく経験則。

 社長や議長という存在は部下の下に立つなど言語道断。

 それは部屋もまた然り。

 国家秘特許ビルも上下関係は『掃除屋』が上。

「着いたか」

 エレベーターが駆動音を止めて扉が開く。

 50階フロアに足を踏み入れて廊下を歩きながら壁にそってある部屋の数々に目を止める。扉には銀淵プレートで『資料保管庫』、『囚人装備保管庫』、『第3会議室』、『視聴会議室』、『電子工学研究室』などなどとこのフロアだけで10や20もの部屋があるほど広く正方形状の作りになっているビルだと歩きながら認識する。

「元の位置に戻ってきちまったな。社長室がないのは意外だったな‥‥いったいどこだ? 49階に行ってみるか」

 エレベーターの下のボタンを押し待つ。

 この間に誰かが来ないことを願う。

 誰かと出くわせば高確率で優は怪しい人間とされて事情を聞かされることになる。どこの職務の者かなどその辺は情報は少なく、役決めは出来てはいない。

 待つこと数分で扉が開く。

「っ!」

 優は開いた扉の前で立ちつくした。

 そこには雪菜がいたのだ。

「ゆきな‥‥雪菜!」

 おもわず抱きしめてしまう。

「お前無事だったんだな! もう心配するな今すぐ――」

「‥‥‥‥」

「雪菜?」

 なにも答えない雪菜に優は妙な違和感を覚える。

 そして、経験から危険信号が頭に鳴り響いていた。

 その対応は遅れる。

 雪菜が右手から氷魔法の刀を召喚し右袈裟上に振り上げる。

 優の体を切り裂く氷の刃。血が飛び散り雪菜は切迫し優を蹴りあげる。

「がはぁ!」

 フローリングの床を転がる優。

 外の騒動に気づいたらしく部屋にいた者たちがぞろぞろと出てくる。

『第3会議室』や『電子工学研究室』と書かれた部屋から。

 スーツの男女集団と白衣の男女集団。なんとも噛みあわない組み合わせ。

「ゆき‥‥な、なに‥‥された?」

 痛む腹を抑えながらうつろな表情をした彼女に再度訴える。

「雪菜、何をされたんだ! 俺がわからないのか!」

「‥‥あなたは抹殺対象です」

「っ! くそがっ!」

 優は両手に魔力を収束させたが――

「はやっ――」

 刀が優の胴体を貫いた。

 雪菜は確かに『遠井優』の技能を受け継いではいた。

 遠井優のもとでかずかずの指導を小さい頃に受けた。

 しかし、それは優も一緒で雪菜は優よりかは劣っていたとしてもほんの少しだ。優には雪菜を攻撃できないというためらいもあり、雪菜の能力などの要因が敗因を呼んだ。

 否、仮にそうだとしても優はまけはしない。

 そう、雪菜の技能は向上していた。

「執行完了です」

 刀を抜きはらって窓に血が付着する。

 優は倒れて意識を薄れさせる中で雪菜の右目の見から涙が流れてるのを見た。

「雪菜‥‥まだ‥‥しき‥‥」

 倒れた彼を見すえて雪菜は背後を振り返った。

 会議室から一人の男が歩み寄ってくる。

「受け付けは何をしてたんですかね。侵入者を出させるとは。ん? 偽造パス‥‥そういうことですか。杏里」

 電子工学研究所から数人をひきつれて加倉井杏里が進み出る。

「彼の装備をはぎ取り次第牢屋にぶち込んでください」

「了解ッス」

「雪菜、あなたは私とともに部屋へ来なさい。武器を上げましょう」

 そう言って杏里に連れ去られてく彼をみながらも雪菜はうつろな表情で――

「はい、マスター」

 と答えた。

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