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国家秘密組織と特待生  作者: ryuu
前章 潜入調査開始――――テロ組織『シートコール』との戦争
30/123

反政府組織のターゲット

 国家秘密裏特許ビル。

 現代において国家が所有する秘密組織が所属した基地の様なビル。

 その90階に到着して早々に社長室に向かう。

「アリス!」

 数分前にアリスが重傷を負い戻ってきた知らせを『伝達室』から聞きつけていた。

 あわてた表情を伴いながら強く扉を開ければ社長室のチェアに腰を下ろす一人の銀髪美人が目に入った。

 アリスだった。しかし、姿はひどい。

 あきらかに戦闘の跡と思われる無数の包帯に体を巻かれて重傷という体。

「私のことは社長と呼びなさいと言ってるでしょ?」


「そんなことどうだっていい! 一体誰にやられた! 俺が一発――」


「DD、無謀な行動は控えなさい」

 満ちた気迫。

 優は気迫に圧倒されてそれ以上の言葉をしゃべりはしなかった。

 アリスは額に巻いた包帯を赤くにじませながら痛身をこらえるように顔をゆがめて言葉を発する。

「私は大丈夫よ。やつらのアジトの場所をつかんだわ」

「アジト? 何言ってる資料にそのことは記載されてただろう。『シートコール』は企業だ。川崎新都市の方面だろ?」

 優は意外な言葉に目を丸くした。

 何を言ってるのかさっぱり理解不能だった。

 『シートコール』とは表向きは一企業であるので居場所は簡単に調べがついていた。資料の記載事項にも『株式会社シートコール』の住所は川崎新都市と記載されている。

「その資料の住所は表向き。『テロ組織』が簡単に見つかる場所にいると思ってたの?」

「言われてみれば確かに‥‥‥‥」

 優にとってアジトの場所はわかっていたと思いこんで当然だったからこそアジトについて一切気にせずいた。

「捕縛した『シートコール』メンバーも自供してくれてるわ。川崎新都市の『株式会社シートコール』は影武者の様な本社であり、実際の本社は『旧川崎』に存在してるってね」

「っ! まさかアリスその傷は一人で『旧川崎』に乗り込んだのか!」

「当然の行動よ。大多数で行けば感づかれるのオチ。だったら単独で確認する方がいいわ。それに奴ら『組織』は過去の事件と因果関係がありそうなんだもの」

「過去の事件?」

「ディド・クリスティア暗殺事件および遠井優失踪事件」

「ッ!? それは一体どういうことだ!」

 それは優は今まで生きてきた人生の中で最も知りたい真相の一つ。

 当時この事件は難解で、闇に葬られた事件だた。

 結局、ディド・クリスティア氏を殺した者が誰かもわからず。遠井優がなぜ失踪したのかもわからずじまいだった。

 優が『掃除屋』として就任するきっかけともいえるこの事件。

 それに因果関係が見える『シートコール』という存在に優は一層興味を抱きはじめる。

「私が独断で調べてる結果だけどおよそ『シートコール』という会社はあくまで『異世界』に存在する組織の傘下組織でしかないことが判明してる」

「『異世界』だと?」

「そう、その組織がどういうわけか人間界を政治的内面から破壊しようとしてるのが見えているの。『テロ対策係』でもこのことを踏まえて対応していた様子でね」

「ど、どうして最初に教えてくれなかったんだ!」

「あなたがスパイ二人組を独断専行で殺しかねないと思ったからよ、そして、独断で『シートコール』に乗り込みかねないと判断したの」

「ぐっ! けどそういうけどアリスあんたは独断で乗り込んだじゃねえか!」

「そうね、それは否定できないし謝るわ」

「少しは信用しろよ。たしかに独断というのはあながち間違いではないけど。聞けばそりゃ向かってたさ。スパイ二人組を無理にでも脅してはかせ殺してでも」

 ドギツイばかりの殺気が立ちこめる社長室。

 二人の陰湿な空気は第3者がこの場にいればきつくて即座に脱したいような気分だったろう。

「それから『テロ対策係』は因果関係からとある線も考えて行動をしてたみたいだったようなのよ。これが最も厄介な案件よ」

「あん?」

 アリスは顔写真入りの資料の束を机の上に広げた。

 その写真の人物は優が最も知っていた人物だった。

「な、なんで?」

「雪菜ちゃん、『異世界』の組織は遠井優の親戚である彼女をつけ狙う要因があると『テロ対策係』は推測したの」

「じょ、冗談だろ? 雪菜は確かに過去幾度か狙われてきたが『組織』に狙われたことは一切ない。あくまで個人の犯罪者が主だってある。どれもが遠井優への復讐だったやつらばかりだ。息子である俺は最強の名で知れ渡ってる反面かよわい印象がある雪菜を狙って復讐を遠井優の失踪が原因で変わりの者として狙われてきたのが詳細だ」

「でも、『組織』に狙われる要因がないと言える? 遠井優に復讐をしたいものたちが寄り集まって雪菜ちゃんを殺すことで復讐を達成させる快感を感じようとしてるって戦も考えられるでしょ?」

「‥‥‥‥」

「話を戻すけど、雪菜はその狙われてるという推測から『テロ対策室』の外部、『掃除屋』とも関連がある部署であり、警察の組織――特別任務対象部。通称、『特部』から雪菜ちゃんの護衛に抜擢された二人が護衛としてついていたのよ」 

「へぇー、その護衛二人ってのは?」

「詳細までは伏せられてるわ。私の権限でもそれは極秘と言われた」

「そのあたり国家は厳しいな。あいからわず。他部署の個人の情報は保護されてるわけか」

「そういうことね」

 雪菜のことは予想外に優の心を揺さぶったが『特部』という存在は大きく、これなら安心できる。

 ふいに社長室へ伝達室からの着信が入る。

「なにかしら?」

 アリスは俺にも聞こえるようにオープンコールへ切り替えて応対した。

「こちら『掃除屋』のボス、Aです。どうしました?」

『こ、こちら『伝達室』のMHです! 至急ボスに伝達事項があります!』

「伝達事項?」

『さ、先ほど『特部』の護衛対象者一名が何者かに拉致され『特部』二名が負傷した模様です! 特部の証言で拉致者は2名確認されておりその約一名の名前は「加倉井杏里」、『共生学園』の学生です! もう一名はなぞで性別は男』

「なんですって‥‥‥‥。わかりましたすぐに『掃除屋』を出動させ――DD! 待ちなさい!」

 優は電話を聞いて即座に行動を起こしていた。

 アリスの机にあった『シートコール』の資料を奪い取って部屋を出ていく。

 むなしくアリスの声が後ろ側で聞こえていくのを無視して閉じられた扉。

「MH、緊急伝達を各部署にお願いいたします。『掃除屋』は全戦力を動かします」

『りょ、了解です!』

 アリスは通話を切って体を立ち上がらせたが痛んだ体は思うように動かなかった。狂音からもらった痛み止め薬を引き出しから取り出して飲む。

 体が焼けるように熱くなり苦しく傷口が開く一方だった。

「あの馬鹿!」

 アリスは落ち着くまでその場でうずくまるしかなかった。


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