1時間目のいやがらせ
新渋谷区にある、『共生学園』。
『亜人』と人間が唯一共存できる環境を作ってる学校。
それに、今回は『掃除屋』の任務として、そこへ優は特待生として潜入をして、1週間はたった。デパート襲撃事件からはおよそ三日たった。
この学校で1週間の経過を経てわかったことといえば、共存と未来を考えた学内風潮や学内の『種族』争いおよび人との間にある上下関係。
授業にも遠くない未来を想定した数々の実技や座学を取り入れてる。
主にその中で特徴的なのが『魔法』だ。
「三魔術の基礎とは自然魔術、黒魔術、白魔術に分類されますね」
教育熱心な教師がゆっくりしたわかりやすい口調で基礎から教える魔術講座。
1時間目の授業中である。
かわいらしい女教師による魔術講座の時間だ。
本来の魔術の根底について話をしていたが生徒の物分かりの悪さからもう一度復讐と、現在は魔術の基礎について、話は戻っていた。
「えー、では、龍牙さん、三魔術の内容答えられますか?」
女教師がおどおどした感じで俺に答えるように名指し。
優は席を立ちあがり答えた。
「自然魔術は自然の力を用いて火や木、地、水、雷、風などといった系統種類魔法を指します。白魔術は聖属性いわゆる光の系統魔法、治癒系統魔法を指し人の愛情の面を起点に生み出す魔法、黒魔術は呪いや闇魔法などの暗黒面、人の黒き感情を起点に生み出す魔法です」
「はーい、正解でーす」
着席する。
あたりまえの内容を優は答えたつもりだが完全に覚えてるものは少ないらしく感心した視線が送られていた。
あまりにもこの学園は学力が低すぎるのではと思ってしまう。
しかし、この学園自体の偏差値はかなり高めだった。
そのために入学者も毎年のことながら少ないし、学費も高い分それはより一層だと書類上の記載にあった記憶がある。
(はぁー、すこし、控えた答えかたするべきだったか?)
少し苦々しい表情を浮かべて窓の外を眺める。
あいからわず、外からはこの広い学園の敷地しか見えない。
「合成魔法は複数の魔術を複合したものです」
続けて指名を受けたミユリが複合魔法について答えていた。
優は今回の任務対象重要人物に目を向けた。
こうして座学を受けてる分には周りの反応は嫌悪なまなざしをミユリにひたすら向けて「答えられてるからってちょーしのってるんじゃない。ねぇねぇ」「いえてるじゃん」「ですです」と例の3人組を筆頭にした笑い声が上がる。
教師は聞こえてない不利でもするかのように授業を進行続ける。
『共生学園』の立場はあくまで生徒が上で教師の立場は下の仕組み。教師がいくら生徒に注意を呼び掛けても言うことを聞くことはまずない。
――ミユリが悲しみのような表情で椅子に腰をおろして行き――ものすごい音が響いた。木材とガラスが割れるような音が合わさった衝撃音。
座っていた椅子が簡単に崩れ壊れたらしくミユリは尻もちをついて手を抑えうずくまっていた。
着席と同時だったので派手に転んだという姿が容易に理解できる。
教師が「大丈夫ですか!?」と声をかけていた。
ミユリは「平気です」と答えていた。
あたりに散らばった破片で手を切った様子で血が辺りに付着していて大丈夫そうには見えない。
ミユリの後ろの席の彼女に優は視線を向けた。
ミユリの椅子は粉々に砕け散って要因はすぐに散らばった破片で優は気づいたからこそミユリの後ろの席の彼女に視線を向けていた。
残骸に交じってるのは氷の破片。椅子の足を凍らせ衝撃を与えて破壊した。
それがことの惨事を招ける仕業といえた。
周りは『クスクス』と笑い声。
聞こえてくる嫌味な言葉。「どんくさいねぇねぇ」「これだから貧乏人なんじゃん」「そのまま死んじゃえばよかったのですです」などと最悪だった。明らかに彼女らがミユリの後ろの席の彼女に指示した悪戯だとわかる声。
(そんなことより、いつ仕掛けた?)
優は椅子の残骸の足元に目線を向けて、その時後ろの席の子に肩をたたかれた。
「?」
「これ」
後ろの席の子が渡したのは小さな手紙。
四枚折りの小さな紙片。
広げて中身をみると―――
『大事なお話があります。今日の放課後4階空き教室に来てくださいませ。
クリーエル・杏奈・フェン』
それは例のいじめ組筆頭からだ。
そして、テロ組織に関わってるだろう人物。
「これは?」
「じゃあ、渡しましたからね」
後ろの女の子はかわいらしくウインクした。
妙な違和感を感じいやな表情を浮かべる。
(平然とこの状況で手紙を送りつけるとかどういう神経してんだ)
怒りに拳を握りしめ優は歯噛みする。
その間にミユリは立ち上がっていた。
教師がその間に新しい席を探しに出ていく。
ミユリは苦痛の表情をして手を抑えながらいれば「あらー、てけがしたってかんじぃねぇねぇ」
「さっさと保健室行ってくればいいじゃん。まぁ、授業さぼりですって伝えるけどじゃん」
「あはは」
優は隠密潜入を忘れ机を強くたたいていた。
「いい加減にしろよ」
彼女らは優の言葉に対して、シーンとおとなしく静まり返った。
「ミユリさん、保健室連れて行くよ。その手のけがは治療した方がいい」
彼女のその表情はかまわないでとでも言いたげだったが優は無理やり方をつかみ誘導する。
「え、あ」
ちょうど戻ってきた先生に優は有無を言わさず声をかける。
「先生、ミユリさん家がしてるんで保健室連れて行きます」
「はい? 先生ちょうど席を――龍牙くん、ミユリさん!」
優はそんな先生の言葉など聞かずに保健室に向かっていた。
優はもう、潜入任務時にはすべての土地や地図を頭にたたきいれていたからこそそう行動ができていたなど誰も知る由はない。
「ちっ、転入生にたすけられてるんじゃないわぁあのアマぁ」
「まじだなぁア」
「うざいっすねー」
クラスの3人の女がそう漏らし――
「ミユリ、そろそろ堪忍袋の緒が切れたってぇかんじよぉ」
邪悪な笑みをクリーエルが浮かべる姿がそこにはあった。
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