過去の事件と謎の組織の因果関係の謎
「確かに預かったわ。報告書」
「ああ」
「あなた、吸血鬼化したわね?」
「‥‥‥‥‥仕方ないだろう。あの場での早期解決が優先された。すぐにカタをつけるのには『吸血鬼化』が手っ取り早かったし安全を確保するためだ」
「それでも‥‥‥‥体のことをもう少し考えなさいよね」
騒動から3日が経過していた。
優自身も傷を負って、過度な力を放出した原因によって数日間休暇を強いられる体となった。
優の場合身体的外傷は特に治療の問題はないが主に魔力や気力などに問題がないかをチェックする。
力に変動が見られれば自我を失い精神疾患を患ったり、狂犬病のごとく暴走をする形になってしまう恐れがある体になる。
そうならないためにも――数々の身体検査で能力の変動や魔力数値の異常性を見られる。
身体検査を行うのは伊豪や狂音という医療機関に精通する者。
狂音はおもに医療技術で治療を行い伊豪は魔力や能力の今後の変化に支障ないかを見てくれる人材。
現在は騒動の報告書を提出をかねて身体結果情報を聞かされるためにアリスのいる『掃除屋』社長室に来た。
そこで例のモードチェンジしたことに気づかれ注意を受けた優は渋った表情であのときの状況に対しての自分に非がないことを言う。
吸血鬼化とは、吸血鬼へと変わる意味合い。
龍牙優は父親――遠井優が吸血鬼の眷属である。
吸血鬼の眷属とは吸血鬼の従者みたいなものだ。吸血鬼の貴族に認められて血を与えられる。そうすることによって人は吸血鬼の血を中に取り入れ吸血鬼と化す。だが、人間の眷属吸血鬼は半分吸血鬼という状態になる。
要は、半吸血鬼、ハーフヴァンパイアだ。
優の父親は知っての通りこの世界のお偉いさんであり、この世界を生み出した本人といっても過言じゃない人物でもあるうえにそうした『半亜人』でもあるのだ。
優の父親にはまだ秘密は多くある。
そんな、父親から生まれた優にももちろん吸血鬼の力が3分の1備わってるのだ。
そのため吸血鬼の能力も一部のみ。たとえば、身体能力の向上や最速治癒力はあるがそれ以外の長生きの効力は存在しない
「わかってるの? あなたは魔力数値も異常に高いから力のコントロールが一番難しい体質なのよ。いくら早めに片づけたいからといってむやみにモードを変えないこといいわね?」
「了解」
優はいらだち気味に生返事する。
優の父親のもう一つの秘密は類まれなる魔力の多さ。
一般人の量よりもはるかに多く魔力を持ちうるために力のそこが知れなかった。だからこそ、異次元空間を人間界とつなげてしまう力も持ちうる人物だった。そして、多くの敵に狙われていた理由もそこにあった。
だからこそ、龍牙優は『掃除屋』に入社時、任務において遠井という苗字は自身の親父を連想させる危険な名に当たるため狙われやすく異常事態を招く要因を伴ったために本名を捨て今の名、龍牙優に名前を変えて生きていた。
そして、優はそんな親父の子供だから小さいころから狙われやすいのは仕方ないと考えている。
今では彼自身の強さは一部には知れ渡ってるので昔に比べたら危険度は減っていた。
「最近、あなたは狙われやすくなったけれど、油断はしないようにね。それにあなたは吸血鬼の血だけが流れてるわけじゃない。あなたは小さい頃に死にかけて『例の力』だって入って――」
「わかってるさ‥‥もういいからその話は終わりにしようぜアリス」
「私のことはボスといいなさい。まったく‥‥」
優の力にはもう一つの謎。
それは過去に『掃除屋』として初めて任務を行った際に請け負った傷で死にかけその際に取り入れたある種の力で優は生き返った。
優には『二つの力と血』が流れていた。
あきれながらアリスは手元の資料の一部を真剣に手元で読み始めた。
「――――今回の伊豪さんの報告書は読んだ?」
アリスは一枚の資料を読みながら唐突に優へ話を振る。
「ああ、読んだ。例の二人組謎の『共生学園』の生徒の介入。それによって伊豪さん側の避難組は助かったって話だろ?」
「そう。その中にはあなたが今回注意をおいてる人物ミユリ・ハーフェス・杏里さんがいた。しかも、偶然にもあのデパートを管理してるのはあなたが報告書で上げてるミユリさんをいじめてるだろうリーダー格人物の会社が管理経営する一つ。なんだか匂うわよね」
手渡した報告書にはミユリに関した記載事項もまとめてあげていた。
アリスはそれに目を通して眉間にしわ寄せる。
今回のデパート襲撃事件は単なる殺人鬼が逃亡しただけではない。
なんらかのテロ的要因が関わってると睨んでいた。
警察関連やテロ対策班は早急に行動を起こし現在は調査中。
『掃除屋』も一部協力しこれまでのテロにかかわる事件を洗い出し照らし合わせていた。
「それから今回ウルスガラディーンは『シートコール』という会社から支援を受けて隠遁生活を出来ていたこともわかってる。『シートコール』は表向きネット事業会社で何も悪事がまるで見えない会社。まぁ、そこがあやしいんだけど‥‥今回とらえた御厨かなでは自供をし『シートコール』が世界を自分らの手で変えようという革命的事業を興そうとしてるのは確か。それによって世界の人口半分を減らそうということも判明した」
「なっ!?」
人口を減らす革命的事業。
最悪のシナリオである。
「どんな事業だよそれって‥‥」
「彼女も一調査隊隊長――といっても調査隊あくまで隊と入ってるけど個人にすぎず彼女ら個人で動いてる調査員。彼女は買うしただから事業の内容まではわかってないみたい。ただ、一つわかったことがあるの」
「なんだ?」
「警察側がデパートを隔離したのは逮捕したいがためが原因じゃなかった」
「なに?」
「とある場所から犯行声明が出されてたらしいの。すぐにデパートを隔離しなければ東京各場所に設置してある爆弾を爆破させるっていうね」
「っ!」
「結果的にその爆弾ははったりだったことは判明したけど、隔離するように命じる際にとある場所に電話をかけるよう促してた」
「どこだよ?」
「アクリシタルバル・フェン支社」
「クリーエル・杏奈・フェン‥‥彼女の親が経営する会社か」
「正しくは彼女がよ。彼女の親はもう随分前になくなって事業は彼女がついでるわけだしね。まぁ、一時没落した企業を彼女は若くしながらにして復興させた」
「すごいな」
「ええ、けど、おしいことをしてるわ。彼女の会社は『シートコール』とかかわりがある」
「なるほどな。話の流れが読めてきた。デパート襲撃においての『共生学園生徒』の介入者の援助。デパートを管理する『共生学園生徒』そして、『シートコール』どれも結びつきがある。『学園内』にはおおよそ『テロ組織者』がいるわけだ」
「あくまで推測よ『シートコール』がテロ組織であるのは判明してるし、介入者が殺した男たち二人組はそこらのチンピラ風情の『亜人』だった。ウルスガラディーンが雇っていた人物ってのもわかってるの。それを排除するために介入者が現れた」
優は頭の中で整理をするようにしてすべての内容を口に出した。
「今回のデパート襲撃事件はウルスガラディーンという男が『シートコール』との不祥事を起こし『シートコール』から逃亡を図ってデパートにかけ込んだのが原因だった。
デパート内で狂乱するようにして殺人を越したのはデパートを隔離させ自分の身を守るためだった。
しかし、『シートコール』にそれは見抜かれておりあらかじめデパートは『フェン支社』によって隔離される手はずになっていた。ウルスガラディーンも保険をかけてたのか仲間を内部にいさせてたようだが結局は俺という存在や『シートコール』の罠で逃亡は失敗した。そして、俺らはおおよそ『シートコール』を起こらせてるだろうってところか」
「まぁ、まとめてデパート襲撃事件に関して言えばそういうことになるわね」
その罠には多くの『共生学園生徒』の介入の意図が見られる。
優はここからさきの対処は自分の仕事だと痛感した
「その生徒の対処をやろう。しかし、まずはミユリの問題も大事といっても『シートコール』がそれもまた何らかで関わってるんだろうがな」
「でしょうね。あと優」
「なんだ?」
部屋を去ろうとした優を引き留めアリスは手元の資料を見つめる。
彼女が目を通してる資料は狼男のものと学園のもの。
狼男のものには例の『タトゥー』について。学園にはある人物の因果関係についてだった。両方の資料には同一の組織の名がある。
だが、実態は不明。『異世界の大きいテロ組織』が実在するということだけがわかる。
かつ、7年前に人間界にまで組織の拡大範囲を広げてるということだけか。
「いったいなんだよ?」
「気をつけてね。あなたは消えた父を探すためにこの仕事に入った。私は父の殺害した人物を探すために入った」
「あ、ああ。そうだな」
「目的を見失わないで。もし父親が――」
アリスは黙りとおした。
自らの資料に関わりのある人物が『遠井優』と記載されているなんて信憑性がない。あくまで推測事項としてテロ対策係から届いたものだ。
「『遠井優』を殺した罪人がいるというのはあくまで憶測みたいね」
「今何て言った?」
「なんでもないわごめんなさい。部屋で休んでちょうだい。明日もまた学園でしょ」
「‥‥ああ」
優は歯切れ悪くも素直に従うように部屋を出ていく。
対テロ係から送られてきた資料は嫌みそのものだ。
過去の事件を比較したものまで含まれておりその中身には知ってる内容がずらずらと多くある。
とくに現世界の元最高責任者が自分の父の殺害事件を調査中に失踪をしたことは記憶の中にある。
その裏には『大きな暗黒組織』の存在が噂されていたのも事実。
「また出てくるなんてね。拡大範囲が広がってる」
アリスの目の前にある資料には政界地図があり『暗黒組織』の要素が含まれた事件が赤くテンとマークされており全世界の各地域を広まっていた。
日本の東京を中心にそれは拡大を示し日本は真っ赤だった。
この事件内容は自分の父が殺された関係にも響いてくる内容であったからなおさら考えようアリスはそう思う。
およそ、8年前の資料を照らし合わせる―――――
「ふぅー」
つい、手に持っていたお茶を凍らせてしまった。
怒りを抑えておかなければならない。
「雪女化してはもともこうもないわね」
そう、彼女も『亜人』、雪女といわれる氷の魔女と吸血鬼の『混合亜人』だ。
父が吸血鬼であり母が雪女であった。そんな二人の間に生まれた少女。
いまは、大きな組織を受け持つお偉いトップ。
私用の携帯がブザーを立てる。画面を見開き笑みをほころばせた。
『もしもし、アリス、母さんよ。久しぶりねぇ―。最近連絡よこさないけれど大丈夫調子とかは?』
「母さん。ええ、久しぶり。元気よ。母さんは元気?」
ここ最近、何年もあってなかったのについ昔を振り返ってたら昨日のように感じられる。
『ええ、元気よ』
「ねえ、母さん、一つ聞きたいのだけれど――――」
『‥‥たぶんだけれど、利用してる。遠井優さんはその時その日に異次元空間を』
アリスはそして、研究資料に書かれた組織について母に聞いたが返ってきたのはあいまいな答え。
アリスの母親は『異世界管理公社事務官長』なのだ。
そう言った異世界の事情にはそれなりに詳しい。
「そう、ありがとう」
『たまには顔を見せなさい。日曜日なら母さんも家にいるから』
「わかったわ、母さん。じゃあね」
そう言って通話を切った。
「過去につながる何かが起ころうとしてるの?」
アリスは険しい瞳でだれもいない社長室でそう漏らすのであった。
誤字修正確認




