クラスでいじめ
なんとか優は着替えを終えて、グラウンドに来ていた。
そこで体育の授業「魔法実技基礎訓練」を行うためだ。
魔法―――身体にみなぎるエネルギーを自然の力に変換し打ち出す。
マンガやアニメなどでは多くみられるもの。
現在、この世界は『亜人』と呼ばれる異世界の来訪者との共存を図った行事が多くある。そして、亜人犯罪も多くあるので人間たちにはそういった知識も多少なりとも入れておく必要性はあると取り入れた独自の授業。
現在では数ある学校でしかまだこの授業は浸透しておらず、徹底しカリキュラムの中に授業が組み込まれてる学校はここだけである。
そのためか、人間のみの学校では『亜人』による知識や力の論理については伝えられるがこうして自らで試してみようというのは不可能であり、それが唯一可能なのはこの学園のみだった。簡潔に言うと『魔法実技訓練』という授業があるのは『共生学園』のみである。
『亜人』と人間が共存する学園ならではの体育の授業だと言えるだろう。
『亜人』といっても多種類存在して魔法を使えない種族だっているのでそう言った種族にも向けたものだとも言える授業。それでも、主に題材としては人間に向けたものだ。なぜならば、学園は人間界に存在してるし、この学園の創設者は人間であり、学園の多数の生徒が人間であるため。
そのほかにもこの授業の教訓を生かす理由はある。
現代、魔法を使った技術革命が先進されてきてるのでより、『魔法』という分野を次世代の未来を支える子たちに伝えるためといえるだろう。
このグラウンドは通常とは違う。ほとんどの学校の校庭といえばそれなりの広さはあるはずだが東京ドーム以上の広さはないはずだ。
ここの学園はそのくらいの広さがあった。しかも、他にもこういったドームがいくつも存在している。
それもすべて魔法技術と人間の最先端科学技術を駆使したものによって仕上げたものらしい。
周りは『防弾魔ガラス』で円形に覆われてその向かいに観客席が見えた。
年に何度かある『魔法競技ランク戦大会』とかでこのドームは使うからそう言った席があるらしい。
そして、天井は白いパネルで雨天の日は覆うらしいが現在はなく快晴の青空が一望できた。
地には芝生が密集している。
教師はその広い空間の中で指示を仰いでいた。
「では、今日は転入生もいることだしぃ、みんな基礎の魔力を構築するのからやってもらおうかしらぁん。それができたらペアを組んで各自ペア同士の基礎対戦を行ってねぇん」
そう、勝手に告げて教師、ミクサ・ゴルザック――さっきのオカマだったらしいはその場からいなくなる。
教師としていかがな振る舞いかと言いたいが逆に優としては自習でありがたい気持ちだった。
なぜならば、力加減に問題が大いにあるからで教師の目に触れたら大変な騒ぎになるおそれを感じてしまう。
それは魔法も然りだった。過去に彼自身の父が『半亜人』である特殊な人なため優も『半亜人』というよりは『3分の1』亜人の血がながれてるので昔から魔法の訓練は行ってきたのだ。
それはアリスの家で雇ってるところの訓練教員によっても指導されている。
いや、優にとってはもはや大人の家庭までのすべての教育は終えてる。
だからこそ、『掃除屋』の右腕という有名な立ち位置まで出世している。
「はぁー、教師がいなくても周りの目をごまかしづらいなぁ」
周りに目線を向けて優は戸惑いと苦汁をなめた。
そこへ、理解困難で困ってると考えたのか一人の女性が歩み寄ってくる。
長い茶髪を片側に結わえ、切れ長のひとみに若干化粧をした顔立ち。化粧がなくとも美人だとわかる整った顔立ちをした美少女。
どこかギャルな感じを思わせる雰囲気。
「えっと、龍牙さんでしたわよねぇ?」
「え、ああ」
「わからないことあったらぁ聞いてくださいぃ。おしえますのでぇ」
「あ、ありがとう」
「魔力の出し方はできますかぁ?」
優は聞かれ冷や汗を浮かべた。
彼女はそれをできないからひた隠しにしてると考えたのか手に魔力の赤い光の波動を収束させた。
火の魔力か。
「こうやるんですぅ」
「ああ」
「わかってますかぁ?」
心の中で訴えた。
(わかってるも何もあんた以上にできるんだよなー)
だが、ここでそれを見せたら自分の立場が怪しまれかねない。
いや、考えすぎなのかもしれない。
一般人としてどのくらい程度がいいのか加減もわからないし周りに見られた状態では調整するための集中も欠かれ、むずかしくもある。
頭の中がぐるぐるとめまぐるしく回る。
(少しくらいなら平気か)
そう決断を決め手に小さく炎をともした。
――と同時に魔力による赤い光の残姿が生まれる。火の魔力を適度に右手にともし、できるという態度を示した。
「そうですぅ。やればできるじゃないですかぁ」
なんだか、馬鹿にされたほめ方をされてるようで少々癪にさわるが、彼女は本心でそう言ってるらしいし馬鹿にしてるなど微塵も思ってないのがその表情を見ればわかったので怒るなんてことはしない。
けれど、立場上すこし心が痛む言葉だ。プライド的に傷がつく。
「まぁ適度にはできます」
即興でできたと彼女は判断をし、続けて何かを教えようと手を動かす時だった。
「あ、そうでしたぁ、私名乗っていなかったですねぇ。私クリーエル・杏奈・フェンといいますぅ。よろしくですぅ」
そう言って差し伸べられた手。
雰囲気からしたら嫌みな女子と見える彼女だったが根はやさしく感じ優はその手を心よく握った
――とそこへまたしても3人の美少女。3人組はそれぞれ種族感はばらばら。。
いかにも悪質で悪目立ちな感じの女子。
「杏奈さん、ミユリの奴にぃ周りの球広い手伝わせさせましたぜ」
「あらぁ、そうわかったわぁ」
あまりにもその今までとはらしくない彼女の態度に優は顔をしかめた。
そして、今聞いてしまった言葉に違和感を覚えミユリを優は目で探す。
奥で必死に生徒が魔法を行使して行うバスケの審判や球広いと雑務をさせられていた。教師は今の状況に限って自習させてるのでいない。
それを行わせてる連中は平然としたふるまいで他の連中も怒声を浴びせながら命令しまくっている。
(あいつらなんてひでえこと!)
急ぎミユリの手助けをしようと近づこうとした優の右手を――
「どこにいくんですぅ?」
つかみクリーエルに引きとめられる。彼女らに従う必要性は皆無だ。
クリーエルは優の行動に不機嫌そうに表情をゆがめ始めている。
「離してくれねぇか? ミユリさんお手伝いをしないといけないんだ。それよか、あんんたらもあれを見て何とも思わないのか?」
「いいんだぁア、あいつはあれでよぉオ。あいつはクラスで補助をしてるだけんなんだぁア」
「そうっすね。あれでいいっすね」
クリーエルと悪目立ち女子ズ以外にもう二人ほど新たな美少女がその中に介入する。一人はが体がいかにもよ下げで筋肉質な少女、一人は茶髪のボブヘアにモデル顔負けの美貌とグラマラスでゴシックロリータ気味に改造させた制服を着用した独特なギャル系少女。
「龍牙さん、ここではぁ、彼女のぉ扱いはあれで正解なんですよぉ。彼女はぁあなたをぉ自分のテゴマにィしようとしてるんですぅ」
「てごま?」
「そうですぅ、盗人なんですぅ彼女ぉ。あくどいんですぅ―」
クリーエルの言葉にこの場に集まった女子が全員賛同するように声を上げる。
「俺はそうはみえない」
「だまされてるっすね」
「そうだなぁア。それがやつのてぐちさぁア」
彼女たちはどうに違和感を優は一瞬に感じた。
この二人は二人同士で仲間という意識は感じられてもこの中のリーダー格っぽい少女クリーエルに対しての忠誠心みたいなものは皆無に見えた。
「クリーエルのいうとおりにしてればいいっすね」
あまりにも言わされてるかんの様な形でそう言うボブヘアの少女。
「俺にはそれでも見えない。だから手伝わせてもらう」
優はその掴まれた手を振り払おうとした瞬間、3人組の悪目立ちズが立ちはだかった。
「なんの真似だ?」
「そっちこそ助けるて行ってるのどういう意味か理解してる? ねぇねぇ」
「まじばっかじゃん」
「馬鹿ですです」
優は首をかしげ疑問符を浮かべた。
彼女らの明らかな敵意。
優は無視をしてミユリを見続ける。委員長である彼女がクラスの全員の補助はわからなくもないがそれは授業中もすることはあるのか。普通はないだろう。
だからこそ疑問が浮かんだしあきらかに奴隷の扱い。
「龍牙くんはぁ、しらないよねぇ。委員長って人助けするのだいすきだから魔力で壊れた場所の補修作業の係とかやってもらってるのよぉ。それにぃ彼女はぁ見学者よぉ。授業に出ない代わりなんだからぁあれでいいのよぉ」
魔力で壊れた補修作業。
あらかじめ先生から優だけに配られたプリントがあった。
それは転入したての優にこの施設の使用ルールや魔法の戦闘についての説明を記した欄だった。
魔法戦闘を行った際に地形は弱いため壊れます。よって、壊した地形を元に戻す作業は壊した本人が絶対厳守して行うこと。
そのひとつにそんな内容が書いてあった
それを見学者である委員長が行う。
でも、優は知っていた彼女が見学者でいる理由は誰かが体操着へ書いた落書きが原因で着替えることが出来なくなり制服姿で見学者となったことを――
「そんなのルールに反する行為だ。壊した本人が治せばいいだろう」
「彼女はぁ盗――」
「盗人なんだとさっきから言うが証拠がない以上俺は信じない」
杏奈が何か言う前に優はさえぎって自分の意見の挟み込む。
「でもぉ、あれは委員長が償いを思ってぇ最初に始めたことですよぉ。委員長はすきでやってるんですがねぇ」
「そうだぁア」
「そうっすね」
3人の言葉に周りにいた悪目立ちズや他のこちらを監視していたクラス連中も今まで無視していたのにその局面でうなづき始めた。
どうにもクラスで委員長をいじめてるらしいことに気づく。
何があったかわからんが最悪な状況だ
「委員長―ボール取ってきてよー」
「委員長こっち補修おねが―い」
すぐにそのあと次から次へと委員長を呼ぶ声が上がった。
どれも雑用だ。
ボールは魔力を使ったキャッチボールやスポーツを行ってるのでこのくそ広いドームの中では遠くに飛んで行ってしまう。
それだけでも体力をかなり使うのにそこから魔力を使った補修。
ひどい有様。
「おとなしくぅ私が魔法を教えてあげますねぇ」
優はとりあえずその局面では彼女らに抵抗をすることは避け悔しがりながらも素直に従い委員長の動向をずっと見ていた。
助けたいのもやまやまだったがこの場ではそれを通すのが道理だと認識すると同時に決断をした。
「資料集めをしないと」
そう吐露するのだった。