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国家秘密組織と特待生  作者: ryuu
後章 共生学園『魔法競技ランク戦大会』――――魔法騒動テロ組織襲撃事件
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新たな力

 龍牙優の登場は空気を一瞬で切り替えることに成功した。

 相手にしてみれば思わぬ増援だったに違いない。

 ここに来るのにも幾度かの苦労があった。

 まず、会場からここまでくる道のりである。

 会場全体は爆弾のせいで道がいくつか瓦礫によって塞がれスムーズにこの広間にはいけなかったことだ。

 その中では観客の誘導はまだ済んではおらずテロ対策室係の一部部隊と警察が必死で行っていても火の手のせいで上手くは滞らずにいた。

 そこで、優は少し手を貸し遠回りを行うルートを使う。

 本来は話に聞いてたボスのいる地下へ向かおうとしていたが道の最中でそれは諦めざる得なくなった。

 呪いの傷だ。

 呪いの傷はいくら新たな手術によって取り入れた龍の血が抑えていたとしても一時的に過ぎず呪いの進行は完全に消え去ったわけではなかった。

 予定がそこで変更となる。

 呪いを与えた主犯を倒す。

 彼女たちの『気』、『魔力』を探り寄せ、優は駆けつけた。

 そこで、見た光景は絶望的。

 仲間たちがやられ、負ける。

 あるひとりの少女は爆弾操作を行っていた。

 すぐに止めるべき要因を始末に行動したのだ。

「なにしてくれんや! 私の大事なパソコンに!」

 ルリファンス・桜・スファンは銃によって狙撃された腕を押さえながら足元に散らばったパソコンの残骸を悲しそうに見つめて優へ怒りに顔を歪ませ牙をむく。

「それはこっちのセリフだ。罪もない人を爆弾で殺すスイッチなど止めて当たり前だ。よりにもよって最悪なのが人間爆弾ってところだ」

「あん? 罪もない? あはは。馬鹿やな。あいつらは単なるこの世界に何も感じず幸せにのうのうと暮らしてるクズや。殺してええやろうが」

 彼女の手前にはウィンナとユリアがかばうように立つ。

 優の銃口はリーアに向けたまま、動かしはしない。

 動かせば雪菜にリーアが攻撃を仕掛ける。

 雪菜は魔力が枯渇し座り込み息切れを起こしてフラフラ状態。

 エリスと加倉井杏里は四姉妹の相手を行い足止めを行っている。

 残っている相手は4人。

 (4人を相手にするのはちと厳しいか)

 魔力の質や量を見て厳しいことがはっきりとわからせられる。

 一人くらいは仕留められても残りのメンツを相手にする力が残ることがなさそうに思えた。

「呪い」

 ふと、ウィンナが口を開いた。

 彼女が魔力を放出した状態で拳と拳を撃ちつけ合いながら闘志むき出しで一歩前へ出ていく。 

「俺の呪いはまだ効いてるみたいでうれしいぜ」

 挑発でもするかのように喉を引きつらせたような笑い声をあげながら、一歩また1歩と近づいて来る。

「ああ、あんただったのか。こいつをつけたのは。おかげさまで苦労する体にされちまったよ。最初はこの呪いに気づきもしなかったけどな、はは」

「気付かなかった? くくっ、あははは。冗談だろう? とんでもなく体がえぐられるような激痛なはずだぜ? そんな呪いを受けて気づかない? 冗談にも程があるぜ」

「冗談で言ってねえんだけどな」

 空気が凍りつきウィンナはリーアの隣に立ち右手を掲げる。

「リーア会長、俺が先やらせていただくぜっ!」

 腕を振り上げたウィンナが放った衝撃波が優へ殺到する。

 横に飛び退いて衝撃波を交わし、優は回避直後にウィンナへ向け発泡。

 銃弾が3発発射されたがウィンナの前に影の防壁が出た。

 リーアの魔法だ。

「油断してるとやられますわよ。ウィンナ」

「たすかったぜ。会長。けどよぉ、こりゃァ俺のタイマンだ。邪魔すんなじゃねえぜ」

「俺はべつに全員でかかってきてもいいんだけどな」

 挑発的な事を言って相手に仕掛けさせようとする。

 なぜならば、優の目でしっかりと4人の行動は確認していた。

 ルリファンスとユリアがパソコン部品をかき集め修復に掛かる一方でリーアは周りの戦況を確認しうまい具合にサポートに徹するように細かに魔法を飛ばしている。

 4人の意識を自分だけに向けたかった。

「その挑発には俺ら仲間たちは乗らねえぜ」

「そうかよっ!」

 ウィンナが接近し振り上げた鉤爪は優の肩に襲いくるが優の発した炎がウィンナの攻撃の手を急停止させ飛び退かせる。

「ちっ! 焼かれるとこだぜ」

「そのままこんがりやかれとけっての」

「おいおい、ひでえな。俺はこれでも女性だぜ」

「テロリストに性別は関係などない」

「いってくれるなぁ!」

 ウィンナが数十人に分裂する。

 それはどの系統の魔力の種類かは謎であり、混乱をする。

 数人のウィンナが一気に攻めてきた。

 周りを固めて鉤爪を振り上げ突貫してくるウィンナ軍団。

「ヴァーミリオン!」

 地に手を触れ、優の体から膨大な炎の本流が膨れ上がった。

 炎は形を変え一匹の小型の翼竜を出現させた。

「いけっ! ヴァーミリオン! 焼き払え!」

 炎の翼竜はウィンナ軍団へ炎を吹きかけ一気に蹴散らしにかかった。

 ウィンナ軍団が炎の波に飲み込まれ次々と消失していく。

「なにっ!?」

 全部を消し去った直後にウィンナ本人がいないことに気づいた。

 ――背後からの殺気。

 ウィンナが右手に収束した闇の魔球を構えていた。

「ダークグリュンボルグ!」

「ぐがぁあああ!」

 鉤爪と闇の魔球を突き出し優の腹部に突き刺さると同時に爆ぜた魔球が優を暗黒色に染め上げた。

 倒れた優は動かずヴァーミリオンが同時に消滅する。

「お兄ちゃん!」

 雪菜は目の前で倒れた彼を呼びかけたが反応がない。

「うそ、そんな‥‥」

 エリスと杏里も気づき気を取られた。

 その隙に――四姉妹の攻撃がヒットする。

「「きゃぁああああ」」

 雪菜はこぶしを握って立ち上がるように足を踏ん張った。

 しかし、リーアが放った岩石が雪菜を再度地面にひれ伏させた。

「あぐぅう」

「大人しくあなたも眠ってればいいんですわ」

 リーアはもう勝利の余韻にしたり仲間たちに撤収の呼び掛けを行った。

 だったが――

 リーアはウィンナが動かないことに気づいた。

「ウィンナ?」

「あぐぅ‥‥うがぁ‥‥あぅ‥‥」

 膝から崩れ落ちるようにウィンナが意識を失い倒れた。

 その状況を見てその場にいる者たちが硬直した。

 ウィンナの体から煙が上がっていた。

「勝手に勝利を確信してるなよな。まったくよぉ」

 空中からの声。

 全員が空を見上げるとそこには白と黒の龍のようなモチーフをした鎧を身にまとった龍牙優がいた。

「その姿は一体――」

特異解放オーバーブースト混沌龍血カオスドラグーンヴァンパイアさ。うまく、チェンジできてよかったぜ」

 地に降り立った優はウィンナを見下ろして生命の確認を行う。

「意識はあるか。学生でよかったな。『掃除屋』の規則として未成年者の討伐は禁則事項でな。あんたはとりあえずは連行だ。リーアにユリアあんたらもな」

「くっ! 一体ウィンナに何をしたのか聞いてもいいかしら?」

「簡単さ、弾き返しただけだ」

「弾き返す?」

「そうさ。ウィンナが放った魔法は俺の分身に当てていた。その分身は白の魔法で相手の闇を弾き返す。そう、ちょうど闇魔法を放った彼女は自らに自分の技を食らった。ちなみにここで重要なのがこの弾き返し方だ。この魔法は相手の体内に弾き返す、それも時間差でな」

「時限式のカウンター技ってところですわね」

「まあな」

「いつその姿になってましたの?」

「最初からだ。あんたらが相手にしてたのは放っから俺の分身だよ」

「っ!」

 この事実を聞いてリーアが体を振るわせ始めた。

 彼女の手に闇のレイピアが出現する。

「――――闇夜に照らせ、輪の剣、叫んで刻み相手を喰らえ! グラムスイータ!」

 突然の詠唱魔法。

 足場がぬかるみの闇沼に浸かり、両脇から岩壁に挟み込まれる。

 目の前から大きな口を開けた例の闇爆弾の入った波が襲い来る。

 波がまるでワニか何かのような怪物のように襲撃した。

「はぁ、はぁ。あぶないですわ。彼は危険ですわ。逃げますわよ、ユリア、ルリファンス、四姉妹!」

 しかしだった。

 彼女たちは動けなかった。

 足場に絡みつく黒の触手。

 足元がどこかの異空間にでもつながって飲み込まれ始めてくからだ。

「一体何がおこってますの!?」

「大技だったのかもしれねえがわるいな。この鎧はすべての闇と光を喰らう鎧。自分の栄養源にしかしない」

 必死にもがく『オオスズメバチの巣』のメンバーたち。

「さあ、悪夢へご招待だ」

「やめっ――」

 彼女たちの体は異空間に飲み込まれたのだった。


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