会場爆破 後編
会場内部の持ち込まれたらしきコンテナの山と瓦礫の山に埋まる受付カウンター席らしき残骸があるフロントフロアではテロ対策係室が『オオスズメバチの素』の幹部とその構成員を相手に奮闘していた。
「ちっ、くそったれが」
ウィンナは怒りに任せ横殴りに蹴りを放つ。
テロ対策係室の一人が蹴り倒され、玉突きのようにほかの者までも衝撃で吹っ飛んだ。
ウィンナと背を任せ合いながらユリアも奮闘していた。
ムチをしならせ、敵を一掃するように横薙ぎに振るう。
ムチによる衝撃の斬がテロ対策係室の部隊を一掃する。
そして――
「まさかぁ、このわたくしがぁん」
「テロ対策係室長も大したことありませんわね」
くずおれた婁紀彰の前に見下ろすようにリーア・メルティシアがいた。
さっきまで戦闘によってぼろぼろだたはずの彼女は今はなんともなかったかのようにピンピンとしていた。
それもそのはず。
遠くでこの戦闘を傍観してるルリファンス・桜・スファンという仲間の治癒魔法のおかげで急速的回復を遂げていた。
いや、傍観は正しくなかった。
彼女は膝に乗せたパソコンを使い会場内の人間爆弾を操作していた。
回復したのは何も彼女だけではなかった。
「くそがぁア」
「ありえないっすねー」
「私の負けかなーいえーい」
童子、鼎、かなで――『掃除屋』の未熟社員の3人の前にも彼女によって回復したものたちがいた。
「計画の邪魔させないネ」
「させないアル」
四姉妹も絶好調と言わんばかりに『掃除屋』の連中3人を相手取りどうにか倒す。
トドメを刺すようにして鉈をファンランが振り上げる。
ファンランが振り上げる動作は横合いからくる殺気を放つ乱入者が食い止めた。
「なにものアルか」
「『掃除屋』、コードE」
「エリス・F・フェルト!」
気づいたファンランは力押しに負けず、鉈を力で押し上げる。
エリスが後退し、横合いに大きな剣を構えた。
赤い刀身きらめくバスターブレード。
「ウィンナに負けたよわっちい『掃除屋』アルか」
その瞬間にエリスが一気に肉迫しファンランの喉もとめがけて刀身が迫った。
だが、鉈の軌道を操りうまくバスターブレードの軌道をずらした。
ファンランの髪の房が何枚か地面にはらりと舞い落ちた。
交差しあう剣同士。
同時に、武器を振り上げ激しい剣戟戦を開始。
その一方で、シェンファは咄嗟に助けに入ろうとはしない。
彼女の背後にもうひとり控える女性がいた。
「‥‥やめとくネ。たかがいままで平穏な日常を送ってた学生がつい最近実践経験を積んだってだけでうちに勝てないネ」
「なめないで。私これでももう『掃除屋』の一員」
雪菜は飛び出し、シェンファの背後を狙い刀で襲いにかかるが偃月刀が刀を弾き雪菜を殴り飛ばした。
「きゃっ」
尻餅を搗く雪菜。
その隙をついてシェンファの放った魔法による衝撃波が迫った。
「っ!」
衝撃波に飲まれる覚悟を抱き目をつぶった雪菜。
数秒経っても痛みが現れないことに違和感を感じ、目を開ける。
「なぁにやってんスか。敵を前にして目をつぶるのは雑魚っス」
「杏里」
ふいにシェンファの目が細まった。
「‥‥たしか、サードのところの殲滅部隊の隊長だったあるネ」
「はん、昔の話ッスね。今は『掃除屋』で働く一社員ッス」
杏里は鼻で笑いながらも常に神経をとがらせ、スキを見せてはいなかった。
(まるで隙がないネ。やりがいあるネ)
舌舐りをして、偃月刀を真正面に構え息を大きく吸いはいた。
「一度手合わせ願いたかったネ。来るといいネ」
杏里が飛び出し偃月刀と大鎌のせめぎあいが始まる。
そのまま、放置された雪菜はまわりを観察し、なにか爆弾の手がかりになる挙動はないか探す。
そのときルリファンスの姿に目が止まった。
「あれは」
すぐに察した。
爆弾操作の元凶であると。
「いやぁああ!」
駆け出しながらルリファンスに迫った雪菜の前にテロ対策係室やほか『掃除屋』のメンツと戦闘を終えていたリーア・メルティシア、ウィンナ・グローズ、ユリア・シャーテルベルグが立ちはだかった。
「あなたの相手は私たちですわ」
「会長‥‥」
ジリジリと迫りつつ背後にどすっと何かが触れた。
振り返ると死体のように青白く変色した顔立ちをした大男がいた。
その顔はアリスから渡された『オオスズメバチの巣』の資料で拝見していた。
「シェルシード!」
「グォ‥‥ォオ」
言葉にもならない悲痛のうめき声をあげ彼の腕が雪菜を取り押さえる。
「こんな程度!」
氷の魔法を放とうとした直後に体が急激に脱力した。
「エナジードレインさせてもらったぜぇ」
力が抜けきた雪菜の体をギューとシェルシードが締め上げていく。
何もせずまま殺されるのかと絶望を抱き始めた――
一発の銃声が響いた。
シェルシードの脳を打ち抜かれ雪菜を解放し倒れていき、また一発の銃声でルリファンス・桜・スファンが悲鳴を上げ、パソコンが手放されガシャンと音を立て砕け散る音が響く。
「なっ! 誰!」
靴音が静かに響き漆黒の制服を風になびかせながら老け顔の青年は銃口をリーアに向けた。
「悪さはここまでだ『オオスズメバチの巣』」
「龍牙優!」
その場に最強の『掃除屋』の男が現れた。