表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
国家秘密組織と特待生  作者: ryuu
後章 共生学園『魔法競技ランク戦大会』――――魔法騒動テロ組織襲撃事件
106/123

中節 残り20分

「クインテッドウォール!!!」

 4重にも重なった防壁がユリハネを守るように出現しアリスの最初の一打目の攻撃は防がれた。

 衝撃波とともにアリスは自分の攻撃の余波で吹き飛んで受け身をとって着地する。

 そんなうまく最初の一撃目が入るとは考えてはいなかった。

「中々良き攻撃デスワ。ですが、その程度の重みのある拳なら防げマスワ」

「みたいね。だからって、ただ無作為に攻撃を当てたわけじゃないわ」

 四層の防壁結界に徐々にひびが入っていく。

「砕けなさい!」

 呼応に合わせて四層の防壁が爆破し、ヒビの入った個所から粉々に砕け散る。

 爆風で体を押されユリハネは顔をしかめながら自らの顔をマントで粉じんから守る。

 その隙をついてアリスは駆け出した。

「っ!」

破砕はさい雹翔ひょうしょうきゃく!」

 右足に込めた氷の魔力を乗せての軽くジャンプした飛び蹴り。

 ユリハネの正面をとらえるようにして蹴りを入れる。

 しかし――違和感を感じる。

「甘いデスワ」

 その蹴りを入れたのはユリハネではなかった。

 黒いユリハネを模した人形。

 ユリハネが作りし、魔力の塊だ。

 結界が吹き飛んだ直後に魔力で人形を即座につくって重なり合うようにしてアリスの死角から見えないように自分は後退していたのだ。

 黒い人形が黒いぬめぬめとした生きた触手に変貌しアリスの足から体を縛りあげていく。

 遠方でアリスの部下の『掃除屋』と『オオスズメバチの巣』の幹部軍団を相手に取っていた部下がこちらの状況に気づき声を荒げた。

「ボス!」

 切羽詰る悲痛な呼び声。

 部下がこちらに援助しようとした矢先にルリファス・桜・スファンがその行く手を跳弾で阻んだ姿がうかがえる。

「あははは、あなたはやはり一歩甘い部分がありマスワ。あなたは何かが人質にされると人質を救出優先で行動を起こすために実力の半分しか出せないでイマスワネ。情報通りデスワ」

 ユリハネの言うとおりアリスは現状、あの機械を止めようという意思が先に出てしまい彼女のことなど眼中になく機械を壊すことに徹底し攻撃を繰り出そうとした。

 あの機械はいわば世界の人間を人質に取ってるようなものだった。

 魔力の支配する機械。

 この世界で今、魔力というのはもっとも重要な資源。

 いろんなものが魔力で動いてる分それらの機能を支配するのと同一なのだ。

 電子のタイマー表示が、機械の上に電子投影でテロップされていた。

 その表示時間後にこの世界の魔力供給は絶たれる。

 代わりに彼女らの持つあの奇妙な機械――

 マジックボックスからつながった四角い形をしたボックスへ流れていってしまう。

「私たちは世界を征服するために長い年月をかけあの機械『マジックトレード』を完成させマシタワ。世界は混沌にみち、腐っていく。そんな世の中を変える伝導者にふさわしい人間は私とあの方だけデスワ」

 拘束された体。

 唯一動くのは首から上だけ。

「あの方? いったい誰のこと?」

「うふふっ、さあね。少なくともあなたは知る必要はありまセンワ」

「言わせてもらうけど、その「あの方」って人物がどれだけ優れていたとしても世界を支配する権利なんてないわ! そう、誰かが世界を支配していい時代なんてあってはならない。人は自由であるからこそ人生があるのよ。支配など人を殺して自分も死んでるようなつまらない世界しか生まないでしょ!」

「それはあなたの偏見でしょう」

 確かにそうかもしれないけれど――

「ええ、そうね。偏見よ。けど、だからといって人を支配する権利などあなたにもその人物にもない! いや、誰にもそんな権利はない!」

「‥‥‥‥まったく、あなたは今の政府を見て本当にそう言ってるのなら馬鹿デスワネ」

「なんですって?」

「よく見なサイ。今の政府は裏では欲のために市民の税金を無駄遣いにしてるような連中デスワ。そして、どいつもこいつも異世界を我がものとしようとしてる連中ばかりデスワ。もしかしたらあなたが知らぬところで行われてることなのかもしれまセンワネ」

「政府が? どういういみよ? 私たちはそんなこと――」

「あなたはそうかもしれまセンワネ。なぜなら、あなたは単なる『使い捨ての駒』デスモノ。来るべき計画のために今は世を良くしようと振舞ってる政府の」

「一体何の――」

 岩が突然隆起し、とがった岩が拘束したアリスの体を突き刺した。

「がふっ」

 体中に刺さった岩から熱を帯びた何かが流れ込んできて体中が燃え上がるように熱くなってくる。

「ぁあああああ!」

「岩から流れ込んだのは闇の炎デスワ。それはいわば体内を毒素が駆け巡る呪いの火デスワ。しばらくすれば血液が沸騰して蒸発し肌はただれ焼け死にマスワヨ」

「あぐ‥‥がぁ‥‥」

 何もしゃべれない。

 意識がもうろうとする。

「しばらくおとなしくしてください」

 装置の方に向き直りユリハネは作業を再開する。

 じょじょに培養液の色は黒く変色し中が見えなくなるほどになってしまう。

 そして、タイムロゴが培養液の表面に表示された。

 00:00:20:00という表示。

 残り20分――。

「あと、約20分後にはこの世界の魔力は私たちのものとなりマスワ」

 それをこの場にいる者に告げるかのように両手を広げ宣言する。

 戦いの手を止めて全員が正面に向き直った。

 アリスはショックのあまりに涙を流す。

「新世界の始まりまでもう少しデスワ。邪魔なもの排除を行いマスワみなさん」

 ユリハネの呼応に合わせるようにして『オオスズメバチの巣』のメンツの魔力がまた一段と膨れ上がる。

 これは、最悪にまずい状況である。

 もはや、これで終わり。

 アリスは呪いに侵されていき意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ