学園理事長室
「確かに預かりました」
学園理事長室。
そこは応接室のような感じで中心にソファと机、壁際に本棚、そして、ソファと机の面接席の前に見守るような形で理事長の席である大きな机とリクライニングチェアに座る老婆がいる。
その理事長席に座る老婆は優しげな瞳を持っており、老婆が快く
書類を優から受け取ったところであった。
そう、彼女はこの学園の理事長――九条美代。
「本学園はどうですか?」
「どうと聞かれてもな、まだ初日ですし答えづらい質問ですね」
「ふふっ、そうですね。ですが、良いか悪いかあなたなら判断できるでしょう?」
彼女の眼は優を仕事人としてみたような厳格な目で鋭く監視するように足先から頭のてっぺんを見る。
仕事としてこの学校を判断した結果どうかと説いてる。
「そう悪くはないんじゃないでしょうか、現状ではですがあくまで」
「あら? 意外な回答ですねぇ」
目を瞬き、本当に意外そうな顔をしてる。
そこまで、意外な答えをしたつもりは優にはなかったが彼女にはどこか意外性のある答えだったのだろう。
「意外でしょうか? この学校のみんなは何かといって性格がいい子が多くいる。まぁ、実際それは『表の素顔』ですからまだ分かりませんが、再度言うように現状の見た判断でそうだと自分は申したまでですが」
優は苦手な口調を駆使しながらそう言って彼女の反応を確かめる。
九条理事長はじつに嬉しげな笑みを浮かべる。
「現状ですか、では、これから先そのあなたの判断は変わるかもしれないということですか?」
「そうです」
優は否定せず素直にそう答えた。
ここで、否定しても何にもならない。
彼女は大きく息をついてコトンと机の上に何やら置いた。
金属のブローチのようなものだ。
「この学園の校章です。学力審査とかはこのブローチが重要となりますので身につけといてください。いくらこちらの頼みで仕事を行ってもらっていても学校の校風にはしたがってもらいます」
「わかりました」
優は素直にそれを受け取って襟元につけた。
確かに小さくはあるブローチだが重さが結構ブローチにしたらある。中にバーコードや読み取るチップとかでも入ってるのだろうか。
厚さはそんなにないのに不思議な感じである。
「では、引き続き本学園の生活を楽しみ、そして、生徒の問題や学校の問題の処理をお願いします」
「はい、ですが一つだけ質問があります」
「はい? なんでしょう?」
優の言葉に理事長は目を丸くし疑問で眉間にしわを寄せた。
このタイミングで質問といわれても何が質問されるのかピンとこないのは一般人の反応だ。
「問題は『現状』見つかっていない。それでも、あなたはこの学園に問題があるということは同意してるんですか?」
「はい、あなたも先ほど申しました通り彼女たちはまだ『裏の素顔』を見せておりません。あなたが来てから。本来はこんな活気あふれてはおりませんよ。うちの学園は」
「なるほど気をつけて目を配っておきます。それでは」
「それだけですか?」
扉に手をかけた優はそう言われ、振り返った。
そう、思うのは当然だ。彼女にとってはなぜ二度も同じようなことを問いただすのかと疑問に感じるのが一般的でありたったそれだけのことならば聞かずともよかったのではと感じる。
しかし、優みたいな役職の人間は注意深い。
何事も。
「ええ、それではこれで失礼いたします。学園長先生」
優は最後にそう言って理事長室を出るのだった。