行間1
「へぇえ。それでそいつは、何を後悔したんだ?」
機械の合成音声のような声で、そこにいる『影』は言った。
『影』、と言うのも正しいのかは分からないが。他に呼び名が思い付かなかった。
なにせ、今僕の五感はそこに何も感じ取ってはいないのだから。
ただ、そこにナニカが居ると分かるだけで。
ナニカがそう言ったのだと分かるだけで。
やはり僕は何も感じてはいない。
だからとりあえず『影』と名付けてみた。
もしかしたらその『影』にも名前の様なものがあるのかもしれないけれど、それはきっと、まだ聞かなくてもいいのだろう。
なんとなくそう思った。
「おいおい、結論を焦るなって。ちゃんと物語も聴いてくれよ」
「はぁあ。まったく、オレに逢う奴はぁ、どいつもこいつもお喋りが好きな奴ばかりだなぁ」
「いいじゃないか少しくらい。一人の人間の、一日にも満たない物語だ。そう時間は取らせないよ」
うんざりした様な、それでいて面白がっているような声で『影』は、
「ふぅん。まあいいぜぇ、聴いてやるよ」
と言った。
どうやら話くらいは聴いてくれるらしい。
ありがたい。
「じゃあ、彼のことを紹介させてもらおうか。彼の名前は――」




