表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

やさぐれ狼とおっとり悪魔

作者: 清風 緑

「今日・・・暇かな?」

授業も終わり、清掃も終わった。帰ろうと鞄から教科書を出しているとクラスメイトの少女、 木下 心(きのしたこころ )に声をかけられた。


「暇っちゃ暇だけど?」

「そっか・・・やっぱり忙しいよねごめんね、急に変なこと言って・・・・。そっか・・・暇か・・じゃあ、いいや。暇なら仕方ないよね・・・って・・・暇なの!?」

「一応ね」

木下 心。

背は小柄で、栗色の髪はふわふわしている。なぜか和む。

澄んだきれいな目をしていて、あまり話したことはないが、天然だと思う。というか、今の言動で天然と確信した。


「そういえば、どうして鞄から教科書を出してるの?」

「置いていくから」

毎回持って帰ったりしていたら、大変だ。

しかし、うちの高校の教師は清掃中に生徒全員の机の中を確認するため、清掃が終わってから教科書を入れなければならない。でも、持って帰ることに比べればマシ。半端なく教科書が多いからだ。


「でさ、暇なんだったら・・・・一緒に・・・帰らない?」

「別に。いいけど」

断る理由もなかったから、そっけなく頷いた。

「本当に!?でも、どうして教科書を置いて帰るの?」

スルーされたと思っていた話題が戻ってきた。

「重いから。ってか何で俺と帰りたいの?」

「だって・・・・椿・・椿 智也(つばきともや)君は人間じゃないでしょう?」

こいつは何を言っているんだ・・・・?そして何故あえてフルネームで呼んだ?


「おまえ・・頭おかしいのか?」

「おかしくないよ。だって、私も似てるから」

根拠のない自信にしては、木下は揺らぎない瞳でこちらを見つめる。その瞳を直視できず、話題を変える。

「で、帰るんだろ?早く行くぞ」

「ありがとう!」

木下はとても嬉しそうに微笑んだ。


「私ね、悪魔に育てられたんだ。小さい時に両親を失っちゃったの」

帰り道で突然、木下は話し始める。普通の人ならおかしいとか思うのかもしれないけど、俺は信じる。信じられる理由があったから。

「すっごく優しい悪魔さんでね、将来は私に悪魔として働いてほしかったみたいなんだけど・・・死んじゃったんだ」

何も言わない。聞きたいことは沢山あるけど、今は聞いとく方がいい。そんな気がした。


「でね、その悪魔さんは私に、『あなたは人間に育てられてないから、人間じゃない人とお話しなさい』って言ったんだよね」

「だから木下は俺と?」

「うん。そう」

穏やかに木下は微笑んだ。


「でも、なんで俺が人間じゃないって思ったんだ?」

「乙女の勘?」

「随分アバウトだな」

「シックスセンス」

「言い方変えても同じだろ」

「でも合ってるでしょう?」

木下は道を塞ぐように俺の前に立つ。


「あぁ、合ってるよ。俺は、人間じゃない」

今まで誰にも言わなかった俺の秘密。隠す気には、なれなかった。

「俺は獣人と呼ばれる種族でな」

周囲に人がいないことを確認してから息を吐き出す。と、同時にミシリ・・・と骨の軋む音が聞こえる。

木下は驚いたように俺を見つめる。


「これが俺の、もう一つの姿だ」

かなり大型の狼で、毛並みの色は銀。鋭い牙に眼は血走ったような赤、そのせいか禍々しく感じさせる。

不気味、気持ち悪い、同族にそう言われたのはいつだったか。

そのせいか、昔からこの姿が嫌いだった。変化するのも、人間の状態でも鏡を見るのが辛かったほどに。


「気持ち悪いだろう」

半ば自嘲的に木下に笑いかける。

「か・・・・か・・・・・」

怯えているのか、驚いているだけなのか、木下は声を震わせて言葉を紡ぐ。

「可愛い!!」

「・・・・・・・・・・・・・え?」

「ね、撫でてもいい?」

俺の返事も聞かず、木下は俺の頭を撫でる。


「いや、あの・・・怖いとかないの?」

「なんで?とっても可愛いもん!ね、乗ってもいい?」

「駄目だ!俺は馬じゃないぞ!?」

俺の制止も空しく、背中にしがみついてくる木下。


「こら!降りろって!誰かに見られたら俺が危ないから!」

「どーどー」

「だから馬じゃねえ!!」


この後、通行人に見られて町を全力疾走したことは言うまでもない。


「おま・・・・いい加減にしないと・・・・」

元の姿に戻って、木下を睨みつける。

「すっごく、足速かったね!!疲れちゃった・・・?怒ってる・・・?」

興奮しながら、恐る恐る尋ねてくる表情は、小動物を彷彿させた。

「怒ってる」

「嘘!?」

「嘘」

「嘘か・・・・良かったぁ・・・・また乗せてね!」


そう嬉しそうに話す木下の笑顔は、とても愛らしかった。

この姿も、そう悪くないかもしれない。











「そういえば、お前本当に恐くないの?」

「うん、全然怖くないよ!こんな可愛いワンちゃん怖いなんて言うほうがおかしいよ!すっごく可愛い!尻尾とかふわふわだし!」

「・・・・・・ごめん、俺狼なんだけど」


ずっと前にリクエストされてた作品です!

やっと書きあげた・・・・!


ご感想お待ちしておりますー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  リクエストに答えてくれてありがとうございます!(元ネタが男女逆だったとかいまさら言えない…) まさかのコメディーでしたがおかげで楽しめました♪ 心ちゃんがかわいいです [気になる点]  …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ