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古着屋アップル 第10話 短編版

作者: 岩田 ヒロ
掲載日:2026/06/04

青学の合格発表の時間。

ママと並んでスマホを見つめる。指先が震える。


「時間になったら、ここ押すのよね?」

「うん……」


カウントダウンが始まる。

10秒前。

凛と大学に行きたい。

0秒。

ポチ。


「おめでとうございます! 合格」


「やったー!」

ママと抱き合って跳ねた。涙が止まらない。


すぐに凛から連絡。

「合格した! 詩は?」

「受かったよ!」

蓮からも。

「俺受かったよ。詩は?」

「受かったよ」

胸がじんわり温かくなる。


ただ、湊からは何も来なかった。

――仕方ない。そういう関係じゃないし。


***


パパが帰ってきて、目を潤ませながら言った。

「詩、よく頑張ったな」


「このコートがあったからだよ。ほんとに」


ふと聞いてみた。

「パパの昔のコートってどうしたの?」

「店始めるってやつに返したよ。グレンチェックだったかな」


胸が少しざわついた。


***


湊のこと、蓮のこと、凛のこと。

古着屋で起きた小さな奇跡。

全部があたしを受験へ向かわせてくれた気がした。


***


翌日、凛から連絡。

「明日、蓮と一緒に免許取りに行く」

二人が仲良くなるといいなと思った。


蓮に「待ってて」と言ったこと。

忘れてくれたらいい。

あたしも忘れたふりをする。


そして、あたしは古着屋アップルへ向かった。

バイトのお願いをするために。


***


「いらっしゃいませ。大学決まりましたか?」

店長が笑う。


「はい、青学受かりました」

「それはおめでとう」


「このコートのおかげなんです」

「いやいや、実力ですよ」


バイトの話を切り出すと、店長はうれしそうに頷いた。

「履歴書持ってきて。面接しよう」


奥から現れた若い店員――ユースケ。

全身古着で、ちょっと圧倒される。


面接の日を決めて店を出る。

春の空気が軽い。

コートの季節は終わった。


***


数日後、蓮から連絡。

「湊、青学落ちた。浪人するって。彩葉は上智受かったらしい」


胸が少し痛んだ。でも、気づいた。

――あたしの湊への気持ちは、もう薄くなっていた。


思い通りにならないこともある。

でも、思いもしなかった未来も、ちゃんと待っている。

本編はこちらから

https://ncode.syosetu.com/n0234lr/10

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