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セイバーじゃありません!恋する乙女の『せいばあ』です!!  作者: Hatsuenya


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9/20

せいばあ、舞台に立つ

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 せいばあ、今日も、張り切ってます。



 午前のお仕事の最後を飾るのは、女神様の信者の皆様へのこっそり御披露目。


 昼前の一般祈祷室で、女神様に歌を歌うお祈りの時間がある。その時、この神殿に聖女が居る事をこっそり御披露目して、地域の皆さんを味方に付けてしまおうと言う作戦である。

 これは、もちろんショータの提案。セオドア様に了承済み。


 背が低いため、壇を2段中央に用意して貰い、その上で跪いた。皆にアルテア聖女の証のピンクの髪がよく見えるように、頭巾は被らず、布で巻いた輪に色とりどりの梅の花を飾って頭に乗せた。


『せいばあの中身がガサツでも、聖女の雰囲気は演出でカバー』


 と言う、ショータの作戦。孫の言葉とは言え、ムッ!とするが、今の私は確かに聖女っぽい美少女。


『皆の前では、大好物のお菓子でも思い浮かべて……いや、セオドア様を思い浮かべた方が、良いかな。お腹が鳴ったら困るし』


 私がニッコリ微笑むと、元気ながきんちょが笑っている表情になるので、これまたショータの苦肉の策。

 いくらなんでもねぇ、観衆の前では、お腹なんか鳴らないよ。多分。きっと。


 さて、本番。ちょっと、せいばあも頑張りますか。孫にばかり世話かけても、申し訳ないしね。


 一般神官達の後に続き、一般祈祷室の横にあるドアから私達は入って行った。

 副神官長が私を先導し、右手をジョナサンに預け、左手をジェラルドに預けた私が、しずしずと中央の台まで進んでいく。


 歌は、ぶっつけ本番なので、最初に神官達が、グレナリア神殿の、女神様を讃える歌を歌い、次に私が、アルテア神殿の、女神様を讃える歌を歌う事になる。


 神官達の歌声は、朗々と美しく響き、私は、圧倒された。


 私?私とて神殿の聖女。歌のレッスンは受けている。聖女となると、1人で歌わされる事も、よくあるのだ。ただ、


『せいばあ、聖歌で、こぶしをきかせるな』


 はい、はい。ショータの声が聞こえた気がする。調子にのると、こぶしをきかせてしまうこのが、難点なんだよねぇ。

 

 こぶし、無し!OK、OK。


 私が気持ちよく歌っていると、辺りが明るくなって梅?の花びらが舞った。

 これは、スポットライトと、花吹雪のサービス!


『私から、ちょっとした祝福のサービスよ~』


 祝福?祝福なの?これ。


 歌い終わった私が、辺りを見回すと、祈祷室にいた皆が、両手の平を自分の胸に当て、私を恍惚とした表情で見ていた。


 何?何があったの?


「これは、どうした事だ」


 一般祈祷室の扉を開けて、セオドア様が入ってきた。私の場所から扉までは、一直線に通路になっているから人がいない。

 まるで、私に向かって歩いて来ているみたいだ。嬉しい。

 ああ、やっぱり、セオドア様は略式正装も、お似合いだねぇ。格好いいわぁ。眼福、眼福。


「神官長様だ」「神官長様」「お戻りになられた」「ああ、奇跡が」「聖女様」


 人々の色々な小さな声が聞こえる中、私は帰ってきたセオドア様のお姿をよく見るために、壇上から後ろ向きに降りようとした。

 何しろ、私の真ん前には、女神様の像がある。流石に、女神様にお尻は向けられないでしょう。


 が、足元の段差の場所を間違え、私の身体は、後ろに向かってゆっくりと倒れて


 両側から、ジェラルドとジョナサンが手を出して、倒れていく私を掴まえようとしたが届かず


 私は、床に落ちる前に、誰かに抱き止められた。


 上を見ると、セオドア様の顔があった。


 え?さっきまで入り口付近にいた筈だよ。速っ!側にいた神官達は間に合わなかったのに。


「小さな可愛い聖女様。どうか、気を付けて下さい。生きた心地がしませんでしたよ、セイバー様」


 顔が近い。そして、セオドア様の笑顔が眩しい。

 いや、本当に眩しい。

 私達は、女神様のスポットライトに当てられたまま、花吹雪まで続く中を見つめあっていた。

 いい加減、このスポットライトは、消してもいいと思うんだけれど、駄目なのかねぇ。 


「聖女様は、昨日、この国に参られたばかりで、まだお疲れだ。これから、この神殿にずっとおられるので、今日は、これで失礼する」


 セオドア様に、そのまま抱き上げられた私は、失敗が恥ずかしくて彼の顔をまともにじっと見ることも出来ず、少し下を向いていた。

 普段は、こんなドジは踏まないんだけれどねぇ。私も歳かねぇ……って、まだ10歳だった。


「グレン、壇が壊れていた。昨日、私が乗っても壊れなかったぞ。壇を調べてくれ。後、あの壇は誰が準備したのかも」


 私が怪訝な顔をしていたのに気付いたのか、セオドア様は歩きながら話してくれた。


「グレンは私の補佐官長です。私に関する雑用を、と、これはご存知ですね」


「はい、お母様にも補佐官長が付いていますので」


 大聖女と言えど、お祈りや祝福ばかりしているのではない。色々な実務や公務がある。そう言う事を管理してくれるのが、補佐官であり、彼らを纏める補佐官長だった。

 私やお姉様達も、お母様に用事があれば、取り敢えず補佐官長に言っておけば、お母様に伝えて貰えた。


「先ほどグレンに言ったように、壇が壊れるように細工されていた。誰がやったのかわかるまで、大人しくしておいて欲しい」


 私は、「はい」と返事をし、大人しく彼に抱っこされたまま、ショータが待つという応接室へ連れていって貰った。

 大人しくとは、そう言う意味では、ないと知っていたけれど、そこはそれ。

 役得、役得。





「セイバー様の声、キレイだったよね。ジェラルド」


「ああ。そして、可愛らしかった。だけど、ああ、あの時、とっさの事とは、いえ、手が届かなかった。私達がお守りする筈だったのに」


「神官長様には、まだまだ、敵わないよね。格好良すぎる。セイバー様のあの顔見た?絶対、惚れちゃったよね。私でも、惚れるよ。あんな事されちゃあ」


「何言ってる。神官長様は、70歳過ぎの老人だぞ。惚れるわけないだろう!年齢は、私達の方が近いんだ」


「あー、何かわかっちゃった。へえ。うん。頑張ってね。ジェラルド。神官長様が、恋敵か。大変だよね」


「いや、違うからな。そう言う意味じゃなくて」


「うん、がんばれ」





 がんばれジェラルド。きっと、アピールポイントが、ある筈。



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