神官長様、ご趣味は?
読みに来て下さって、ありがとうございます。
はっきり言って、せいばあは、面食いです。年齢制限は、有りますが。
神殿の馬車に揺られ、私は、セオドア神官長の横に座り、彼に凭れ、ご尊顔を拝んでいた。
向かい側に座っているショータの視線が、ジト目になっているが、私は、気にしませんとも!
枯れ専と呼ばれようが、何と呼ばれようが、10歳の子供なので、イケじじに凭れようが、ベッタリとくっつこうが、OK、OK。
何しろ、私の中身が70超えのばばあなのを知っているのは、前世孫のショータ(すぐに国へ帰る)と女神様だけ。全然、問題ありません~。
「聖女バーミア様には、無理やりゴルディアに来てもらい、申し訳ございません。お辛いかとは思いますが、我がグレナリア神殿が全身全霊をもって、皇帝や皇宮からお守り致しますので、御安心して神殿にてお過ごし下さい」
「神官長。私の事は、せいばあとお呼び下さいね。アルテアでは、せいばあと呼ばれていましたので」
「おお!そうでした。噂は予々お聞きしております。魔獣退治を始め、干魃対策、洪水や地滑り。色んな場所でご活躍とか。
では、セイバー様。私の事は、セオドアと、お呼び下さい」
「セオドア様。素敵な名前ですね」
「この様な年寄りに、嬉しい言葉をありがとうございます」
「時に、セオドア様。ご趣味は?」
「子供の頃から神殿におりますので、大した趣味は有りません。強いて言うなら、畑仕事と、身体を鍛える事が趣味でしょうか。
セイバー様のご趣味は何でしょう?
ご不憫をお掛けしますので、神官一同、なるべくセイバー様のご希望を叶えたく思っております」
セオドア様は、私に優しく微笑み、そう言ってくれた。ご希望ですか?出来るなら、セオドア様の側に、1日中、侍って居たいですね。
お茶を入れ、一緒に食事をし『あーん』なんて出来たら、最高かも。美味しいご飯も作ってあげたいねぇ。
はぁ。
「せいばあは、自分が不憫なんて思ってませんから、大丈夫だと思いますね。ほら、この緩みきった幸せそうな顔」
我が孫ながら、一言、多いんじゃないかねぇ。だから、嫁の来てが。
って、今世では、王子様で、私の婚約者だったわ。あははははは。
まあ、新しい婚約者もいるし、大丈夫でしょうよ。もっとも、生まれたばかりで、11歳も歳下だから、孫の顔が見れるのは、随分と先になるけどねぇ。
「私の趣味は、漬け物作りに、編み物ですよ。セオドア様は、何色がお好きですか?」
「漬け物?ああ、保存食ですね。それは、ありがたい。では、料理番と顔合わせの折に、その様に伝えておきましょう。
それから、えー、好きな色ですか?黄緑でしょうか。セイバー様の瞳は、美しいペリドットの様な黄緑色ですね。キレイな色だ」
キレイな色ですか!?黄緑色の目なんて、とんでもない色だと思っていたけど、黄緑の目に生まれて、良かった!
ありがとう、女神様。
「それはそうと、神官長。今後について話をしておきたいのだが……」
セオドア様とショータが小難しい話をしている間、私は、セオドア様の顔を見ている事にした。
ずーっと見てても、飽きないねぇ。いい男だねぇ。うちのじいさんも、顔だけは、いい男だったんだけど、如何せん中身が最悪だったからね。
それに比べてセオドア様は、はぁ、顔もいいけど、紳士的で、優しくて、気が利いて。
「おや、間もなく神殿ですよ。ご覧下さい、セイバー様。この道は、梅林なんですよ。
梅の木は、ご存知ですか?可愛らしい花をたくさん咲かせます。紅、白、黄、どれも今が盛りです。丁度いい時に、お出でなさった」
「梅!梅なんですか!?」
「ええ、そうですよ。アルテアには、ありませんか?
梅は、花は可愛くてキレイなんですが、実は食べれません。匂いは、素晴らしいんですが」
さも残念そうに、セオドア様が首を横に振り、声を落とした。
「ショータ!梅、梅だよっ!」
私が興奮して大はしゃぎするのを、ショータは、疲れた目で、眺めた。
「わかった、わかった。帰ったら、赤紫蘇の苗を送るから、頑張って育てて。
後は、塩?」
ショータは、梅干しが嫌いだからねぇ。でも、梅は、他にも使えるからね。
「砂糖も、米もだよっ。約束だよ」
私の言葉に、セオドア様が驚いた。そうだろうね。塩も結構な高級品だが、砂糖はもっと高級品だからね。
「ああ、心配は無用ですよ。我が国には海があり、昨今、塩の新たな精製方法を確立しました。塩が沢山作れるようになり、塩は高級品では、ありません。
また、サトウダイコンの栽培も近年盛んになりましたので、砂糖も、さほど高級品では、ないんですよ。
どちらも、せいばあの功績ですので、せいばあは優先してどちらも手に入れる事が出来ます」
セオドア様の呆気にとられた表情も、いいねぇ。いい男は、どんな顔をしても、似合うんだよ。フフフフフ。
「セオドア様、異国の文献によると、梅の実は、漬け込む事によって、食べれる様になるんですよ。保存食に、最適です。
梅の塩漬け、梅の砂糖漬け。梅ジュースに、梅酒、梅ジャム。特に、梅の塩漬けは健康によく、炊いた米にぴったりです」
今まで探してきた梅の木、よもやこんな所にあるとは、思ってもみなかった。
「梅の木は、グレナリア神殿にのみ、生えております。この国では、女神様の木として有名です」
まあ、とにかく、梅干、梅酒と来たら、私の出番だよ!
「毎年、かなりの量の梅の実を廃棄してます。勿体ない限りです」
「セオドア様。遠い国でも、やはり、神様の木として神殿に植えられていまして、そちらでは、御神酒として梅酒が振る舞われます」
「御利益が有りそうですね」
「はい、祈神料として、割増料金で売れますね」
「いえ、神殿ですから、あまり利益追求は……」
「頂いた祈神料は、神殿の新たなる設備や修繕費となりますので、女神様に還元されます。問題ありません」
「梅酒や梅干、梅ジュースは漬け込む時間がかかりますので、先ずは梅ジャムを作り、貴族の方に女神様印のありがたいジャムとして、高値で売り付けましょう。
ガッポガッポ行きますよ~( ≧∀≦)ノ」
外見は美少女聖女なのに、中身は残念聖女なせいばあ。
因みに、作者の家では、梅ジャムは梅ジュースの後の梅で作ります。梅が勿体ないので。




