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セイバーじゃありません!恋する乙女の『せいばあ』です!!《第一部 完》  作者: Hatsuenya


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落ち着いた新しい日々は、始まらない

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 このお話にて、第一部は終了です。



 私の聖女の御披露目はともかく、若返ってしまったセオドア様の新たな姿の御披露目は、信者達の疑惑を招いた。


「何を言っておる。神官長様の子供の頃に生き写しじゃ。それに、よくよく心の目で見てみろ。動作も行動も、考え方、モノの言い方、何れを取ってもセオドア神官長様そのものじゃろうが。若造には、わからんかもしれんがな」


 老人達が、神官長の若返りを疑っていた者達に口を揃えてくどくどと文句を言い、それに閉口した若者達(老人にとっての)は口を慎んだ。

 毎年、年に一度、歴代の神官長の肖像画等を公開していた事もあって、セオドア様の偽者疑惑は下火になった。



「大体、女神様が祝福されたんだから、問題なかろう。神官達や聖騎士達が文句を言わないのに、お前達が文句を言ってどうする。

 子供になった神官長様も、先頭を切って魔獣退治をされてるんだぞ。そんなに言うんだったら、お前らも魔獣退治に行って来い!


 と言って魔獣退治参加誓約書を突きつけてやったら、黙りよったわ」


 ワハハハ、と前公爵が言った。

 前聖騎士団長だの前宰相や前ギルド長等が、今日は、ここに集まって梅の花茶を飲み、チーズクッキーや、前世で喫茶店でコーヒーのお供に付いていた豆菓子を再現したモノを摘まんでいた。

 セオドア様と同年代の前線を退いた引退者ばかりが、こうしてグレナリア神殿に月に一度は集い、老人会の様なモノを開いているそうな。

 本日は、ゲストとして、私も招かれている。


 何が嬉しいって、このメンバー、老人だった時のセオドア様には劣るけれど、中々のイケジジ揃いなのよねぇ、これが。


 マティア達の聖キャラバンやアルテアの聖騎士達が帰ってしまい、梅の花も散ってしまって花の加工品を全部作り終え、悄気きっていた私をセオドア様が、この集まりに誘ってくれたのだ。


 集まりと言っても、神殿の一室に集まるだけなので、大した規模ではないけれど、メンバーが凄すぎた。しかも、ここに集まる情報ときたら、とんでもない。


 セオドア様が言うには、表の政治では動けない案件を、引退した者達にこっそり現役メンバーが耳に入れ、ここで情報を集結して皆で解決に力を貸しているとか。


 凄いじゃないの。渋くて、格好いいねぇ。


「お顔が崩れてますよ。セイバー様。言っておきますが、皆さん、妻子持ちですからね。まあ、中にはやもめの方も居ますけどね」


 小さな声でセオドア様が、私に耳打ちした。少しくすぐったくて、余計にニヤニヤしてしまった気がする。


 あははははは。見る分には、タダですから。妻子持ちでしょうが、やもめでしょうが、見てるだけですから、問題なし。

 そう思って見回すと、イケジジ達もニヤニヤと笑っていた。


「お熱い事で。仲睦まじくて、宜しいですね。そうしてると、神官長は本当に小さな子供に戻った様だな。小さな可愛いカップルの様で、実に実に微笑ましい」


「聖女様争奪戦の勝者は、どうやら神官長殿の様だな。我らとしても、その方が望ましいですからね。貴方なら、皇帝や皇妃をも押さえ込める」


 前商業ギルド長や前宰相達の言葉に、セオドア様が憤慨した。

 

「私はともかく、セイバー様をチェスの駒の様に扱うのは、止めてくれ。

 さあ、セイバー様。そろそろ、執務の時間ですよ。ジェラルドが扉の外で待っていますので、どうぞ、あちらへ。

 ここでのお話は、また後程、私からお伝えしますから」


 イケジジ達の「狭量な奴め」「我らにもロクに見せずに囲う気だな」等と言う声を後ろに、ヒョイと扉の外で待つジェラルドの元へと、私はセオドア様に放り出された。


 ちぇっ。折角、今から面白そうな話になりそうだったのに。



 

 その夜は何だか眠れなく、月明かりに照らされた庭に私はソッと出て、1人ベンチに座った。


 今宵は、満月がえらく近く大きく見える。私は、じっと、満月を見ていた。


「夜番の聖騎士が、随分心配してますよ。ああ、上着はしっかり着込んでいらっしゃるようで、安心しました」


 分厚い上着どころか、ショールや膝掛けまでしっかり総動員して、私はモコモコと着膨れしていた。

 セオドア様が、静かに私の隣に座った。

 あれから、イケジジ連合の話し合いは長引いたらしく、セオドア様は、その日は夕食にも現れず、私はセオドア様に会えずに就寝したのだ。


「すいませんねぇ。私、ちょっと寝付けなくて。夜番が、セオドア様を呼びに行ってしまいましたか」


「月を見ていらしたんですか?」


「はい」


 私は、セオドア様の顔をじっと見た。セオドア様は、心配そうに私をじっと見つめた。


「国を旅立つ前に、しょうたに話をしたんですよ。


『お互い、夜になったら月を見よう。月を見る事で、お互いに繋がっていよう』


 アステアの王宮で、2人で夜の庭のベンチに座って、こんな風に一緒に、ただ、お月様を見てました。


 今日は、月が綺麗ですから、つい、フラフラと庭に出てしまいました。申し訳ありません」


「ああ、では、私も少しの間、お付き合いしましょう。ですが、梅の花は散り、春になりましたが、まだまだ夜は冷えます。もう1枚、毛布を着て下さい」


 持ってきた大きな毛布を広げると、セオドア様は、私と自分の肩に着せ掛けて私の頭の横に手をかけ、自分の肩に、そっと私の頭を乗せた。そのまま、セオドア様が毛布の端をくるりと2人の身体に巻き付けると、私達は身を寄せあい、一緒に月を眺めた。


「お月さん、綺麗ですねぇ。セオドア様」


 セオドア様は、溜め息を吐いて、自分の肩の上にある私の頭の上に自分の頭をそっと乗せてきた。

 そう言えば、日本では昔から『月が綺麗だ』と言うのは、『貴方を愛しています』と言う意味だったねぇ。

 まあ、そんな事はセオドア様は知らないから問題ないけれど。


「本当に、月が綺麗だ。まるで、この世界に2人だけで居るみたいな夜です。

 今日は、部屋を追い出してしまって申し訳ありませんでした。本来ならば、他のメンバーともっと一緒に話をしてもらう予定だったんですが……その、私が妬いてしまいまして。

 セイバー様が他の者達に見とれているのに、嫉妬したんですよ。困った事に」


 再び大きく溜め息を吐くと、私をぎゅっと抱き寄せた。以前と違い、私よりも頭半分くらい大きなだけの小さな身体だ。抱き寄せられるのには、丁度いい。


「身体に年齢が引き寄せられてるんでしょうかね。身体は、こんなでも中身は老人のままな筈なんですがね。お恥ずかしながら。

 それとも、『夜は、人を素直にさせる』んでしょうか」


「私だって、身体はこんなでも、中身は老人ですからね」


「そうでした、そうでした」


 私達はクスクス笑いながら、そのまま、ただ、月を見ていた。


 しょうた、お前も再び誰かと一緒に、月を眺めれる日が来るといいねぇ。


 

《第一部 完》



「セイバー様、魔術大国ソーサリナの第二王女をご存知ですよね?」


「あー、まあ。一時期、私の元に預かっていましたねぇ」


「セイバー様を手に入れれなかった皇帝が、ちょこちょことソーサリナにちょっかいを出してまして。昨日、とうとうソーサリナの王太子が皇帝の元に囚われました。

 皇帝は皇妃には秘密裏に早急にソーサリナの王と連絡を取り、王太子の身柄と引き換えに『王女を1人、こちらに寄越せ』と」


「第二王女は、側妃の娘ですから。当然、彼女が来る事になるわねぇ」


「ですが、まだ7歳ですよ!神殿としては、残念ながら手を出す事ができません。我々メンバーは、極秘裏に立ち上がる事にしました」


「『案ずるより産むが安し』ですよ。中々、やってくれる子ですから、皇帝も手をやくかも知れないですよ?」





 これにて、こちらのお話は、第一部 終了となります。こちらのお話は少しお休みします。


しばらくは、


『元魔王な令嬢は、てるてるぼうずを作る』

『貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます』


の方を、よろしければお楽しみ下さい。

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