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セイバーじゃありません!恋する乙女の『せいばあ』です!!《第一部 完》  作者: Hatsuenya


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聖騎士の望むモノ

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 エレシュキガリアが、グリバードに会いに来ます。



 皇宮から馬車が神殿にやって来た。

 馬車到着の知らせを受けて、慌てて門に向かったセオドア様に私も続いた。


 深い色合いの赤っぽい光沢のある木製の馬車に立体的な黒い薔薇の彫刻がなされている立派な馬車。

 中からは、皇宮のお仕着せ姿の侍女の手を借りながら、艶っぽい黒髪に怪しく光る黒い瞳の美女が降りてきた。


「これはようこそ、エレシュキガリア殿。お待ちしていました」


 エレシュキガリア。愛ゆえに魔王を引退し、皇帝の側妃となった美しき元魔王。

 

 因みに現魔王は、魔族ではなく、魔術大国ソーサリナの王兄で、魔王並みの魔力を持ち、巧みに闇魔法を操る人間なのよねぇ。


 そんなエレシュキガリアが、何故この神殿に来たのか、よく分からないけど。


「おう、エレシュキガリア殿、お待たせしたな。これが、例の者だ」


 そう言った私の父親とエイブレムに連れられてやって来たのは、グリバードだった。


 元魔王の気配を感じ取ったのか、カーバンクルまでが何処からともなく現れて私の頭の上に乗った。


「なんちゅうモノを招くのやら。門より内には、絶対に入れるんじゃないぞ」


 カーバンクルは、そう言うが、私だって、そう思っている。


 これは、人に見えて人ならぬモノだろう。これを嫁に貰うなんて、皇帝は狂っているのか、馬鹿なのか、それとも余程の豪傑なのか。判断に迷うわねぇ。


「妾は、ここまでしか入れぬ故に、其方からこちらへ出てきて給れ」


 微笑むその姿も、妖艶としか言い様がない。片手の手の平を上に向け、こちらに向かって手招きをする。

 これは、これは。まるで、物の怪みたい。


 普段は外にいる門番の当番の聖騎士も、今は門のこちら側に来ている。


「流石、聖騎士。先ずは、妖しいモノからは一歩遠ざかる事を知ってるんだね」


 カーバンクルが言う様に、私達が闇雲に突っ込んで行っても、これには勝てないわよ。


 ラスボスだよ。ラスボス。ショータと一緒にやっていたゲームによく出てきた、最後のボスってヤツだわ。

 いや、ショータが言ってたけれど、今回私達が行う戦いの場合、皇帝がラスボスとなるらしい。

 となると、この元魔王は、裏ボス?裏ボスなのかしらねぇ。


 門のこちら側で、セオドア様や私の父親を始め、聖騎士や神官が、険しい顔で剣や武器に手を掛け、すぐにでも闘う気配を見せている。


「ちっ。妾の魅了も効かぬとは、無粋な者共よのぉ。

 止めた止めた。興醒めじゃ。ほれ、何もせずにちゃんと詫びをしてやるから、出てきて給れ。妾は、其方には入れぬ故に」


「こちらとて、貴女と今は1戦交える気は無い。交渉ならば、礼儀には敵わないが、このまま門を挟んで話し合っても良かろう。

 まったく、エレシュキガリア殿が、要らない事をするからだぞ」


 セオドア様が少し足を開き、自分の胸の前で腕を組んで、ちょっとふんぞり返るのが、可愛らしい。

 まるで、イケじじだったセオドア様の頃の仕草を真似する子供の様。

 うん。まぁ、中身はセオドア様のままだものねぇ。

 

 私もセオドア様の隣に立ち、ギロリとエレシュキガリアを睨んだ。


 さも可笑しそうに高笑いをしていたエレシュキガリアは、今度は本当にお腹を抱えて笑いだした。


「小さな神官長に、小さな聖女、か。なのに、どちらも中身は老獪な老人ときている。難儀なモノよのう。さて、くろのが奪ったのは、神官長と聖騎士2人の『時』だと聞いたが、もう1人は誰に奪われた……違うな。ほほう、これは面白い。皇帝やソーサリナの王達と同じ運命を持つ者か」


 元魔王は、よく喋る。放って置いたら、どんどん情報をくれそう。もっとも、私の秘密も暴露されそうだけれど。


「エレシュキガリア殿は、どうやら、イタズラとお喋りが過ぎるのでは、ないかな。肝心の要件は、どうなったのか」


 セオドア様の言葉にエレシュキガリアは、姿勢を正し、今度はニヤリと笑った。


「そうであった。では、先ずは、此度、妾の侍従が迷惑をかけたグレナリア神殿とアルテア神殿の聖騎士達には、美酒を。尤も、妾からの酒では疑いも多かろう。皇妃に頼んで、皇妃から送って貰う事にした。

 此度の件、本に騒がせてすまなかったのう」


 美しいカーテシーを披露したエレシュキガリアは、皇帝の美しい側妃にしか見えなかった。

 顔を上げれば、元の不遜な態度の美しい元魔王だったけど。


「さて、各神殿に対する補償は、皇宮で話し合った通りだが、もう1人、くろのに、人としては多くの『時』を喰われた者を、前に」


 私の父親に促されたグリバードは、私の隣に立った。

 ちょっと、グリバード!殺気、殺気を押さえて!殺気がスゴいから。


「おう、ソチか。神官長達にも説明したが、喰われた『時』は、戻らぬ。お前達がモノを食って血肉とするのと同じ様にな。

だから、代わりにソチの望みを1つ叶えてやろう。ソチの望みは、何ぞ?」


「私の望むモノは、貴女には叶えられません」


 エレシュキガリアの問いに、グリバードはキッパリと言い切った。


「そんな事は無いぞ。言ってみよ。金か?金銀財宝か?家か?土地か?女か?それとも、地位か?国か?」


「何を莫迦な事を。私は聖騎士。金も財宝も家も女も国も、要りません。

 我らが望むモノは、ただ1つ!聖女様にお仕えする事。聖騎士は、聖女あっての聖騎士ですから。

 ですが我らが聖女バーミア様--セイバー様は帝国に取られ、我がアルテア神殿の者は1人とてお側に居る事も叶わず。


 ですから、私は『私が聖バーミア様のお側に居る権利』を、要求します。

 これは、貴女では、決めれない事ですよね?」


 これには、セオドア様も私の父親も頭を抱えた。どうやら、これはグリバードの独断らしい。

 私も、グリバードは、ちょっと。決して無能と言うわけではないけれど、有能かと言われると、悩むところだし。


「ふむ。まあ、確かに妾の一存では決めれぬな。良し、では、皇妃に掛け合ってやろう。しばし、待っておれ。では、神官長と聖女、聖騎士達よ。またの会合を楽しみにしておる」


 そう言って、扇で口元を隠し、高笑いと共にエレシュキガリアは侍女を従え、馬車に乗って去って行った。


 ああ……疲れた。





「おい、若造。お前の所の騎士には、褒美は金か家かにしておけと言い含めろと、言っただろうが」


「私も、グリバードにそう言ったんだが、ムリだったな」


「聖騎士の家は、神殿です。

 聖騎士が、金を何に使うんです?

 飯も、神酒も、衣服も、鎧も剣も支給されますし。金を貰っても、神殿に寄付するだけですよ。まあ、寄付して貰ってもいいんですけど。

 女って言われても、好きな女は居ませんし。好きでもない女を貰っても、ねえ?

 国を貰ってどうするんですか?

 地位って、聖騎士団長って、うちじゃあ大聖女様の旦那さんって決まってますし。


 それより問題なのは、聖騎士なのに、お仕えしていた聖女様が、居なくなっちゃったって事ですよ。

 

 聖騎士として、当然の権利を要求しただけです」





 揺るがない聖騎士グリバード。勝手にせいばあを自分の仕える聖女と決めています。せいばあは、ちょっと鬱陶しがってますが。

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