神官長の神官部隊行進曲
読みに来て下さって、ありがとうございます。
今回は、帝国神官長セオドア視点です。
神官長セオドア side
神官長の朝は、女神様への祈りから始まる。
筈だった。
「神官長様!起きて下さ……あ、お早うございます。流石、年寄りは朝が早い」
血縁者を世話係にするのは、考え物かも知れない。気安すぎる上に、遠慮がない。
亡き妹の頼みで、彼女の曾孫達を神殿に引き取ったものの、その内の1人は落ち着きが無さすぎる。
「ジョナサン、ちゃんと朝の準備をお持ちしろ。神官長様、お早うございます。
ああ、もう朝のお支度までお済みですか。でしたら、お茶をお持ちしましたので、お召し上がりながら、座って、お聞き下さい」
ジョナサンの双子の兄のジェラルドは、反対に、いつでも落ち着きすぎて偉そうだ。どっちもどっちだな。
「胸騒ぎがするので、一刻も早く祈りの場へ行きたいのだが」
「では、尚の事、お聞き下さい。本日、神聖国アルテアから聖女様が輿入れなさいます」
「……はぁ?」
「はい、興奮するとお身体に悪いですから、お茶を飲んで落ち着いて、お聞き下さい」
私は、至って健康だし、面食らってはいるが、落ち着いている、筈だ。
「先日、アルテアの国王の姉君が、うちの皇帝の寝所に全裸で忍び込み、暗殺未遂で逮捕されました。不問とする代わりに聖女を嫁がせろと皇帝がアルテアに交渉しました」
確かに、お茶が必要な話だ。莫迦な話過ぎる。アルテアの王姉というと、あれか。あれは、暗殺とは関係ないだろう。浅慮過ぎる。
どうせ、誰かの口車に乗って、皇帝のハーレムにでも、混ざりに来たのだろう。1人ぐらい増えてもどうってことない。混ぜてやれば良いのに。
「4人の聖女様方は、結婚されているし、末の聖女バーミア様は第一王子の婚約者だろう」
「はい、ですから、そのバーミア様を嫁がせろと」
バーミア様は、確か、まだ子供だった筈だが。いつの間に成人されたのか。年月の経つのは早いもんだな。
「落ち着いておられるようですが、バーミア様は御歳10歳ですので、結婚できません。ですので、まだ第一王子と婚約されたままでした」
まあ、あの皇帝の事だからな、そっちの趣味も、あってもおかしくない……。って、駄目だろう。聖女様だぞ。
「はい、もう一杯、お茶をお召し上がり下さい。ついでに、クッキーを。この後、おそらく食事の時間は、無くなりますので。
聖バーミア様が10歳ですので、流石にアルテアから物言いが来まして、譲歩として、聖バーミア様に我が国で暮らしていただく事になりました」
我が国で暮らしていただく。
「父が、神官長様に、そう伝えよ、と」
ほほう。
「王妃様が、そう、決定なさりました」
いよいよ、王妃も腹に据えかねたか。
「皇宮では、騎士団が国境の森まで聖女様を出迎えに行く準備をしています」
「皇帝は?」
「皇宮にて、お待ちになられるそうです」
「では、副神官長に言って、こちらも聖女様のお迎えを。第一神官長の部隊と聖騎士団を中心に、盛大な御出迎えを用意するようにと伝えよ。
何しろ、国境には、時々、魔獣が出没するからな。
私は、女神様へ朝のお祈りを」
『あら、せいばあちゃんは、「渡りに船~」って、喜んでるんだけど。ショータがね。それはそれは怒ってて。あ、婚約破棄はね、2人共、大賛成なのよ』
「大賛成なのですか?」
『なんでも、倫理的にも、精神的にも無理なんだそうよ。私には、わからないけど。
でも、ショータ曰く、あの皇帝に嫁がせるんだったら担いで逃げる。この世界が、どうなろうと知ったことか、と』
「世界ですか?国では、なくて。ショータとは、ショータリアス殿下ですよね。ショータリアス殿下と聖バーミア様は、大変仲睦まじく、国民の支持も高く、2人で国内で次々と偉業を為し遂げられていると、お聞きしますが。
結婚は、嫌だと」
『無理、なんだそうよ』
「無理、ですか」
『人間って、よくわからないわ~』
女神様は、最終的には『後は宜しく』と、私に丸投げされた。
どうしろと言うんだろうか。
私こそ
“女神って、よくわからん”
国境の森を抜ける街道に私達が到着したのは、帝国騎士団よりも少しばかり前だった。
森のすぐ側を陣取り、私を先頭に、正装にて、出迎えの神官一同、きらびやかに並んでおいた。
「これは、これは、神官長殿。本日は、どの様な御用事で」
ほほう、第二騎士団か。流石に第一騎士団は、都からは外せないからな。
これは、都合が良い。
第二騎士団は、第一騎士団に所属するには力量が足りない貴族の令息達を集めて作られている。
要するに、見映えと育ちが良いお飾り集団だ。それは、この第二騎士団長も含まれる。確かこの男、ベツレム公爵家の三男だったな。
「神の花嫁を迎えに参りました。第二騎士団長殿は、どの様な用件で?」
「皇帝陛下の新しい花嫁を迎えに」
「それは、どなたの事でしょうか?」
「聖女様だ」
おやおや。あえての失言か、それとも頭に違うモノが詰まっているのか。
「聖女様は、皇帝陛下の花嫁ではなく、こちらの国に住まわれるだけと、お聞きしていますが?
私共は、女神様の御告げで、神の花嫁たる聖女バーミア様を御迎えに上がりました」
「ふん、女神などと戯れ言を。本当に、御告げがあったのか、怪しいものだ。
我らは、聖女と交換する人質を連れている。大人しく引き下がって貰おうか」
人質……件のアルテアの王姉が、馬車から引き出され、第二騎士団の先頭に立たされた。
だが、その時、幾つもの大きな影が地面に落ち、魔獣の叫び声が辺りに響いた。
「ワイバーンだ!ワイバーンの群れが」
上空にワイバーンの群れが現れ、少し離れた場所に止められていた馬車に繋がっていた馬を狙って、次々に降りてきた。
これは、偶然か。
それとも、女神様の采配なのだろうか。
『がんばって~セオドアちゃん~』
「女神様、このワイバーンの群れは」
『ちょうどいいから、せいばあちゃんにカッコいい所、見せちゃって~』
「それ所じゃ、ありませんよ」
『大丈夫、大丈夫。いざとなったら、せいばあちゃんが、やっつけてくれるからね~』
「何ですか!?それ」
女神の采配、発動~( ≧∀≦)ノがんばれ、神官長。




