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セイバーじゃありません!恋する乙女の『せいばあ』です!!  作者: Hatsuenya


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忘れちゃ嫌だ

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


前回の話の、せいばあのバージョンです。



「どうやら、人質候補が、向こうからやって来た様ですね」


 視察に行っていたセオドア様達の馬車が、護衛の聖騎士達の馬が、神殿への道を走ってくるのが見えた。


「メイスンの記憶では、馬車には神官長とジェラルドと言う神官見習いの少年が居る筈です。神官長はともかく、ジェラルドは何年まで遡れますかね」


 黒いバッタは、キシキシ笑って、馬車に向かって跳び去った。


「ジェラルド!セオドア様!

 エディアス様、後をお願い」


 私は、門の柵の上に飛び乗った。珠が、私の頭の上に飛び乗った。


 馬車の屋根の上にバッタが飛び乗ったのが見えた。

 馬達が、おののいて立ち上がりかける。


 聖騎士達が、馬から降りて剣を抜く。


 バッタは、そのまま腕を屋根に突き立て、誰かを屋根の上に引き摺り出した。


 バッタの姿が、セオドア様に変わったのが見えた。


 事態がよく判らないのか、聖騎士達は剣を構えたまま手を出せないでいる。


「珠!お願い」


 ごめん。よろしく。


 私は、珠を馬車から引き摺り出されたセオドア様に向かって投げた。

 お願い、何とかして、珠!


「くそ、邪魔をするなら、お前から時間を貰うぞ」


 セオドア様の姿となったバッタが、珠に向かって叫ぶのが聞こえる。


「僕の過ごした時間が、どれ程あるか知ってる?そんな事をすれば、お前の身体は、僕の時間ではち切れて木っ端微塵になるだろうよ」


 珠は、そう言いながらもセオドア様の顔に張り付いて、離れようとしなかった。


 珠!そのまま、そのままでお願い。セオドア様を守っていて。


 私は、光のムチを伸ばし、セオドア様に化けたバッタの首に絡めて奴の側まで跳んだ。

 光のムチで締め付けても、バッタは振り向こうともせず、セオドア様の頭を掴んだままブラブラとぶら下げた。


「セオドア様!嫌だ!忘れちゃ嫌だ!お前、その手を離しなさいっ!」


「ああ、勿論だよ。聖女様。これは、お前を捕まえる為のただの贄だからね」


 駄目だ、駄目だ、駄目だ。


 イヤだ、イヤだ、イヤだ。


 離してよ。彼を離して。


「さあ、聖女。お前の時間を食べさせろ」


 セオドア様の顔をしたバッタが、私を振り向いた。


 セオドア様が、自分の頭を掴んでいるバッタの手にしがみついた。


 セオドア様の手から彼の神力が、奴の手に光と共に流れ込んだ。


 金切り声の様な悲鳴が、辺りに響き渡った。


 周りに居た皆の眉がしかめられる。


 逃がすものか!離すものか!


 私の右手の中から伸びていた光のムチが、奴の首を更に締め付ける。

 こちらに顔を向けていたバッタは、私に何かを吐き出した。


「セオドア様!離れて!お願い、その手を離して」


 お願い。お願い。


 離してよ。セオドア様。


 離して。


 手を、離して。お願いだから。


 セオドア様の両手の中にあった奴の手が、ズブズブと砕け落ちた。


 奴の断末魔が、更に甲高く響く。


 掴まる物を失ったセオドア様は、そのまま馬車の中へと吸い込まれる様に、落ちていった。


 私の左手から、光の剣が顔を出した。剣は伸びていき、私は、背後からバッタに剣を思い切り突き刺した。

 バッタは、そのまま全身をズブズブと砕けさせて崩れていった。


「神官長、様?」


 ジェラルドの声がする。


 馬車の屋根から落ちるように中へと降りると、ジェラルドが泣きながらセオドア様を抱き抱えており、カーバンクルが、その横に座っていた。


「大丈夫ですよ。セイバー様」


「セオ……ドア様?私が、判るの?」


 いつの間にか泣いていた私は、ビックリしてセオドア様を凝視した。


「当たり前でしょう。貴女を忘れる事なんて、絶対に出来ませんよ。ただ、眠いだけです。ほら、泣かないで。私の小さな聖女様」


 他にも、セオドア様は何か言ったが、私とジェラルドには聞き取れなかった。


『後は、頼みまし……た……ょ。』


 最後に、それだけが辛うじて聞こえた。





「セイバー様!セイバー様の顔から真っ黒な何かが、流れ落ち」


「うー、臭い」


「すぐに、清浄魔法を」


「流石に、神力が残ってないわ。ごめん、寝る」


「ダメ!そのまま寝たら、ダメです~!」





 黒い液体は、多分、バッタの出すあれ。害は、ないらしいです。多分。

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