とんだ所に隠れている幸せもある
読みに来て下さって、ありがとうございます。
せいばあ、すっかりご機嫌な毎日です。
今日は朝食から、ウッキウキの気分である。ティムが私の為に作ってくれていた食器が完成したのだ。木製のカップと皿は、素朴なだけでなく、繊細な梅の花の模様が彫られていて可愛らしい。
今朝も鍛練場で人一倍荒々しく手合わせをしていたティムから、こんな繊細で美しい食器が生まれるなんて、全く想像が付かない。
「気に入ってもらえて、嬉しいです」
ティムは、最初に会った時よりも、私に随分と打ち解けてくれた様で、もじもじしながらも、私に出来上がった食器を渡してくれた。カップや皿、スプーンにフォークまで。スプーンやフォークの持ち手にまで、梅の花が彫られている。
「素敵、素敵、素敵!ああ、でも、使う前に絵に描いて残しておくわねぇ。昨日、聖女用の日誌を貰ったのよ。今日一番の出来事だわ」
「で、でも、今日は、まだ始まったばかりです。もっと良い事が、あるかもしれません」
「そうしたら、それも書くから大丈夫」
セオドア様との交換日記は無理だったが、セオドア様は私の日誌を、私はセオドア様の日誌を各々見る事になった。
前世では、誰に見せるでもないのに日記を書く事が好きで、ショータの成長記録、ちょっとした日帰り旅行にしか行けなかったが、旅日記を書いたり、その日の夕飯の絵を描いたりもしていた。
「セイバー様の日誌は、記録として残りますから、僕の作った食器の絵を描いてもらえたら、後世にも残ります。光栄です」
え!?それは、ちょっとヤバいかもねぇ。だから、セオドア様が「暫くは毎日、見てあげましょう」と言っていたのか。
あれは、後世に聖女の恥ずかしいお莫迦な日記が残らない様に、点検すると言う意味か。
危なかった。
セオドア様が見てくれるからと、ラブレター的な物になる所だったわ。
「セイバー様は、絵がお好きなんですか?神殿には、代々の神官長や神々の物語の絵を飾ってある回廊が有るんですが、もうご覧になられましたか?」
向かいの席で食事をしていた副神官長が、私に話しかけてきた。
そう言えば、副神官長は、私と同じく可愛い物好きで、私にウサギさんのぬいぐるみを作ってくれたんだよねぇ。
ウサギさんは、今は、私のベッドの番をしてくれている。可愛い私のダーリンだ。
可愛い物が好きな副神官長は、カーバンクルが来てからは、毎食、私の前の席に座るようになった。そして、カーバンクルが美味しそうに食事をするのを、ニコニコ見ながら、彼は嬉しそうに食事をし、カーバンクルの好物を差し出すのだ。
「歴代の神官長ですから、お年を召した方の肖像画ばかりだと思われるでしょう?ですが、ここの神官長は代々王族の方がおなりになるので、神殿に入られた当初の肖像画と神官長に就任された時の肖像画の2枚を描くことになっているんですよ。
ですから、中には可愛らしい小さい頃の神官長様方の肖像画も何枚かありますし、他の絵画にも可愛らしい生き物達が描かれている物もあるので、是非、ご覧下さい」
「ひょっとして、セオドア様のお小さい頃の肖像画も?」
「有りますよ。ジョナサン、食後にセイバー様を案内して上げておくれ」
「はい。副神官長様。セイバー様、実は私とジェラルドの小さい頃の肖像画もあるんですよ。それに、神官長様の小さい頃の肖像画を見るとビックリしますよ。今の神官長様からは想像できない位、本当に可愛らしいんです」
残念ながらティムは罰当番が残っているので一緒に行けないけれど、カーバンクルは一緒に行くらしい。
セオドア様のお小さい頃、さぞかし可愛いんだろうねぇ。
セオドア様は忙しく、今日は朝早くからジェラルドをお供に、他の神殿に監査に、出掛けていた。監査の時には、ジョナサンでは役に立たないらしく、ジェラルドを連れて行くんだそうだ。
「私でも、ジェラルド程ではないですけど、役に立つと思うんだけれど、今回はお留守番なんだそうです。ジェラルドからも、セイバー様のお世話をキチンとするようにと、言われてますし、セイバー様と一緒なら楽しいから良いですけど」
こんなババと一緒が楽しいなんて、ババ冥利に尽きる……と、10歳だったわ、私。うん。女の子のお守りなんて嫌じゃないのかねぇ。
「ジェラルドが、昨日みたいに母上が来たりして、セイバー様に妙な事を聞こうとするのを阻止しろって。流石の母上も、昨日の今日では、大人しくしていると思うんですけどね」
自分の息子達が妙な女に引っ掛かったりしないか、心配だっただけですよ。まあ、強ち間違いでは、ないと思うけど。何しろ、外見詐欺の中身は70歳超えの妙な女だしね、私は。
ギャラリーのある回廊は、確かに私が未だ来たことのない場所に作られていた。私の足元をヒョコヒョコとカーバンクルが歩いていく。奥には、宝物庫があるらしいが、今日はセオドア様が留守なので見学できない。
どうせ神殿には、私は一生居ることになるので、焦ることは、ない。セオドア様が帰って来られたら、デートがてら見せて貰おう。
「あ、これだ。これだ。セイバー様、見て下さい。これが、私達の小さい頃の肖像画です。そして、その隣が若い時の神官長様。そして、その隣の絵が、神官長様の小さい頃の肖像画です。ほら、むちゃくちゃ可愛らしいでしょう?」
そこには、天使が居た。
ジョナサンやジェラルドの小さい頃の肖像画も可愛かったが、セオドア様の肖像画は、格別だった。
今ではシルバーグレイになってしまったが、お小さい頃は、キレイな巻き毛の金髪で、大きな水色の目がキラキラと輝く様に愛らしく、女の子と間違えそうな顏の頬は薔薇色で、天上の微笑みをたたえて描かれていた。
天使の羽根と輪っかが描かれていないのが不思議だった。
「本当。この子が、大きくなったら、あの神官長様になってしまったなんて、信じられないよ」
いえいえ、信じられますよぉ。
今でも、スゴく素敵なんだもの。
「神官長様、今頃、セイバー様は、どうしておられるんでしょうか。はぁ。心配です」
「ジョナサンが付いているんだから、心配ないさ。ジェラルド」
「でも、ジョナサンですよ。私は、心配ですよ。まったく、昨日の今日だと言うのに、よりによって、視察だなんて。視察、私じゃなくて、ジョナサンでも、良かったのでは?」
「ジョナサンは、帳簿を見るのが苦手だからね」
「でも、ジョナサンは、過去に2回、裏帳簿を見つけましたよ」
「でも、お前は、帳簿の誤魔化しから横領を見つけただろう?」
「確かに見つけましたが、ジョナサンは、神殿に入り込んだ悪徳業者も炙り出しました」
「浚われた神官見習い達も、探しだしたね」
「迷子の犬探しも、得意です」
「心配しなくても、今回は迷子の犬は、いないと思うよ。ジェラルド」
気がついたら、弟の自慢話になっていたジェラルド(((*≧艸≦)ププッ




