姑か小姑か、それが問題
読みに来て下さって、ありがとうございます。
せいばあは、めげないっ!
大人になったら、きちんと婿を貰って子供を産みますよ~宣言をした後、私は、セオドア様の執務の手伝いをする事になった。
「今のところ、私以外に女神様とお話が出来るのは貴女しかいません。
私も年ですし、次にこの神殿を束ねるのは、貴女になるでしょう」
そんな悲しい事を言わないで欲しい。出会ったばかりで、死別の準備とか。
まあ、確かにセオドア様が、如何に頑強でしっかりなさっていても、彼の齢は70歳を越えているのだ。
よよよよよ。悲しいねぇ。
「それでしたら、今日からセオドア様にベッタリ張り付いて、引き継ぎの勉強をしたいと思います」
こうなったら、四六時中張り付いて、少しでも長く一緒にいる時間を増やすのだ。
フフン。私は、前向きな乙女だからねぇ。
かと言って、本当にずっとベッタリ一緒に居れるわけもなく、早速、お留守番になった。
セオドア様は皇宮に呼び出され、私はセオドア様の執務室で宿題をする事に。
過去の執務記録に目を通しておく事。
退屈な宿題と思うことなかれ、これが中々、嬉しいお仕事なのだ。
神官長の執務記録。そう、言ってしまえば、これは、セオドア様の日記に他ならないのよっ!
その内、お互いに執務記録を書き合って、『交換日記』が出来るのでは、ないかしらね。
『せいばあ、何考えてるんだよ』
ショータなら、絶対に突っ込みを入れてくれるのになぁ。ちょっと、寂しい。
執務室では、ジェラルドが私の世話を焼いてくれた。
神官長の外回りの補佐は、基本、ジョナサンの仕事。内向きの仕事の補佐はジェラルドの仕事と決まっているらしい。
「こちらが、今年の執務記録です。と言っても、今年に入ってからまだ2ヶ月なので、少量ですが。わからない記述は、私に、ドンドン質問して下さいね。
普段から私が補佐をしてますので、大抵の事は答えられますから」
ジェラルドがニコニコしながら、私に執務記録を手渡し、お茶の準備をする為に部屋を出て行った。
明日からは、ここに私の机が並ぶが、今はセオドア様の机と椅子を借りている。
凄くとんでもない事をしている気がする。憧れのセオドア様の机に向かい、彼の椅子に座り、彼の書いた日誌を読む!
もう、背徳感しかしない。
良いんだろうか。
何か、ドキドキしてきた。
実際の内容は、仕事の事ばかりだけれど、耳元で彼が読み上げてくれている幻聴が聴こえる気がする。
「はい、セイバー様。お茶をどうぞ」
うん。現実に戻してくれて、ありがとうジェラルド。危うく、何処か違う世界に旅立つ所だったわ。あはははは……。
しばらくセオドア様の日誌を堪能していると、神官がやって来た。ルクスブルグ公爵夫人が、私に面会を求めて来たらしい。
ルクスブルグ公爵夫人、誰それ?
応接室で待っていた公爵夫人は、早速、私を睨み付けた。
「貴女が、聖バーミア様。セオドア様の言う通り、お可愛らしい方ですこと」
これは、宣戦布告?それとも、値踏みをされているだけ?
神官長とは呼ばずに、セオドア様を名前で呼ぶ公爵夫人は、結い上げられた緋色の髪に琥珀色の瞳が映える、艶っぽい美人さんだった。
「聖女様とおっしゃるから、こう、もっと儚げで神秘的な方を想像しておりましたわ。でも、よく考えたら、10歳で神秘的な女の子って。それはそれで、とんでもないわね」
公爵夫人は、扇で口許を隠して、私にそう言った。
はい、普通の10歳の乙女ですが、何か?
「いえ、ちょっと意外だったものですから。
それはそうと、聖バーミア様。その、どんな殿方がお好きですか?」
初めて会って早々、恋バナですか?
「はあ。そうですね。一緒に居て、寛げる方が良いです。一緒にいるだけで癒されて、ホッとする方が好きです」
「え?それだけですか。顔、顔は、どうですか?格好いい方が良いとか、可愛らしい方が良いとか?どうでしょう」
「格好いい方が、良いです」
私は、セオドア様を、頭の中に思い浮かべた。
「体格は、どうでしょう。?細身の方がよろしいですか、それとも、騎士の様に筋肉質な方がお好きですか?それとも、ポッチャリ体型?」
「そうですねぇ。どちらかというと、騎士の様に筋肉質な方が、好きです」
この方は、一体全体、何をしに来たんだろう?
「母上!いきなりやって来て、セイバー様に何を聞いているんですか!?」
ノックもせずに、いきなり、ジェラルドが部屋に飛び込んで来た。
母上って事は、この方は、ジェラルドの母親で、セオドア様の姪ごさん。
私の未来の小姑さん?
「あ、ジェラルド。ジュリアに、会ったか?さっき神殿に来てたぞ」
「いえ。まだ会っていませんが。何か言っていましたか?副団長」
「いや、何だか、会った途端に
『お兄様には、決して負けませんから!』
と叫ばれてしまった。一体、何があったのか知らないが、いそいそと神官に応接室に案内させていたぞ」
「何ですか、それ。不安しかないんですが」
ジュリア・ルクスブルグ公爵夫人。一部の人からは猪突猛進で知られる皇太子の妹。エイブレム副団長の妹にして、ジェラルドとジョナサンの母親。




