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セイバーじゃありません!恋する乙女の『せいばあ』です!!  作者: Hatsuenya


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2/21

せいばあの婚約破棄行進曲

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 今回は、『君を愛する事は、出来ない』から始めたかったんです。



 それは、金色の王子様だった。金色の髪に、トパーズの様に輝く黄色い瞳。まるで、歩くお人形の様だ。しかも、5歳という可愛い盛り。


「ごめん、せいばあを愛する事は、出来ない」


 会った途端に、愛する事はない宣言である。


 当然、しごく、ごもっとも。


「私だって、無理よ」


 神聖国アルテア第一王子ショータリアス。前世の名前は正太で、私の唯一の孫だった。私は、事故で亡くなった娘夫婦の子供である彼を引き取り、女手1つで育て上げた。


 そんな私達は、今世は、生まれながらに婚約者同士。


 ピンクのフワフワ髪に大きく溢れるようなペリドットの宝石の様にキラキラ揺らめく瞳の美少女。そんな私でも。


 無理、どーやったって、無理。


 だって、婆と孫だもの。よよよ。



----------



 さて、本題である。


 初めての婚約者同士の顔合わせのお茶会にて。


 正太ことショータが言うには、このゲームは、元々は18禁成人向けゲームである。大陸の覇者になろうとする主人公が、敵を倒して次々と乙女達(美姫や女騎士等)を娶り、ハーレムを作って大陸を纏め上げて国を治める。

 ところが、コンプリートになる前に、3人の乙女が他の者の手に渡ってしまった。


「お前、なんてゲームを作ってたんだい……」


「俺が考えたんじゃないよ。俺が作ってたのは、その続編の乙女ゲーム。って、その辺は、どうでもいいや」


 そんなハーレムから逃れた乙女の1人が、今世の私、聖バーミアの母親の大聖女ベアトリスだった。


 大陸の覇者たる皇帝が治めるゴルディア帝国だが、その隣国である神聖国アルテア、魔術大国ソーサリナと魔族の住む魔界を皇帝は手に入れ損ねた。


 大聖女ベアトリスは、ソーサリナの第二王子と結託し、死ぬ筈だった愛する聖騎士(私の父親)と結婚して、子供をポコポコ産んだのだ。

 神聖国アルテアを手に入れる為には、国全体に結界を張れるベアトリスを手に入れるしかないのだが、その為には、まず聖騎士が死に、傷心のベアトリスの心に付け入って、彼女を自分に惚れさせる。それが、大聖女ベアトリスのストーリーのクリア方法だった。

 何しろ、お母様は滅法強いのだ。


「おそらく、ソーサリナの第二王子だった今の王様が、転生者なんだと思うんだけど」


 因みに、ソーサリナの王様は、兄の婚約者だった公爵令嬢を王妃とし、ロリコン枠だった暗殺者の美少女を側妃としているらしい。


「ソーサリナの第一王子は?」


「魔界の魔王になった。現在、うちと、ソーサリナと魔界の3つで同盟を組んでるので、帝国は手が出せない」


 兄の婚約者に手を出し、年端も行かない子を側妃とするなんてのも、いけ好かないけどねえ。


「あ、何考えてるのか知らないけど、当時、第二王子は16歳、兄の婚約者の令嬢は18歳、暗殺者の美少女は10歳だからね。歳の差的には、全然問題ないから。

 むしろ、令嬢は既に第一王子の子供を身籠ってたので、その子を次期王とする為に王妃とし、帝国から美少女を守る為に側妃としたって女神様が言ってた。結婚したら、ゲームの対象から外れるんだ。10歳じゃ、結婚出来ないからね。

 今では、側妃との間に4人も子供がいるけど」


 まあ、他所の国の問題は、どうでもいいかな。問題は、私とショータの婚約問題だ。


 王家と大聖女を筆頭とする神殿の2つの権力が分立する我が国では、王家に必ず聖女を嫁がせる法律がある。

 今代では、末の王弟に私の1番上の姉が嫁いだ。次代が、私とショータである。うーん。困ったもんだ。


「ショータ。お前、これは自業自得だよ」


 そう、ショータが私の転生を望んだ。


 だが、転生を女神に頼んだので、女神の加護を持って生まれた私は聖女となった。

 ショータと歳を離れず転生してしまった私は、王子として生まれたショータの婚約者に自動的になってしまったのだ。

 困ったもんだ。


「うだうだ考えたって仕方がない。やれる事をやって、婚約破棄をするよ。あ、そうだ。マギーお姉様に赤ちゃんが出来れば良いのでは?」


「そして、私に『せいばあじゃなくて、可愛い赤ちゃんが良い』と、変態発言をしろと?

 嫌だなあ……」


 それが、1番手っ取り早いんだよ、ショータ君。まあ、時間はまだまだあるからね。ちょっとずつ、頑張りますか。


「それまでに、せいばあは、嫌な聖女として人気を落としとくわ」


 だが、私の外見の愛らしさと生来の親切ばばあの性根が邪魔をした。


 大聖女のお母様が結界を張るのは、当然、いざと言う時だけで、魔獣が我が国に入り込んだりする時がある。そんな時は、聖騎士団長のお父様と私の出番だ。何故か私の光魔法は戦闘に特化しており、お父様の横で魔獣と闘い、聖騎士達と辺境の民の支持を得た。


 その上、公の場で誤って私をショータが『せいばあ』と呼んでしまい、以後は私の業績も伴って、聖なるバーミアの略称、そして、皆を守る者として『セイバー』と呼ばれる事になった。


『セイバー』じゃなくて、『せいばあ』だからね。本当は。まあ、いいけど。


 神殿のお仕事として、大聖女の代わりに孤児院を回って遊ぶ内に、子供達や神官、平民達の支持を得た。


 いい男を探す為にお茶会に出たが、子供しかいない。


「当然だろ?せいばあ。騎士団の演習場に見学にでも行く?」


 演習場の隅でだらけていた騎士見習いの令息達をシゴいている間に、誤って騎士団全員をシゴく羽目になり、王都の騎士達の支持を得、粗暴だった騎士達が礼儀正しくなったと王宮に勤める人達の支持も得た。


「何やってんだよ。で、いい男、居た?」


「若すぎて、ムリ。騎士団長でさえ、若造に見える」


 オマケに、お父様まで、自分の息子に見える。


「じゃあ、敬老の慰労会にでも行ってみる?」


 敬老の慰労会、それは、王宮と神殿が合同で開く年に一度の引退者の為のお茶会。

 ジジババがわんさか居る。引退した騎士団長やら、元宰相、元外務大臣等、選り取りみどり。配偶者が亡くなり、独り身の老人も居る筈!


「モテモテだったね。せいばあ」


 私は、異様にモテた。孫枠で。


 当然だ。こんな小さな可愛い美少女、モテない筈がない。気難しい老婦人にまで、孫の様に可愛がられた。

 敬老の日特別サービスで、皆の神経痛や腰痛を和らげた結果、引退者達の支持を得た。


 東に水害が起こればショータと共に行き、北に雪崩が起きれば行き、南で干魃の予防対策の溜め池作り、西で地崩れ予防の植林。前世の知識を総動員した結果、私とショータは国民の支持を得た。


「詰んだな、せいばあ。これじゃあ、婚約破棄した日には、私は処刑台かも」


 ショータが呟いた。

 気付いたら、私は10歳になっており、ショータと共に国民の英雄となっていた。


「やり過ぎだよ、せいばあ」


 日本人は、勤勉だからねえ。



 そんなある日、朗報が来た。

 いや、間違えた。とんでもない知らせが来た。


「この間さ家出したミネルバ叔母上が、帝国で皇帝の暗殺未遂で捕まったって」


 何それ?ミネルバ王女と言えば、我が儘、陰険、毒舌で、何度も自分から婚約破棄を繰り返し、とうとう行き遅れてしまった人である。


「秘密裏に帝国に渡り、皇帝の寝所に裸で忍び込んだって」


 普段から、


『皇帝のハーレムなんてチョロイチョロイ、私の美貌に掛かれば直ぐにでも皇妃の座は私の物よ』


 と豪語していたけれど、よもや突撃するとは。


「暗殺未遂罪だよ。国同士の問題だよ。戦争勃発じゃないか。何やってるんだか、あのおばはん!」


 あー、そう言えば、美人と言えばそこそこの美人だけど、30歳とっくに過ぎてましたね。焦ったのか?


「隣の大陸の小国の少々歳のいった公爵が、後妻にと望んでくれたのが、お気に召さなかったらしい」


 あー、何だったら、私が、そっちに行こうか?


「帝国は、すべてを不問にする代わりに、せいばあを嫁に寄越せと!!」


 ショータがテーブルを叩くと、テーブルは真っ二つに割れた。


 



「あー、壊しちゃったよ」


「ショータ、ごめんなさい、だよ」


「やだ。それ、ミネルバのおばはんか、皇帝に言わせる」


「まあ、うちの元だんなも、似たようなもんだったしさ」


「ジジイ、そんなに酷かったのか?」


「皇帝なんだから、金が有るだけマシだよ。何だったら、光の鞭でしばいてやるよ」


「あー、まあ、そーならない様に帝国と話し合ってもらうよ」





 こーして帝国に嫁ぐ羽目になったんですが、帝国でも、一悶着あったんですよ。次回、ヒーロー再登場です。

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