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セイバーじゃありません!恋する乙女の『せいばあ』です!!  作者: Hatsuenya


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19/20

聖騎士団副団長エイブレムの受難前奏曲

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 今回は、もう1人の結婚候補者、第二王子にして聖騎士団副団長エイブレムの視点です。



     聖騎士団副団長エイブレムside



 第二王子としての生活を捨て、聖騎士団に入団してから、早20年。齢も33歳となった。

 神殿は、先日、まだ10歳と言う可愛らしい聖女バーミア様を迎え、未だ冬も明けきらぬと言うのに春の様に華やいでいる。

 と言うか、皆の頭の中がお花畑だ。


 私以外は。


 とんでもない事に、当初、父上である皇帝の花嫁として、バーミア様は迎えられた。


 また、父上のビョーキが始まった。


 しかも、よりによって、10歳の聖女を嫁に欲しがるとは。


 後宮には、何十人と側妃だの妾だのが、うじゃうじゃ居る上に、宮殿の中には一夜限りのお手付きの侍女だのメイドだのが山程いる。


 もう、要らないだろう。


 一夜限りのお手付きの女達など、あの人は覚えていない。その中には、もう一度、お相手したいと思っている女達も居る。彼女達の髪型を変えておけば、どちらも楽しめてOKなのでは?


 とにかく、私も、今回ばかりは父上の愚行に呆れたが、皇妃である母上は、更に切れた。怒髪天を突く様な勢いで、神官長である大叔父上を巻き込んだ。


 神官長は、女神様からのお告げもあり、怒り心頭で、神官と聖騎士を集め国境に軍隊を進め、皇帝の騎士団から、見事、聖バーミア様を奪い取った。

 ついでに、聖バーミア様と共にワイバーンの群れを討伐し、皇帝の第二騎士団全員を人事不詳に陥らせて、意気揚々と神殿に戻ってきた。


 とんでもない話だ。笑える。


 母上は、私の妹夫婦も巻き込み、妹とその子供達であるジェラルドとジョナサンに、神殿に聖バーミア様の部屋を作るように命じた。

 妹の夫である公爵は、宰相や母上、神官長、神聖国アルテアの王太子と共謀し、皇帝に、無理やり、聖女に関する誓約書を神聖国アルテアに提出させた。


 ここまでは、私も拍手喝采だ。


 問題は、この後、起こった。


「誓約書の項目の1つに、聖女バーミア様は現皇帝とは結婚しないが、未婚の王族の1人と結婚して子供を為す事になっている。

 対象者は、6名だが、実質は5名だ。誰の事かわかるな?」


 皇宮から帰ってくるなり私を呼び出した神官長は、私にそう言った。


「冗談じゃ、ありませんよ。私は、聖女様と20歳以上、離れているんですよ。私に幼女趣味は有りません!大体、私は、女達から逃れる為に、ここに入ったんですよ!?」


 私は、子供の頃から、外見が父上にそっくりだった。だからと言って、中身まで父に似ている訳ではない。

 だが、人々は、そうとは思わなかった。女達は、幼い私に媚びを売り、思春期に入ると私をベッドに誘うようになった。

 少女から、かなり年上の熟女まで。しかも、父に顧みられ無くなった後宮の女達や、父のお手付きとなった女達まで。


 気持ちが悪い。


 そして、それを知った母上は、直ちに大叔父上を頼り、私を神殿に入れた。


 神殿は、素晴らしい場所だった。迫ってくる女達も居らず、自由に生きれる。

 父と違い、生まれた時から神力を持っていた私は神殿に歓迎され、大好きな剣術を選び、聖騎士となった。


「心配するな、エイブレム。私やお前の母親達が考えた本命は、ジェラルドとジョナサンだ。

 どちらも美しい少年だし、性格も良い。明るく活発な少年が好みならジョナサンを、賢くしっかりとした少年が好みなら、ジェラルドを選ぶだろう」


 確かに、どちらも両極端だから、選びやすいかもしれない。

 だが、彼らの方は、どうなんだ?私みたいに無理強いをされるのは、許せない。


「心配するな。何しろ、あの美しいピンクの髪にペリドットの瞳。愛らしいサクランボの様な唇。そして、強くて正義感に溢れ、利発で明るく優しい方だ。2人共に、一目惚れの様だぞ」


 ちょっと待て。


 今、何か、おかしくなかったか?


 神官長こそ、浮かれ過ぎだろう。


 まるで、恋をしている様な?いや、まさかな。


 聖バーミア様もまた、ちょっとおかしかった。鍛練に参加して神官長を眺め、食事は神官長と仲睦まじく一緒に取り、何かと神官長にベッタリくっついていた。


 そして、とうとう。朝の鍛練時に、ジェラルド、ジョナサンに私の異母弟のティムまで加わって、聖バーミア様のいや、セイバー様の取り合いになった。

 ところが、セイバー様ときたら。


「ごめんなさい、皆。

 私、実は『枯れ専』なの!だから、セオドア様と結婚するわっ!!」


 そう言って、神官長に抱きつき、彼女が彼の頬にキスをした時のビックリした神官長の顔は、見物だった。


「さあ、セオドア様!診療室へ。愛の逃避行よっ」


 子供とは言え、こんな楽しい女の子に会ったのは初めてだった。


 アルテアの王太子を国境まで送って行った時の、あのスタンピードの折の、揺るぎない強さ、自信、決意。小さい身体から立ち上る凛とした雰囲気。

 美しく容赦のない光の槍の雨の魔法。

 キャスパリーグに向かって行った勇気。


 どれをとっても称賛しかない。


 本当に彼女は10歳なのか?まるで、もっと年上の様だ。アルテアの王太子も11歳だとは思えない程、大人の様だったし、アルテアでは、あれが普通なのか?


 どうやら、私までもが、彼女に魅入られたらしい。8年後、彼女が大人になるのが楽しみだ。

 彼女は、きっと、更に美しくなっているに違いない。





「まず手始めに、落とし穴でも作って、エイブレム副団長を落とす?」


「莫迦だな。ジョナサン。そんな事したら、私達が悪い奴だと思われるぞ。私達が最初にやるべき事は、副団長をセイバー様に見せない事だ。普段の副団長は格好いいからな。副団長が失敗した時だけ、彼を見せる」


「ふーん。どんな時?」


「酔っぱらってる時とか、聖騎士同士でふざけ合って騎士団長に怒られる時とか」


「ああ、あの時は、随分と笑えたね」


「そして、私達は、紳士で格好いい所を見せる。食事は、他の連中を寄せ付けない。常にセイバー様と私達の誰かが一緒に居るようにする。他の男に目が行かない様にね」




 どうやら、男の子達から見て、副団長は格好いい男らしいです。

 

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