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セイバーじゃありません!恋する乙女の『せいばあ』です!!  作者: Hatsuenya


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ウェルカム、でっかいネコちゃん

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 やたらと猫、猫と言う話になってきてしまいました。



「ティムから苦情が来ています。セイバー様がティムの髪を拭く際に、延々、彼の耳を触りまくられたと言う事ですが?」


 セオドア様が、厳しい顔で私を見た。

 そんな顔も、凛々しくて格好いい。思わず見とれてしまったが、ショータがセオドア様の隣で咳払いをした。


「セイバー。それは、セクハラ案件だ。彼は、ネコじゃないし、もうすぐ13歳になる思春期の少年だ。耳を触るな、尻尾もだぞ!」


 私は、思わず明後日の方向を見て、両手の指を合わせてスリスリと擦り合わせた。


「だってさ、ティムのお耳がピコピコして可愛いんだよ?尻尾もピーンとして、時々パタパタしちゃったりして。いや、流石に尻尾には触ってないけど」


「せいばあ!禁止だからね。

 すいません。セオドア様。アルテアの神殿では、ネズミ取りと称して猫を飼っていましたので。

 ところで、こちらでは、ネズミ害は?猫の姿を見かけませんが」


「ネズミ取りの魔道具を各所に仕掛けてます。そうか、猫か。猫……いいですね。今夜の神殿の会議に、かけてみましょう」


 セオドア様の態度が、少しふんわりとした。ひょっとして、猫好き?

 フフフフフ。そうか~。猫、好きなのね。私と同じだわ~。


「勿論、猫を飼ったあかつきには、私が猫のお世話をしますね。慣れてますから」


 巨大な猫ちゃん(虎の半獣人ティム)のお世話はさせて貰えなくなったけれど。

 猫、猫、猫が飼える。やった!



その夜は、ショータと私で、昔話で盛り上がった。前世の話、今世での2人の想い出。変な話、莫迦っぽい話、笑い話に愚痴まで。

 悲しい話はしなかった。そんなモノは、心の中にしまっておけば良いのだ。


 応接室で、果実水片手にクッキーを肴に。クッキーは、ティムのお風呂騒ぎの後でセオドア様に許可を貰って、調理担当の神官達と一緒に焼いた。ショータが大好きな、粉チーズをかけたほんのり塩味の固いめのクッキー。

 グレナリア神殿では、寄進された牧場があるそうで、乳製品はたっぷりあり、チーズとバターを使った、このクッキーのレシピは歓迎された。このクッキーも、名物として売り出すか。酒の肴にも丁度良いしねぇ。


 10歳と11歳とは言え、未婚の男女を二人きりには出来ないと、付き合ってくれたセオドア様には、迷惑だったと思う。

 前世の訳の解んない話を山程聞かされ、一緒にお茶会に混じった女神様に、質問を一切禁止されてしまったのだ。


 本当に、申し訳ないわねぇ。


 気が付いたら、朝だった。薄明かりの中、いつもの時間に飛び起きて、寝巻きに着替えてベッドに居たのでビックリした。


 ノックの音がして、アリナとマルサが入ってきた。


「おはようございます。聖バーミア様。昨日は、応接室で眠ってしまわれたので、神官長様が、こちらまで抱っこして運んで下さいましたよ」


「セオドア様が?私を抱っこ?」


「はい。もっとも、私とマルサが聖バーミア様を夜着に着替えさせていただきましたので、ご安心下さい」


 セオドア様の抱っこ……眠ってしまっていたとは、惜しいことをした。次にそう言う機会があれば、是非、狸寝入りで挑みたい。


 鍛練しながらセオドア様の勇姿を拝むと言う、新しい素晴らしい日課を終え、朝食に行くと、セオドア様から吉報が、もたらされた。


「猫を飼うと言う件ですが、無事に会議を通りましたよ。ネズミ取り用の猫なので、仔猫という訳にはいきませんが、試しに暫く飼ってみようと言う決定が、なされました。

 どの様な猫を何処から貰ってくるかは、まだ決まってませんので、暫くお待ち下さい」


 やった!猫、猫、猫が来る。どんな子かな。男の子かな。女の子かな。ペルシャ猫の様な長毛種?引き締まった体躯のタキシードの靴下猫?ワイルド系の雑種も良いわよねぇ。

 一番好きなのは、ガッシリ系の大きな猫ちゃんだけれども。


「セイバー様は、余程、猫がお好きなんですね」


「はい。セオドア様は、猫はお好きですか?」


「実は……子供の頃からずっと、猫を飼うのが夢でした。でも、撫でた事もないんです。神官になるのに忙しくて、見ているだけでした」


「セオドア様の夢も、叶いますねぇ。良かったです」



 朝食の間中、ショータは、これに気を付けろ、あれをするな、それはどうしろとか、クドクドと私に色んな注意をしていたが、いよいよ出発となった。


「ショータ。国境まで、グレナリア神殿の皆が送ってくれるんだろ?私も一緒に、送って行くよ」


「何を言ってるんだよ。皇宮の奴らは、まだ、せいばあを諦めてないんだよ。神殿に居た方が良いよ。見送りは、ここまでで、いいから」


「せいばあの最後の我が儘だよ」


 小さい頃から守ってくれ、一緒に魔獣と闘って来たアルテアの聖騎士達とも、最後のお別れをした。


「最後のお別れと仰いますが、我らは順繰りに、こちらに来るマティア神官の部隊と共に護衛として参りますので。また、会えますよ。ええ、何度でも。絶対に会いに参ります」


 ショータは、私とセオドア様、ジョナサンと共にグレナリア神殿の馬車に乗った。彼は、国境で自分の馬車に乗り換える事になる。


「そのまま、馬車でお待ちを!魔獣の群れです!」


 馬車を囲むグレナリア聖騎士達が、一斉に剣を抜く。だが、魔獣の群れは、いつもより勢いを増して、こちらに駆けてくる。馬車に乗っていても、地鳴りが伝わってくる。

 

「ちっ!間に合わない。私が出る」


 剣を持って馬車から出て、扉を閉めようとするセオドア様を足掛かりとし、


「ごめん!ちょいと失礼!」


 私は馬車の上に飛び上がった。


 神官達が、光の矢を次々と射るが、魔獣達が駆け抜ける数が多すぎる。鹿、猪、馬、兎等の足の速い草食動物ばかりが、こちらに向かって……いや、逃げている?


「降り注げ『篠突く光雨』!」


 私の呪文と共に、細い鋭い竹を束ねた様な激しい光の雨が、辺りを降り注いだ。

 すべての草食動物の魔獣達が、光の雨に地面に縫い止められる様に倒れ臥し、視界が開ける。


 森の中から、深い闇を纏った大きな獣が現れた。


『キャスパリーグ』だ。


「あらあら、随分と大っきな黒猫ちゃんねぇ」


 黒猫は、身体中から闇を立ち上らせ、苛立つ赤ん坊の様な甲高い声で鳴いた。


「ショータ。キャスパリーグの額に大きな黒く光る石が付いているんだけど。あれは、何だい?」





「キャスパリーグ……大っきな猫ちゃん」


「確かに、猫だな」


「セオドア様が、猫を飼って良いって言ってた」


「いや、待て、せいばあ。あれは、猫の粋を超えているだろう」


「ネズミ取り、上手よ。きっと」


「魔獣は、神殿に住めないからね。光の神聖力で、死んじゃうからね」


「はぁ。折角、可愛い黒猫ちゃんなのに」





 残念。キャスパリーグは、飼えない。果たして、どんな猫を飼うようになるんでしょうか。そして、踏み台にされたイケジジ神官長のプライドは何処へ。

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