猫洗い、スマイル0円
読みに来て下さって、ありがとうございます。
少しずつ、神殿に慣れてきたせいばあです。
ティムの処遇も決まった所で、私の今後についてショータとセオドア様が話をするらしい。
「あれだよ、1日3食おやつは1回とか、寝起きは良いけど、食事を抜くとグッタリするとか、たまに木に上りたがるとか?」
何か、失礼だわ。まるで、猫の新しい飼い主への注意事項みたいじゃない。
「後は、こちらからの贈り物とそれに伴う返礼品。要は、塩と砂糖を贈るから、出来上がった梅酒等が欲しい。
こちらの神殿の紋章の入った衣装も要るわけだし、どれだけの物を用意して貰えるのかを話し合う。
おそらく、これから一生いる場所になるんだろうし。なるべく、居心地よく生きていける様に交渉してあげるから、心配しないで」
何だかまるで、老人ホームとか介護施設に入れられる様な気がしてきた。
「あの皇帝が死んでも、国としては聖女を手放さないだろうしね」
ショータは、私を真剣な顔で見つめ、やがて、泣きそうな顔になった。
そんな顔をしなくても良いのに。
「こんな事の為に、女神様にせいばあを転生させて貰ったんじゃないのに。
父さんや母さんが死んでから育てて貰った恩を返す前に、せいばあが死んでしまって。だから、せいばあを幸せにしようと思ったのに。
なのに、この、体たらく。また、迷惑をかけてしまった」
すっかり悄気てしまったショータは、年相応の11歳に見えた。まるで、小学校のテストで悪い点を取ってきた時の様だ。
あの頃も今も、そして、前世で私が死ぬ前に一度大人になったあのショータもこの子は大して変わらない。私の可愛い孫のショータだ。
「ショータ。お前と再び一緒に居れて、良かった。2人で色んな事をしたねぇ。しかも、前世では絶対に出来なかった事ばかり。どれも、楽しかったねぇ」
「何、言ってんだよ。災害救助とか、魔獣退治とかばっかりじゃないか。何処が楽しいんだか」
わかってないねぇ。また会えた。また一緒に話をした。また一緒に笑えた。それだけの事が、どれ程、凄い奇跡なのか。
残されたお前が、どれだけ私を望んでくれたのか。それだけで私は、幸せになれた。
いい子だねぇ。
「二人一緒なら何事も楽し、よ。
今度は、死別したんじゃないし。会いに来て。慶事なら、来れるでしょう?せいばあの結婚式には、絶対に来てね、ショータ。孫に結婚を祝って貰える日が来るなんてねぇ。
長生きは、するものね」
「まだ、10年しか生きてないからな。長生きしてないだろう。
まったく、いつの事だよ。結婚式って。
わかった、わかった。私も、今度こそ嫁さん貰ってひ孫の顔を見せてやるよ。せいばあ」
そうだよ。笑って、笑って。幸せに、おなり。それが、私の望みだよ。私の可愛い孫のショータ。
「楽しみにしてるよ。じゃあ、そっちは頼んでいいかい?交渉事は、苦手だ。今日は色々あったから、疲れたよ。こっちは、ゆっくりさせて貰うね」
さてと、ちょっとあちらの様子を見に行こうかな。
私は、部屋を後にした。
神官宿舎の外、厩舎の近くにある洗い場にティムは居た。
ここでは、厩舎の当番の神官や、何かの拍子に泥だらけになったりした神官達が、泥を落としたりする場所らしい。それくらい、ティムは汚れていたのだ。
「止めろ、暴れるなティム。頭を振るな。じっとしてろ。うわぁ」
ジェラルドが、全身泡まみれのずぶ濡れになって外に出てきた。
中に、もう2人、手伝いの神官がいるらしい。
「駄目ですよ!聖バーミア様、こっちに来ては、いけません。今、ティムを洗っている最中なんです。近寄ると、ずぶ濡れになりますよ」
近付いてくる私を見て、ジェラルドが慌てて言った。
「お手伝いにきたの」
犬洗いなら、任せて欲しい。って、虎だから猫か?とにかく、久々に、腕が鳴るわ。
「何を言ってるんですか!聖バーミア様は、女の子なんですよ。ティムは、男なんですよ。大人しくお部屋に居てください!」
交渉の末、ティムの頭を拭くのを手伝う係をさせて貰うことになった。ちぇっ。
「ティム、上を向いて頭の泡を流すんじゃない!耳に水が入る」
「ぎゃーっ!頭は、振って乾かすんじゃない!髪をしぼれ。止めろ、止めろ」
猫洗いは、それはそれは楽しそうだった。
いいなぁ。
「いっその事、ジェラルドもお風呂に入ってきた方がいいんじゃない?風邪引くわよ」
「言われなくても、そうします。ですから、聖バーミア様は、ここで、大人しくティムが髪を拭くのを手伝ってやって下さい。お願いしますね」
「はーい。で、その次は、ジェラルドの髪を拭くわけね。順番、順番」
「え!?そ、それは、ちょっと」
「聖バーミア様。ジェラルドの顔が赤いよ。熱があるのかも」
「あら、本当ね。ティム、ジェラルドの濡れた服を脱がしてお風呂に入れてちょうだい」
「うわぁ!止め、止めろ~」
猫洗いは出来ませんでしたが(当然)、猫の頭を拭けて、せいばあは満足した様です。




