聖なるばばあ、せいばあ見参
読みに来て下さって、ありがとうございます。
よっこいしょっと、新連載です。気持ち若い目のばばあを宜しく。
国境の森を抜ける前から、喧騒がしていた。
「このまま、走らせて頂戴」
御者に、そう言うと、私は馬車の扉を開け、馬車の屋根に上った。元婚約者のショータリアス殿下が何か叫んだが、それどころではない。
うん。視界良好、感度良し。足元固定良し!
行け行け、お馬さん達。
森を抜けると、ワイバーンの群れが、騎士団と神官達を襲っていた。
「東西東西!神聖国アルテア第五聖女“せいばあ”見参!!」
私がワイバーン達に向けて矢を射る真似をすると、光の矢が無数に放たれた。続いて、両手から一本ずつの光の鞭を出すと、空に残るワイバーンを鞭打ち、地面に引き摺り下ろした。
「せいばあ、危ないから屋根から降りて」
停まった馬車から、ショータリアスことショータ(正太)が出てきて、私を見上げた。わが孫ながら、肝の小さい事よ。それとも、11歳の時は、こんなもんだったかなー。
私は。足元でギャンギャン言う孫を放置し、私が空から引き摺り下ろしたワイバーンと闘う男達を見回した。放っておいても大丈夫だろう。どっちも。
それよりも
「居た!?やったぁ、いい男、発見っ!!」
シルバーグレイの端整な顔立ち、しっかりとした齢を重ねた風貌、だが、身体はがっしり筋肉質。要らない筋肉は、ありません!
「どれどれ?ああ、グレナリアの神官長?って、結構なご高齢だよ?いい男かも知れないけど。70歳近かったんじゃない。
せいばあ。せいばあは、今、10歳なんだよ!?自覚ないでしょ」
馬車の屋根の上に上り、私の隣に立つと、溜め息を吐きながらショータは言った。
そう、残念な事に今の私は10歳で、しかも、この国の王の何十人目かの嫁に来た。
この、孫のせいで。
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恐らく、死んだ後。気付いたら、女神様の前にいた。さっきまで、次の輪廻の前段階として、魂の姿でぐーるぐーるとその辺に漂って居たのに。
「『せいばあ』ちゃん、じゃなかった、聖子ちゃん。貴女に、うちに転生して貰うことになったのよ」
はいはい、女神様。って、どちらの神様ですかね?我が国日本では、天照大御神様方の神社の神様方、仏教のお寺の仏様方、後はキリスト教の神様しか、いらっしゃらないと思ってましたが。
こんな方も、いらっしゃったのか。
あ、ギリシャ神話とかアスガルドの神々?インド神話なら、そもそも顔立ちが
「全部、外れ。異世界って知ってるでしょう?ほら、お孫さんの得意なゲームの」
ああ、そう言えば、正太が、よく、そういうゲームをやっていた。あの子が小さい時は、一緒にやってあげてたっけ。
そう言えば、正太は元気にやってるんだろうか。嫁さん貰って、子供も産まれただろうか。
「残念ながら、正太は、先程、死んでしまったの。それで、彼が仕事で作ったゲームを基にした私の世界の事態の収拾をする為に、彼を送り込んだんだけど。
その彼がね?
条件の1つとして、自分の近くに貴女が転生する様に望んだのよ。
『死んだばあちゃんに、孝行の1つも出来なかった』
のが、心残りだからって。
『自分の生涯に於ける唯一の味方』
なんだそうよ。だから、宜しくね」
えー、面倒なんだけど?この歳になって、まだ孫の後始末なんて。よっこいしょ。
「お願い事が、あるなら聞いてあげるわよ?」
あー、じゃあ、次の人生こそ、いい男にめぐり逢いたいねえ。
うちのだんな、顔は良くても、節操なしの飲んだくれだったしさ。
「はい、受理しました。じゃあ、宜しくね!」
私は、グルグルヒューンと地上に飛ばされて、流れ星のごとく光を放ち、裸の男とベッドで寝ている裸の女の腹に入った。
「あら、やだ。五人目の子は、とんでもない聖力を持ってるわね」
私の方は、実の親達のこんな場面、見たくありませんでしたよ。
「こんな事なら、ばばあに転生して貰えば良かったよ」
「せいばあ、転生は、生まれかわりだからね。ばばあからはスタート出来ないよ」
「あー、じゃあ。異世界転移?」
「せいばあ、とっくの昔に死んでたからね。転生しか出来ないから」
「玉手箱でも、探すか……」
いい男は、一朝一夕には出来ず、年月が作るのだ。多分。きっと。この場合は。




