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国安事例ーNo.89 神の名を持つ鍵ー  作者:


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9/9

最終話 夜明けのあとで

国会議事堂の東側に、朝日が差し込む。

 それは、いつもと変わらない日本の夜明けだった。


 地下零層――

 あの空間は、すでに“眠り”についている。


石の台座に刻まれていた文様は、完全に光を失っていた。

 再定義装置は永続停止。

 二度と、誰の意思でも動かせない。


 如月は、三本の鍵を専用ケースに収め、静かに蓋を閉じた。


「……国安事例No.89、

 これをもって完了とする。」


 誰も声を上げなかった。

 勝利でも、敗北でもない。

 ただ、選択の結果がそこにあった。


天野が口を開く。


「〈ツクヨミ〉は……追わないんですか。」


 如月は首を横に振った。


「彼はもう“敵”ではない。

 そして……捕まえるべき存在でもない。」


 嶺が静かに言った。


「国安が生み、

 国安が切り捨てた影ですからね。」


「……ああ。」

 如月は短く答えた。

「だからこそ、我々が背負う。」


エレベーターが地上階に戻ると、

 いつもの国会の風景が広がっていた。


 観光客、記者、警備員。

 誰一人として、数十分前に

 “国家が死にかけていた”とは知らない。


 神田が苦笑する。


「……世界ってのは、

 知らない方が幸せなことも多いな。」


 槇村が頷いた。


「でも、誰かが知って、

 止めなきゃいけない。」


 八重樫は、空を見上げた。


「今日も、守れました。」


数日後。

 極秘決定が下された。

•アマテラス

 → 皇居内、非公開の奉安庫へ。

  今後は“象徴”ではなく、封印鍵として保管。

•スサノオ

 → 首相官邸から切り離され、

  国安管理下へ。

•ツクヨミ

 → 所有者なし。

  “鍵の概念”そのものを、

  記録上から抹消。


 世界から見れば、

 何も変わっていない。


 だが――

 国の“最後の歯止め”は、

 人ではなく、選択そのものに委ねられた。


国安は解体されなかった。

 だが、如月は一つの文書に署名した。


 「国安運用原則 改定案」


 そこには、こう記されていた。


国安は、国家を守るために存在する。

ただし、国家の名の下に

“人の意思”を奪うことをしてはならない。


 天野が小さく笑う。


「……ずいぶん、人間的になりましたね。」


「遅すぎたくらいだ。」

 如月はそう答えた。


六人は、再びそれぞれの“表の部署”へ戻っていく。


 だがもう、同じではない。


 彼らは知ってしまった。

 国の奥底に眠るものと、

 それでも守ると決めた理由を。


■エピローグ


 夜。

 どこかの屋上で、

 一人の男が夜空を見上げていた。


「……まだ、終わってはいないな。」


 〈ツクヨミ〉はそう呟き、

 静かに姿を消す。


 国は生きている。

 人が選び続ける限り。



**国安事例ーNo.89


記録終了**


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