最終話:聖女と英雄、そして永遠の家族
魔物の大群が退けられた後、王都には平和が戻った。グロース公爵とエミリアは、裁きを受け、その罪を償うことになった。
レオナルドは、セレスティーナの屋敷を訪れた。
「セレスティーナ…君が、この国を救ってくれた。本当にありがとう」
レオナルドは、心からの感謝と、深い敬意を込めてセレスティーナに頭を下げた。彼は、もはや権力欲に囚われた王子ではなかった。彼女の導きによって、この国の未来を真に憂うことができる、真の指導者へと成長していた。
セレスティーナもまた、そんな彼を見て、微笑んだ。
「お可哀そうに、貴方には、この国の未来を憂うことしかできないようね」
かつて彼に告げた言葉が、今、和解の言葉に変わる。セレスティーナは、彼を王国の真の指導者として認めたのだ。
月日が流れ、子供たちは、それぞれの道でさらなる才能を開花させていった。
ハンスは、王国騎士団長に就任し、王都の平和を守る要となった。
ルカは、王国最高の魔法使いとして、リリィは、王国の経済を支える大商人として、人々に称えられた。
そして、ディランは、王国騎士団長の座をハンスに譲り、セレスティーナの私設護衛騎士団長として、彼女のそばに仕えていた。
ある日の午後、ディランは、セレスティーナの手を取り、真剣な眼差しで彼女を見つめた。
「セレスティーナ様、あなたに仕える身ではありますが…一人の男として、あなたを愛しております。どうか、私の身も心も、あなたに捧げさせてください」
彼の真摯な告白に、セレスティーナは、満面の笑みを浮かべた。
「…馬鹿な男ね。わたくしに、身も心も捧げるつもり?でも…嫌いじゃないわ、その愚かさ」
彼女の言葉は、愛の言葉だった。
悪役令嬢として追放されたセレスティーナは、今、真の聖女として、かけがえのない家族と、そして愛する人々に囲まれていた。
セレスティーナは、ディランと正式に婚約し、子供たちと共に「永遠の家族」として幸せに暮らすことになった。
これは、愛と知識で真の権力と人望を獲得し、かけがえのない家族と幸せを見つけた、一人の悪役令嬢の物語である。
『悪役令嬢、孤児院を再建します』を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
この物語は、「悪役令嬢」という枠に囚われず、自らの知識と愛で真の幸せを掴む女性の姿を描きたいという想いから生まれました。
主人公セレスティーナは、高慢で皮肉屋 な悪役令嬢として振る舞っていましたが、それは孤独な自分を守るための仮面でした。そんな彼女が、辺境の孤児院で子供たちと出会い、「生きる意味」を見出していく姿を描くことが、この物語の核でした 。
そして、虐げられた「忌み子」たちが、セレスティーナの愛と知識によって、ルカは王国最高の魔法使いに、リリィは類まれな商才を発揮する大商人に、ハンスは忠誠心の高い騎士へと成長していく 過程は、執筆していて胸が熱くなるものでした。彼らは、王都を救った「英雄」として認められました 。
セレスティーナは、レオナルド殿下を再婚の申し出を断り 、ディランという愛する人を見つけ、子供たちと共に「永遠の家族」として幸せに暮らす という結末を迎えました。彼女が手にしたのは、権力でも地位でもなく、かけがえのない家族の愛と、人々からの心からの人望でした。
皆様からの温かいご感想を、心よりお待ちしております。
改めて、この物語に最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。