第十八話:聖女の選択、そして新たな絆
セレスティーナは、レオナルドの再婚の申し出を断固として拒絶した。彼女にとって、もう彼との間に、過去のような愛情も、信頼もなかった。
「…わたくしは、もう、王家の権力争いに巻き込まれるつもりはありません。わたくしには、守るべき家族がいますから」
彼女の言葉は、レオナルドの心に深く突き刺さった。
しかし、レオナルドは、権力欲からではなく、本当に彼女の力が必要だと感じていた。彼女の持つ知識と、人々を導く温かい心こそが、この国を救う鍵なのだと。
彼は、セレスティーナの意思を尊重し、別の道を選んだ。
彼は、国王にセレスティーナを王国の「聖女」として正式に迎えることを提案した。
人々からの熱狂的な支持もあり、国王はその提案を快諾した。
かくして、セレスティーナは、王宮の権力争いに身を置くことなく、王国の「聖女」として、子供たちと共に王都で新たな生活を始めることになった。
彼女には、王宮の一角に、子供たちと暮らすための屋敷が与えられた。そこは、忌み子の孤児院とは比べ物にならないほど立派な場所だったが、彼女たちにとっては、変わらない「家族の家」だった。
セレスティーナは、子供たちに、そしてディランに囲まれ、穏やかな日々を送っていた。
ある日、ディランは、セレスティーナの前に立ち、静かに語り始めた。
「セレスティーナ様、改めて申し上げます。私は、レオナルド殿下の騎士ではなく、あなたの騎士です」
彼の言葉には、揺るぎない決意が宿っていた。彼は、王族への忠誠よりも、セレスティーナと彼女が築いた家族への忠誠を、何よりも優先することを誓ったのだ。
セレスティーナは、そんな彼の忠誠心を受け止め、微笑んだ。
悪役令嬢として追放された彼女は、今、かけがえのない家族と、そして一人の騎士の揺るぎない愛に支えられ、真の「聖女」として、この国で生きていくことを決意した。
登場人物紹介(第十八話時点)
セレスティーナ・フォン・エトワール
侯爵令嬢。レオナルドの再婚の申し出を断り、王国の「聖女」として認められる。子供たち、そしてディランと王都で新たな生活を始める。
ディラン
セレスティーナの騎士。レオナルドの騎士ではなく、セレスティーナの騎士であると改めて忠誠を誓う。
レオナルド
第二王子。セレスティーナを王国の「聖女」として正式に迎えることを国王に提案する。




