第十六話:絶体絶命、そして子供たちの決意
ディランの予感は、すぐに現実のものとなった。
グロース公爵が差し向けた、精鋭の部下たちが、セレスティーナたちを襲撃してきたのだ。彼らは、前回孤児院を襲った暗部の人間たちとは比べ物にならないほど、手練れの兵士たちだった。
「セレスティーナ様、子供たちを連れてお逃げください!」
ディランは、一人で彼らと戦おうとするが、敵の数は多く、次第に追い詰められていく。
セレスティーナは、ディランの身を案じながらも、子供たちに逃げるよう促した。
しかし、子供たちは動かなかった。
「…もう、逃げないよ」
ルカが、決意に満ちた瞳でそう告げた。
「僕たちには、守りたいものがあるから」
ハンスが、ディランから託された剣を構える。
「私たちの知恵と力は、この国を救うために使うの」
リリィは、懐から自作の粉末を取り出した。
子供たちは、セレスティーナを守るために、自らの力で立ち向かうことを決意した。
まず、ルカが最強の防御魔法を発動する。それは、彼が日々の訓練で磨き上げた、強力な魔法の盾だった。襲い来る敵の攻撃は、ルカの魔法によって完全に防がれた。
次にハンスが動く。彼は、ディランに教わった剣術を駆使し、敵の隙を突いて次々と打ち倒していく。彼の剣は、もはや遊びの道具ではなく、大切なものを守るための、真の武器となっていた。
最後にリリィが、孤児院の評判を広めた商才と知恵を使い、敵の動きを読み、罠を仕掛け、敵の指揮官を無力化した。
子供たちは、三人の力を合わせ、見事に襲撃を撃退した。
セレスティーナとディランは、彼らの成長に言葉を失い、ただただ見つめていた。
襲撃を退けた後、ルカはセレスティーナに歩み寄り、静かに言った。
「セレスティーナ様、僕たち、もう『忌み子』じゃないよ」
ハンスが続ける。
「僕たちの力で、この国を救いたい。だから、王都へ戻ろう」
子供たちの、揺るぎない決意が、そこにはあった。
セレスティーナは、彼らの言葉に胸が熱くなるのを感じた。
彼女は、子供たちの成長と、彼らの希望を尊重し、共に王都へ戻ることを決意する。
登場人物紹介(第十六話時点)
セレスティーナ・フォン・エトワール
侯爵令嬢。子供たちが自らの力で襲撃を撃退する姿を見て、彼らの成長と決意を尊重し、共に王都へ戻ることを決める。
ルカ
魔力暴走を起こしていた少年。最強の防御魔法を完成させ、仲間を守る。
リリィ
病弱だった少女。知恵を活かして、襲撃者を撃退する。
ハンス
暴力的だった少年。剣術を使い、仲間を守るために戦う。
ディラン
王国騎士団に所属する騎士。子供たちの活躍に驚き、彼らと共に王都へ戻ることを決意する。