第十三話:迫りくる影、そして悲しい知らせ
セレスティーナたちが旅を続ける中、とある小さな村に立ち寄った。しかし、村は深刻な疫病に苦しんでいた。人々は高熱にうなされ、病床に伏しており、村全体が絶望に包まれていた。
「…大変ね。これも、わたくしたちの使命ということかしら」
セレスティーナは、そう呟くと、迷うことなく月光草を使い、村人たちを助け始めた。
月光草の絶大な力によって、村人たちの病は瞬く間に癒されていく。
村人たちは、セレスティーナを「聖女様」と呼び、深く感謝した。彼女の献身的な行動は、人々の間で広まり、「聖女」としての名声はさらに高まっていった。
その頃、王都では、レオナルドの疑念が、確信へと変わろうとしていた。
彼は、騎士団の訓練場で、ディランの同僚の騎士たちと話している時、ある噂を耳にした。
「聞いたか? 伝説の医師ユリウスが、王宮が喉から手が出るほど欲しがる『月光草の地図』を、どこかの誰かに託したらしい」
その言葉を聞いたレオナルドの脳裏に、かつてディランから聞いた報告が蘇った。ユリウスが孤児院を訪れたという情報。そして、エミリアがでっち上げた「王家の財政機密を漏洩しようとした」という罪。
すべてが、一本の線で繋がった。
ユリウスは、セレスティーナに月光草の地図を託し、エミリアはそれを王家への復讐を企む証拠としてでっち上げたのだ。
レオナルドは、怒りに震えながらエミリアの元へと向かった。
「エミリア! 答えるがいい! ユリウスがセレスティーナに月光草の地図を渡したというのは、本当のことだったのか? そして、お前が私に渡した手紙は、すべて嘘だったのだな!」
レオナルドの鋭い追及に、エミリアは顔を真っ青にする。彼女は、もはや逃げ場がないことを悟り、自暴自棄となり、泣き叫びながら全てを自白した。
「…そうよ! 全部、私が仕組んだことよ! あんたが、私を見てくれないから! あの女の嘘の噂を、信じたからよ!」
彼女は、自分がセレスティーナを陥れたことを認め、さらに驚くべき秘密を口にした。
「…お父様は、もうずっと前から、あんたたち王家への復讐を企んでいたのよ! その秘密が記された文書が、地下室にあるわ!」
エミリアは、グロース公爵家の秘密を記した文書の存在を自白した。
レオナルドは、エミリアの悪事だけでなく、グロース公爵が王家への復讐を企んでいたという衝撃の事実を知り、愕然とする。
物語は、セレスティーナを巡る個人的な復讐劇から、王国全体を揺るがす陰謀へと、その姿を変えようとしていた。
登場人物紹介(第十三話時点)
セレスティーナ・フォン・エトワール
旅の途中で疫病に苦しむ村を月光草の力で救い、「聖女」としてさらに崇められる。
レオナルド
第二王子。ディランの同僚から聞いた噂によって、エミリアの嘘を見抜き、彼女の悪事を確信する。
エミリア・フォン・グロース
レオナルドに嘘がばれ、自暴自棄になり、グロース公爵家の秘密を記した文書の存在を自白する。