表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/37

第十二話:噂の拡散と、王都の焦燥

 月光草の自生地を後にしたセレスティーナたちは、旅を続けながら、病に苦しむ人々や貧しい村を訪れた。セレスティーナは、採取した月光草を、誰もが分け隔てなく受け取れるよう、無償で配り続けた。


 「この薬草は、あなたがたのためにあるのです」


 彼女の献身的な行動は、瞬く間に人々の間で広まっていった。

 病が癒された人々は、彼女を「聖女」と呼び、その噂は、人々の口から口へと伝わり、やがて王都にまで届くようになる。


 その頃、王都のレオナルドは、ディランからの定期的な報告と、街で耳にする「聖女」の噂に心を乱されていた。


 「辺境に、本物の聖女が現れたらしい」


 「その聖女は、忌み子たちを導き、奇跡の薬草を貧しい人々に無償で配っているそうだ」


 当初は、ディランの報告を、セレスティーナが復讐を企んでいる証拠だと疑っていたレオナルドだが、街に広まる噂は、その内容があまりにも美しく、そして彼の知るセレスティーナの献身的な姿と重なり、次第に真実だと確信するようになる。


 「…私は、一体何をしていたのだ」


 レオナルドは、セレスティーナを権力争いから「保護」するためと信じて追放したが、結果的に彼女を傷つけ、今、彼女が真の「聖女」として人々に称えられている事実に、深い後悔の念を抱き始める。


 彼女は、王宮の権力争いに興味などなかった。ただ、純粋に、人々を救うことを望んでいたのだ。


 一方、この噂を耳にしたエミリアは、焦りを募らせていた。


 「聖女ですって…? 忌み子を導く魔女の間違いでしょう!」


 彼女は、自分が陥れたはずのセレスティーナが、人々に称えられていることに耐えられなかった。レオナルドの関心が、再びセレスティーナに戻ってしまうのではないかという恐怖が、彼女を支配する。

 エミリアは、セレスティーナを完全に破滅させるため、より卑劣な計画を立て始めた。


 彼女の心には、憎悪と焦燥しか残っていなかった。



登場人物紹介(第十二話時点)


セレスティーナ・フォン・エトワール

月光草を貧しい人々に無償で配り、王都で「聖女」の噂が広まる。


レオナルド

第二王子。ディランからの報告と「聖女」の噂が真実であることに気づき、セレスティーナを追放したことを後悔し始める。


エミリア・フォン・グロース

セレスティーナが人々に称えられていることに焦りを募らせ、より卑劣な計画を立て始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ