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第十一話:森の恵みと、騎士の葛藤

 セレスティーナと子供たち、そしてディランは、ユリウスから託された地図を頼りに旅を続けた。幾日もの野営と、険しい道のりを経て、彼らはついに地図に示された場所、人里離れた深い森の中にたどり着いた。


 森の奥深く、月の光が差し込む神秘的な場所。そこには、淡い光を放つ、美しい白い花が咲き乱れていた。


 奇跡の薬草「月光草」。

 その光景を前に、セレスティーナは息をのんだ。

 子供たちもまた、その神秘的な光景に心を奪われていた。


 その日の夜、野営の準備をしながらも、ディランは深く考え込んでいた。

 彼は、王国騎士団の一員として、王国の法とレオナルド殿下への忠誠を誓っていた。しかし、今、彼は王子の命令に背き、国家が喉から手が出るほど欲しがる奇跡の薬草の自生地に、セレスティーナと共にいる。


 彼の中に、二つの忠誠心がぶつかり合っていた。

 騎士としての矜持と、セレスティーナと子供たちを守りたいという、一人の男としての強い想い。


 「…ディラン様、どうかされましたか?」


 セレスティーナは、ディランの苦悩に気づき、静かに声をかけた。


 「いえ…セレスティーナ様。ただ、私は…」


 「貴方が、誰を、何を守りたいのか。それは、貴方自身が決めることよ。わたくしや、子供たち、そして貴方が正しいと信じる道のために、貴方の力を使えばいいわ」


 セレスティーナの言葉は、ディランの心を揺さぶった。彼女は、彼が抱える葛藤をすべて理解し、それでも彼を信じているのだ。

 ディランは、彼女の温かさに救われた。


 「セレスティーナ様、私は、あなたとこの子供たちをお守りします。それが、私の忠誠です」


 ディランは、心の中で、王国への忠誠よりも、セレスティーナへの忠誠を優先することを改めて誓った。


 翌朝、セレスティーナは月光草を採取しながら、ある決意を固めていた。


 王宮に献上するのではなく、貧しい人々や病に苦しむ人々に、この奇跡の薬草を無償で配る。


 その決意は、彼女を「悪役令嬢」から「聖女」へと変える、最初の一歩だった。


 セレスティーナは、子供たちとディランと共に、月光草を携え、新たな旅路へと歩み出した。



登場人物紹介(第十一話時点)


セレスティーナ・フォン・エトワール

侯爵令嬢。月光草の自生地にたどり着き、それを貧しい人々に無償で配ることを決意する。


ディラン

王国騎士団に所属する騎士。王国への忠誠とセレスティーナへの忠誠の間で葛藤するが、彼女の言葉に救われ、改めて彼女を守ることを誓う。


子供たち

ルカ、リリィ、ハンス。セレスティーナと共に、月光草の自生地にたどり着く。

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