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下へ、下へ①

下へ、下へ①

「それで千冬、今からどこに行くんだ」


 勇気をだして隣を歩く、パーカーを着たロリっ子に話しかけてみる。

 しかし、隣の千冬は俯いてとても暗い顔で僕を先導していた。

 よく聞いてみると、「怒られる、終わりだ」とブツブツ言っている。僕は自称気の利く男なので千冬に声を掛けてあげる。


「千冬、元気だせって」


 その言葉を聞きもせず千冬はブツブツいいながら歩き続けてゆく。

 正直、少し傷ついた。女の子に無視されるのはやっぱ辛いり

 そう考え、落ち込んでいると千冬はあるビルの前で止まった。


「ここだよ、お兄ちゃん」


 一言だけ千冬は喋って奥へ入ってゆく。

 1人にされて怖かったから僕も小走りについて行った。


 中は真っ暗だった。本当に何も見えなかったから、千冬の手をぎゅっと握っていた。

 こんな経験もうないだろうな。

 時間をかみ締めていると階段に着いたため、手を振りほどかれた。ざんねん。

 すると、千冬はすごいスピードで階段をかけ下りる。

 コッ、コッ、と足音だけが響く中、僕も頑張って降りたがさすがに追いつくことは出来ない。

 五分くらい降り続けたあと、あかりが見えたため立ち止まると前には千冬がいた。


「遅いね、お兄ちゃん」


 そう言ってニッと笑った千冬は可愛かった。


「ここは、?」

「お兄ちゃん、ようこそ地下(リター)へ」


 千冬によって紹介されたこの場所は地下(リター)、と言うらしい。

 奥に大きな広場があり、鉄くずの山やテントなどがたっているところもあった。

 ここなら生活はできる、と言う印象を受けた。


「お兄ちゃん、こっちだよ」


 遥か前方で千冬が手を招いていた。

 僕は初めて見る地下の世界に飲み込まれ立ち尽くしたままだったらしい。

 走って千冬の方に向かうとそこには広場が広がっていた。


「広い…」


 思わずそう呟くと前を歩いていた千冬は後ろを振り向いて、指を指した。


「今からあっちに行くよ」


 指さしている方を見るとコンテナみたいなものが置いてあった。

 なんだ、あれ。

 この世界には分からないことが多すぎる。

 歩きながら千冬は通りすがる人に一言ずつかけている。

 ほとんどたわいも無いことだが、みんな生き生きとした顔で千冬と話す時間を心から楽しんでいるようにも見える。

 そして3分ほど歩くとコンテナの前に到着した。

 千冬がコンテナの傍に行ってそこにたっている人と話している。

 僕は少し怖かったから、ちょっと離れた所で見ていると千冬が呼んでいるのに気づいた。

 千冬の元へ向かうとなにか耳打ちをしてきた。


「今から会うのはリーダーだから、失礼ないようにね」


 その言葉に僕は猛烈にビビった。

 リーダーとなんで会わされるんだよ、、。

 肩に力を入れながら千冬が扉を押して入った後ろにチョコチョコついて行った。

 中はコンテナと思えないほど綺麗だった。


「千冬!わかってるわね」


 奥から綺麗な声が聞こえてきたので僕は顔を上げて奥を見ると長い髪の人物がコチラに近づいてきているのが分かった。


「だけど、姉様、しょうがなかったでしょう」


 タジタジとなる千冬を見るのは初めてだったが、とても可愛かった。


「面もつけてないし、一人で行くし、どうなってるのよ」


 恐らくさっき千冬にリーダーと紹介された人だろう。

 あかりのある所に出ると彼女の顔がみえた。

 身長はすらっと高く、長い綺麗な髪の毛。さらに綺麗な顔立ちをしていた僕と同い年かひとつ上の少女だった。


「ごめんなさい、姉様。だけどこのマコトに助けてもらったの」


 そう言い千冬は僕の背中をトン、と押して前に立たせようとする。

 背中を押された僕はヨレっとなる感じでリーダーの前に来てしまった。


「は、はじめまして、」


 恐怖と緊張で変な声が出てしまう。

 その声を聞いたリーダーは僕の手を握った。


「千冬を助けてくれてありがとう、感謝しているよ。」


 指は長く、少し冷たい手をしていた。

 さらにリーダーの瞳は惹き込まれるほど綺麗なものだった。

 同時に、僕の意識は遠のいてゆき、地面に突っ伏した。

 


 

 

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