はじまり
運命の出会い
「誠!いい加減にしなさいよ!」
うるさいってば、お母さん。
お母さんの声をいなしつつ僕は弁明する。
「だから、あしたからちゃんとやるって」
めんどくせえーーー。
なんでこうなったのかと言ったら確定で僕が勉強せずに部活や遊びに明け暮れてたからだろう。
まぁ、分かってるけど謝りたくないよね。
「受験生なんだからちゃんとしなさいよ」
なんかまだブツブツ言ってるよ…
僕は17歳の受験生だ。勉強しないといけないのは僕もわかってるけど、できない。
やりたくないなぁ。
そう考えていると、お母さんがブツブツまだ言っていた。
「先生に連絡して部活やめさせましょうかしら」
ちょっとまってくれ。部活が唯一のぼくの居場所だったんだ。
これだけは阻止したいと思った僕は、先程まで下がらなかった頭を全力で下げた。
「ちゃんと勉強するから、それだけはやめてよ」
いままでで1番の屈辱だったが、こういう時は頭を下げるに限る。
僕の謝罪も虚しく、お母さんが許してくれる様子はなかった。
やばいやばい。頭を最大限に働かせ僕はひとつの結論にたどり着いた。
そうだ、家出をしよう。一旦家出をしてお母さんも頭を冷やせば許してくれるはずと僕は考えた。
考えるやいなや僕はすぐ行動に移す。先程までお母さんの方を向いていた身体をくるりと回し玄関へ向かい靴を履く。
後ろでお母さんの名前を呼ぶ声が聞こえだが聞こえないふりをして急いで玄関から出た。
──────
「はぁ、疲れた」
夜の浅草を歩きながら先程の出来事をおもいだす。
あれから30分ほどちかくをぶらぶら歩いていると気分はすごくスッキリした。
全く懲りてない僕は明日の部活の事なんか考えながら家路につこうとしていた。
その時だった。僕の右前にあったビルの角から叫びながら一人の女の子がでてきた。見た目的に14、5歳くらいだろう。
僕は瞬間的に臨戦態勢になったがその女の子は半泣きの目で僕のことを見上げた。
「あの、助けてください!」
そう言いながら女の子は僕の背中にピッタリと付いた。
今までずっと走ってたのだろうか、柔らかい胸も温かくなっている。
するとまた、ビルの角から2人のスーツのような服を着たおじさんが2人走って出てきた。
その2人のおじさんは僕と目が合うとすぐに、
「仲間か!」
そう叫び殴りかかってきた。
部活などをやり続けた僕は人よりかは反射神経や運動神経がいい。
反射的に女の子を背負い上に飛び、おじさん2人の後ろに着地し後頭部にチョップを入れると鈍い音がした。
その瞬間、チョップを入れられたおじさんはバタりと倒れてしまった。
「ちくしょう、データがないぞ」
意味不明な言葉を叫びもう1人のおじさんは片割れを置いて逃げていってしまった。
なんだったんだ、あれは。今流行りのパパ活かなにかなのだろうか?
そう考えていると僕の上方から可愛らしい声が聞こえてきた。
「あの、下ろしてください」
そういえば背負ってたんだった。
ごめんごめん、と軽く謝りながら女の子を背中から下ろしてあげて目線の高さを彼女に合わせた。
「どうしたの」
すると女の子はにっこり笑って答えた。
「助けてくれてありがとう、お兄ちゃん。わたしは千冬、あのおじさん達に追われてたんだ」
そう言って僕に笑いかける千冬と名乗った女の子は僕のことをお兄ちゃんと呼んだ。一人っ子の僕にとっては夢のような出来事だ。
いいや、そんなことよりこの千冬のことだ。
「何かあったの?1人で帰れるかな」
できるだけ優しい口調を意識して話した。
しかし、千冬は僕のことばを気にもとめず僕に話しかけ続けた。
「お兄ちゃん、いい匂いだね。そういえばお兄ちゃんはなんでここに居たの?」
そう聞かれた僕はお兄ちゃんと言われたことでニヤつく顔を抑え、冷静な振りをして答えた。
「家出したんだ、お母さんと喧嘩して」
すると、千冬の顔が急に明るくなって僕を見上げた。
「じゃあこれから仲間ってことだね、やっぱり!」
仲間?なんの事かさっぱり分からない僕は黙って立ち尽くすことしか出来ない。
その僕の呆然とした様子を汲み取ったのか千冬は慌てて説明する。
「あぁごめんごめん、これから見せたいものがあるの。良かったら来てくれないかな」
千冬の話している内容を何一つ理解できてないのに加え、いま僕の目の前にいるこの可愛いロリっ子と少しでも長くいる為にも頷くことしか出来なかった。
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また2話で会いましょう!