拾ノ九
「おう、キッセ! 道具はここにおいとくよ」
ネシャが巣台作りに必要な材料や道具を用意してくていた。
「俺も手伝おうか? その方が早いぞ」
「でも、坊ちゃんは自分でやりたいって言っているからさ」
「そっか、じゃあ俺仕事があるから。何から足りない物があったら遠慮なく言ってくれ」
「ありがとう。ネシャ」
キッセとネシャのやり取りを聞きながら、人見知りの激しい保僚はキッセの陰に隠れて、もじもじとしている。
「坊ちゃん、ネシャは忙しい中、坊ちゃんのために道具を用意してくれたのですよ。きちんとお礼を言わなくてはいけません」
キッセは保僚の背中をそっと押した。
保僚は恥ずかしそうにネシャの顔を見上げた。
「……ありがとう。ネシャ」
「どういたしまして。坊ちゃん」
雲一つなくいい天気だ。ネシャが大事に育てた花々が美しく咲き乱れ、そこらかしこから香りよい匂いが漂う。
「さあ。坊ちゃん、どこら辺に取り付けますか?」
キッセが訊くと保僚は懐から大きな紙を広げた。
「どこでもいいってわけじゃないんだ。方角が重要なんだよ」
キッセは保僚が広げた大きな紙を覗いてみると、ネシャの小屋の見取り図だった。
保僚はその自作の見取り図と用意していた方位計片手に、キッセと一緒にネシャの小屋を何度もぐるぐると回った。
何度も悩みながら、自作の見取り図と方位計を見比べ、十八回目に差し掛かっていた時、保僚の足が止まった。
「ここら辺がいいと思うけど……どうかな?」
保僚は自信がなさそうにキッセを見上げた。
「ネシャが言うには、昔一度だけこの小屋の入り口付近で、メツバ巣が作られたことがあったそうですが、完成する前にほかの鳥に襲われて壊されてしまったそうです」
「じゃあ同じところに作らないかな?」
「その時よりも軒下の屋根が長くなったので、それに……」
キッセは空を見上げた。すると真っ青の空の中をいきよういよく飛び交う小さな二つの影が見えた。
「ほら、メツバが飛びながらこちらの様子を窺っているでしょう? 巣作りに最適な所を探しているのですよ」
「本当だ。メツバだ!」
キッセの言葉に安心したのか、保僚はその場所に巣台を作ることにした。




